所有権の登記の抹消しょゆうけんのとうきのまっしょう
所有権の保存や移転の登記を無かったことにする登記で、移転の登記が無ければ名義人が単独で申請できます。単独申請の範囲、抹消後の登記記録の扱い、職権で抹消できる場合が肢で突かれます。
所有権の登記の抹消は、保存や移転の登記を無効や取消し、解除などを理由に消す登記です。所有権の移転の登記がまだ無い場合に限り、所有権の登記名義人が単独で申請できると不動産登記法77条が定めています。移転の登記がある場合は、前の名義人を登記権利者、現在の名義人を登記義務者とする共同申請です。登記上の利害関係を有する第三者がいれば、その承諾を証する情報が要ります。肢は、単独申請できる場面、判決や和解調書で単独申請できるか、抹消の後に登記記録がどうなるか、登記官が職権で動けるかを突いてきます。
不動産登記法 第77条(所有権の登記の抹消)
所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で申請することができる。

移転の登記が無ければ名義人が単独で抹消できます
保存の登記しかない建物で、その名義人が自分の保存の登記を抹消する場合は、相手方がいないので単独申請です。単独申請でも所有権の登記名義人が義務者と同じ立場に立つので、書面申請なら印鑑証明書を添付します。「所有権の移転の登記がされていない甲建物について、Aが単独で当該所有権の保存の登記の抹消を申請する場合には、Aの印鑑に関する証明書を添付することを要する」という肢は正しい肢です。移転の登記がされた後は共同申請で、前の名義人が権利者、現在の名義人が義務者になります。
判決や和解調書があれば単独で抹消できます
共同申請の抹消でも、登記義務者に抹消の登記手続を命ずる確定判決や、同じ内容の和解調書があれば、権利者が単独で申請できます。競売による売却を原因とする移転の登記でも、買受人が売主に対して競落無効を原因とする抹消登記手続をする旨の和解調書があれば売主が単独で申請でき、「申請をすることはできない」という肢は誤りです。売主が死亡していれば共同相続人の一人が判決を得て単独で申請でき、「Aの共同相続人の一人であるCは,単独で,Bに対する所有権の移転の登記の抹消の登記手続を命ずる確定判決を得て,当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる」という肢は正しい肢です。
保存の登記の抹消で閉鎖するかは名義人で変わります
表題部所有者自身の名義でされた所有権の保存の登記を錯誤で抹消したときは、登記官は表題部の登記も抹消して登記記録を閉鎖するのが原則です。表題部所有者の相続人や区分建物の転得者など、表題部所有者と別人の名義でされた保存の登記を抹消したときは、閉鎖せずに職権で表題部所有者の表示を回復します。「Aの相続人Bを登記名義人とする所有権の保存の登記がされた場合において,その後に錯誤を登記原因として所有権の保存の登記が抹消されたときは,登記官は,当該建物の登記記録を閉鎖しなければならない」という肢は誤りです。区分建物の転得者名義の保存の登記を抹消したときも同じで、閉鎖するとする肢は誤りです。
職権でした保存の登記は職権では抹消できません
所有権の登記がない不動産に嘱託で処分制限の登記をするときは、登記官が職権で保存の登記をします。処分制限の登記が後に錯誤で抹消されても、保存の登記そのものは登記官が職権で抹消できません。「後に錯誤を登記原因として当該所有権の処分の制限の登記が抹消されたときであっても,登記官は職権で当該所有権の保存の登記を抹消することはできない」という肢は正しい肢です。保存の登記を消したいなら、名義人が77条により単独で申請します。
否認した破産管財人に抹消の義務はありません
破産管財人が所有権の移転の原因である行為を否認したときは、破産法の定めにより破産管財人が否認の登記を申請しなければならず、移転の登記の抹消を申請するのではありません。「Aの破産管財人が,当該所有権の移転の登記の原因である行為を否認したときは,当該破産管財人は,当該所有権の移転の登記の抹消を申請しなければならない」という肢は誤りです。否認の登記は否認された行為による登記を残したまま否認の効力を公示する登記で、抹消の登記とは別の形です。買戻特約の付記登記がある移転の登記を抹消するときは、先に付記登記の抹消を申請するか同時に申請します。
不動産登記法 第68条(登記の抹消)
権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の抹消につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
試験ではこう問われる
- 所有権の登記名義人が単独で抹消できるのはどんなときか(移転の登記がない場合。印鑑証明書は要る)
- 競落無効の和解調書で売主が単独で抹消できるか(できる)
- 保存の登記を抹消したら登記記録は閉鎖されるか(表題部所有者名義なら閉鎖。相続人や転得者の名義なら閉鎖せず表題部所有者の表示を回復)
- 職権でした保存の登記を処分制限の抹消後に職権で抹消できるか(できない)
- 否認した破産管財人は抹消を申請しなければならないか(しなくてよい。申請するのは否認の登記)
この用語が問われた肢
Aが登記名義人である所有権の保存の登記がされているが、所有権の移転の登記がされていない甲建物について、Aが単独で当該所有権の保存の登記の抹消を申請する場合には、Aの印鑑に関する証明書を添付することを要する。
競売による売却を原因としてAからBへの所有権の移転の登記がされている場合には,BはAに対し当該所有権の移転の登記について競落無効を原因とする抹消登記手続をする旨の記載のあるAとBとの和解調書の正本を添付して,Aが,単独で当該所有権の移転の登記の抹消の申請をすることはできない。
Aが表題部所有者として記録されている建物について,Aの相続人Bを登記名義人とする所有権の保存の登記がされた場合において,その後に錯誤を登記原因として所有権の保存の登記が抹消されたときは,登記官は,当該建物の登記記録を閉鎖しなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
この用語で問われた肢を、解説つきでそのまま解けます。無料プランは月100問まで。