抹消登記まっしょうとうき
登記された権利が消滅したか、登記が当初から無効だったときに、その登記を登記記録から消す登記です。利害関係人の承諾が申請の要件になる点と、誰が申請人になるか、どの前提登記が要るかが肢で突かれます。
抹消登記は、弁済や解除で権利が消滅したときや、登記の原因が当初から無効だったときに、既にされた権利の登記を登記記録から消す登記です。登記官は抹消の登記をするとともに元の登記に抹消する記号を付け、その権利を目的としていた第三者の権利の登記も職権で抹消します。不動産登記法68条により、登記上の利害関係を有する第三者がいるときはその承諾がなければ申請できず、更正登記のように主登記で逃げる道がありません。申請人は共同申請が原則で、抹消によって利益を受ける設定者や前主が登記権利者、消える権利の名義人が登記義務者です。肢では、承諾の意味、登記原因と前提登記、単独申請の例外が突かれます。
不動産登記法 第68条(登記の抹消)
権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の抹消につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

利害関係人の承諾は申請の要件で、承諾がなければ却下です
抹消登記では、消える権利を目的とする転抵当権者のように、抹消で登記上の地位を失う人が登記上の利害関係を有する第三者です。更正登記や変更登記と違い、承諾がないときに主登記でする余地はなく、承諾を証する情報かその人に対抗できる裁判があったことを証する情報を提供しなければ申請は却下されます。処分禁止の仮処分の登記に後れる登記の抹消を仮処分債権者が単独で申請するときは、相手方の承諾の代わりに、あらかじめその登記名義人に通知したことを証する情報を提供します。「処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請するときは,その旨をあらかじめ当該登記の登記名義人に対して通知したことを証する情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。単独抹消は仮処分債権者の登記と同時に申請するときに限られ、「申請と同時にするときに限り,債権者は,処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる」という肢は正しい肢です。
登記原因は権利が消えた事実のとおりに書きます
抹消の登記原因は、弁済、解除、放棄、混同、錯誤のように、権利が消えた事実や登記が無効だった事情です。売買の後に売主が死亡し、相続人と買主が売買を合意解除したときは、「AからBへの売買を登記原因とする所有権の移転の登記がされた後にAが死亡した場合において,Aの相続人とBとの間でその売買契約を解除する旨の合意をしたときは,Aの相続人とBは,合意解除を登記原因として,当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる」という肢のとおり抹消できます。譲渡担保契約を解除したときも同じで、「譲渡担保契約の解除を登記原因として,当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる」という肢も正しい肢に当たります。他方、強制競売による売却は当事者の合意で取り消せないので、「AからBへの強制競売による売却を登記原因とする所有権の移転の登記がされている場合には,AとBは,合意解除を登記原因として,当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りです。抵当権者が代物弁済で所有権を取得すると被担保債権が消えて抵当権も消えるので、「Eは,代物弁済を登記原因として,乙区2番の抵当権の登記の抹消を申請することができる」という肢は正しい肢です。譲渡担保で所有権の移転の登記を受けても、担保の目的でする移転であって所有権が確定的に移ったとはいえないので混同は生じず、「Eは,混同を登記原因として,乙区2番の抵当権の登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りです。
死亡・合併の後に消えた権利の抹消は相続・合併の登記が前提です
抵当権の設定者である所有権の登記名義人が死亡した後に抵当権が消滅したときは、相続人が登記権利者になるので、前提として相続による所有権の移転の登記が要ります。「当該抵当権の設定の登記の抹消を申請するときは,その前提としてAの相続人への所有権の移転の登記を申請しなければならない」という肢は正しい肢で、唯一の相続人であっても省略できません。抵当権者が死亡した後に弁済があったときも、相続人が登記義務者になるので、前提として相続による抵当権の移転の登記を申請します。「相続を原因とする当該抵当権の移転の登記を申請することを要しない」という肢は誤りです。抵当権者である会社が吸収合併で消滅した後に弁済があったときも同じで、「その前提として,当該合併を登記原因とするA株式会社からB株式会社への抵当権の移転の登記を申請しなければならない」という肢は正しい肢です。死亡や合併より前に権利が消滅していたときは、移転すべき権利が既にないので、相続人や存続会社が一般承継人として承継を証する情報を添え、前提の移転の登記なしに抹消を申請します。
仮登記名義人の単独抹消には登記識別情報が要ります
仮登記の登記名義人が単独で仮登記を抹消するときは、共同申請ではなくても自分に通知された登記識別情報を提供します。「Aが単独で当該仮登記の抹消を申請するときは,Aに対して通知された登記識別情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。共同申請で登記義務者が登記識別情報を提供できないときは、所有権以外の権利の抹消でも義務者の印鑑証明書が要ります。「登記義務者が登記識別情報を提供することができないときであっても,当該登記義務者の印鑑に関する証明書を提供することを要しない」という肢は誤りです。確定判決に基づいて登記権利者が単独で抹消を申請するときは、登記義務者が申請に加わらないので、登記義務者の登記識別情報は要りません。共同相続人の一人は保存行為として判決を得て単独で抹消を申請でき、「Aの共同相続人の一人であるCは,単独で,Bに対する所有権の移転の登記の抹消の登記手続を命ずる確定判決を得て,当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる」という肢は正しい肢です。
買戻特約の付記は職権では抹消されません
権利の登記を抹消したとき、その権利を目的とする第三者の権利の登記は登記官が職権で抹消しますが、所有権の移転の登記に付記された買戻しの特約の登記はこれに当たりません。「登記官は,職権で当該付記登記を抹消しなければならない」という肢は誤りで、買戻特約の抹消は先立ってまたは同時に申請します。「当該申請に先立って又は同時に,当該買戻しの特約の付記登記の抹消の申請をしなければならない」という肢は正しい肢です。処分禁止の仮処分に基づく所有権の移転の登記とともに後れる登記が抹消されたときの処分禁止の登記や、保全仮登記に基づく本登記がされたときの処分禁止の登記は、登記官が職権で抹消します。滞納処分の公売による移転があっても差押え後の抵当権の設定の登記は職権で抹消されず、「当該差押えの後に登記された抵当権の設定の登記は,登記官の職権により,抹消される」という肢は誤りです。
不動産登記規則 第152条(登記の抹消)
登記官は、権利の登記の抹消をするときは、抹消の登記をするとともに、抹消すべき登記を抹消する記号を記録しなければならない。
登記官は、前項の場合において、抹消に係る権利を目的とする第三者の権利に関する登記があるときは、当該第三者の権利に関する登記の抹消をしなければならない。この場合には、当該権利の登記の抹消をしたことにより当該第三者の権利に関する登記の抹消をする旨及び登記の年月日を記録しなければならない。
試験ではこう問われる
- 利害関係人の承諾の位置づけ(申請要件。承諾か対抗できる裁判がなければ却下)
- 名義人の死亡・合併後の抹消の前提登記(死亡・合併の後に消滅した権利なら相続・合併による移転の登記が要る。前に消滅していれば一般承継人が承継を証して抹消)
- 登記原因の当否(競売の売却は合意解除で抹消できない。譲渡担保では混同しない)
- 単独で抹消できる場合(仮登記名義人、処分禁止に後れる登記、判決、死亡・解散、休眠担保権)
- 職権で抹消される登記の範囲(抹消した権利を目的とする第三者の登記。買戻特約の付記は申請)
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