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嘱託による登記しょくたくによるとうき

不動産登記 第1章 登記の仕組みと申請の骨格 過去問で23肢

裁判所書記官や税務署、国・地方公共団体などの官庁・公署が、当事者の申請に代えて登記所に求める登記です。嘱託に申請の規定がどこまで準用され、登記識別情報や印鑑証明書が要るかどうかが肢で突かれます。

嘱託による登記は、不動産登記法16条1項が当事者の申請と並べて認める、官庁または公署の求めによる登記です。裁判所書記官が差押えや仮処分の登記を嘱託し、税務署が滞納処分の差押えや公売による移転を嘱託し、国や地方公共団体が自ら当事者になる登記を115条や116条で嘱託します。16条2項により申請に関する章の規定の多くが嘱託に準用されるので、申請情報に当たる嘱託情報と添付情報を提供し、却下や補正、登記完了の通知も申請と同じ枠組みで動きます。官公署が嘱託するときは本人確認の仕組みが要らないので、登記識別情報や嘱託書に押した印についての印鑑証明書は提供しません。肢で突かれるのは、申請と同じところと違うところの境目です。

不動産登記法 第16条

(当事者の申請又は嘱託による登記)
登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければ、することができない。
第二条第十四号、第五条、第六条第三項、第十条及びこの章(この条、第二十七条、第二十八条、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第四十一条、第四十三条から第四十六条まで、第五十一条第五項及び第六項、第五十三条第二項、第五十六条、第五十八条第一項及び第四項、第五十九条第一号、第三号から第六号まで及び第八号、第六十六条、第六十七条、第七十一条、第七十三条第一項第二号から第四号まで、第二項及び第三項、第七十六条から第七十六条の四まで、第七十六条の六、第七十八条から第八十六条まで、第八十八条、第九十条から第九十二条まで、第九十四条、第九十五条第一項、第九十六条、第九十七条、第九十八条第二項、第百一条、第百二条、第百六条、第百八条、第百十二条、第百十四条から第百十七条まで並びに第百十八条第二項、第五項及び第六項を除く。)の規定は、官庁又は公署の嘱託による登記の手続について準用する。

裁判所から封書を持った職員が登記所の窓口へ歩き、窓口の職員が封書を受け取って台帳に記入している
嘱託による登記は官庁・公署の求めによる登記で、申請の規定の多くが準用されます
国・地方公共団体の登記は官公署が嘱託登記識別情報と嘱託書の印鑑証明書は不要書記官・税務署の嘱託で処分の制限の登記

国や地方公共団体が当事者の登記は官公署が嘱託します

不動産登記法116条1項は、国や地方公共団体が登記権利者となる登記は、官公署が登記義務者の承諾を得て嘱託すると定めます。同条2項は、国や地方公共団体が登記義務者となる登記について登記権利者の請求があれば、官公署が遅滞なく嘱託すると定めます。国有地の売払いでは、「当該私人の請求があったときは,財務省は,遅滞なく,当該登記を登記所に嘱託しなければならない」という肢が正しい肢です。官公署が義務者として嘱託するときに「登記権利者の承諾を証する情報を提供しなければならない」という肢は誤りで、承諾が要るのは官公署が権利者になる1項の場面です。用途指定に違反したときに契約を解除する旨の定めは「当該登記の嘱託情報の内容とすることができる」という肢のとおり、登記事項として嘱託できます。

登記識別情報も嘱託書の印鑑証明書も要りません

官公署が自らを登記義務者として嘱託するときは、官公署が本人であることは明らかなので登記識別情報を提供せず、「登記義務者の登記識別情報を提供しなければならない」という肢は誤りです。国や地方公共団体が権利者となる登記を官公署が単独で嘱託するときも、「登記義務者の登記識別情報を提供することを要しない」という肢が正しい肢で、承諾を証する情報がその代わりになります。公売による移転の嘱託では、「その嘱託情報に記名押印した者に係る印鑑に関する証明書を添付することを要しない」という肢のとおりです。私人である義務者や利害関係人が作る承諾書には、令19条2項により原則どおり印鑑証明書を付けます。指定された官公署の職員が嘱託するときは令7条2項により代理権限証明情報も要らず、「代理権限証明情報を提供しなければならない」という肢は誤りです。電子情報処理組織による嘱託では官公署が作成した電子証明書の送信が要り、「送信をすることを要しない」という肢は誤りです。

裁判所書記官や税務署の嘱託で処分の制限の登記がされます

強制競売の開始決定による差押えの登記は民事執行法48条により裁判所書記官が嘱託し、買受人が代金を納付したときは同法82条により移転と差押えの抹消などを嘱託します。差押えに後れる賃借権があれば、「買受人への所有権の移転の登記及び当該差押えの登記の抹消のほか,当該賃借権の登記の抹消を嘱託しなければならない」という肢が正しい肢です。滞納処分では譲渡や転貸を許す定めのある賃借権を目的として「国は,当該賃借権を目的として滞納処分による差押えの登記を嘱託することができる」という肢が正しく、所有権移転請求権の仮登記について差押えの嘱託が「できない」という肢は誤りです。強制競売で法定地上権が成立したときの設定の登記が「裁判所書記官の嘱託によってされる」という肢は誤りで、当事者が共同して申請します。所有権の登記がない不動産に処分の制限の登記を嘱託すると、76条2項により登記官が職権で所有権の保存の登記をし、「当該建物の所有者の住所を証する情報を提供することを要しない」という肢が正しい肢です。

承諾や通知の仕組みは申請と同じ枠組みで動きます

抹消された差押えの登記の回復を嘱託するときも72条の準用で利害関係人の承諾が要り、「Bは,Cの承諾を証する情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。官公署が私人のためにした嘱託で登記が完了したときは、117条により登記官が官公署に登記識別情報を通知し、官公署がそれを登記権利者に通知します。県自身が権利者となる嘱託で「あらかじめ登記識別情報の通知を希望する旨の申出をしなかったときは,同県に対して登記識別情報は通知されない」という肢は正しい肢です。相続人に代位して相続の登記を嘱託したときは、被代位者に登記識別情報は通知されず、「当該登記が完了した旨を通知しなければならない」という肢のとおり完了通知がされます。官公署が代位して住所変更を嘱託するときは「登録免許税は課されない」という肢が正しい肢です。

不動産登記法 第116条

(官庁又は公署の嘱託による登記)
国又は地方公共団体が登記権利者となって権利に関する登記をするときは、官庁又は公署は、遅滞なく、登記義務者の承諾を得て、当該登記を登記所に嘱託しなければならない。
国又は地方公共団体が登記義務者となる権利に関する登記について登記権利者の請求があったときは、官庁又は公署は、遅滞なく、当該登記を登記所に嘱託しなければならない。

試験ではこう問われる

  1. 国や地方公共団体が当事者の登記は誰がどう嘱託するか(官公署。権利者なら義務者の承諾を得て、義務者なら権利者の請求で)
  2. 嘱託に登記識別情報や嘱託書の印鑑証明書は要るか(要らない。指定職員なら代理権限証明情報も不要。電子嘱託の電子証明書と私人の承諾書の印鑑証明書は要る)
  3. 裁判所書記官の嘱託でされる登記は何か(差押え、仮処分、売却による移転と抹消。法定地上権の設定は申請)
  4. 嘱託で完了した登記の登記識別情報は誰に通知されるか(官公署経由で権利者。被代位者には完了通知のみ)

この用語が問われた肢

R3 問13 ア正しい

財務省が私人に対して普通財産である国有財産の土地の売払いの手続をしたことにより当該土地につき行う売買を登記原因とする所有権の移転の登記について,当該私人の請求があったときは,財務省は,遅滞なく,当該登記を登記所に嘱託しなければならない。

R3 問13 イ正しい

財務省が私人に対して普通財産である国有財産の土地の売払いの手続をしたことにより当該土地につき売買を登記原因とする所有権の移転の登記を嘱託する場合において,当該私人に対して用途並びにその用途に供すべき期日及び期間を指定して当該指定に違反したときに当該売払いの契約を解除する旨の定めがあるときは,当該定めを当該登記の嘱託情報の内容とすることができる。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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