買戻特約かいもどしとくやく
売主が代金と契約費用を返して売買を解除できる特約で、売買と同時に登記すると第三者に対抗できます。登記事項、期間の上限、同時申請、行使と抹消の手続が肢で突かれます。
買戻特約は、不動産の売主が売買契約と同時にした特約により、買主が支払った代金と契約の費用を返して売買を解除できる制度です。売買と同時に登記すれば第三者に対抗でき、登記は所有権の移転の登記に付記してされます。登記事項は買主が支払った代金、契約の費用、期間の定めがあればその期間で、期間は10年を超えられません。肢は、登記事項に何を書けるか、所有権の移転と同時でなければならないこと、買戻権を行使したときの登記と職権抹消、期間満了後の抹消の方法を突いてきます。
不動産登記法 第96条(買戻しの特約の登記の登記事項)
買戻しの特約の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、買主が支払った代金(民法第五百七十九条の別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額)及び契約の費用並びに買戻しの期間の定めがあるときはその定めとする。

登記事項は代金・費用・期間で、別段の合意額も書けます
買戻特約の登記事項は、買主が支払った代金と契約の費用、期間の定めがあればその期間です。令和2年4月1日施行の民法改正で、代金に代えて別段の合意で定めた金額を返す特約が認められ、その金額が登記事項になりました。「買主が実際に支払った代金に代えて別途合意により定めた金額により買い戻せるものとした場合において、当該買戻しの特約の登記を申請するときは、その合意により定めた金額を申請情報の内容とすることはできない」という肢は誤りです。代金を分割で払う契約では、買主が現実に支払った金額と売買の総代金を書き、書かなければならないとする肢は正しい肢です。複数の不動産の代金を一括で定めたときは、不動産ごとに代金を分けて書く必要があり、一括した金額を書けるとする肢は誤りです。
期間は10年までで、超える申請は引き直されません
買戻しの期間は10年を超えられず、特約でそれより長い期間を定めても10年に縮まります。登記では、15年と書いた申請を登記官が10年に引き直して登記することはなく、申請が却下されます。「買戻しの期間を15年として申請情報を提供してした買戻しの特約の登記の申請をしても、買戻期間を10年と引き直して買戻しの特約の登記がされる」という肢は誤りです。期間を定めなかったときは5年以内に買い戻さなければならず、登記には期間を書きません。
所有権の移転と同時に別の申請情報で申請します
買戻特約は売買契約と同時にしなければ効力がなく、登記も所有権の移転の登記と同時に申請します。申請情報は別々ですが、同時にされた二つの申請には同一の受付番号が付されます。所有権の移転が代金完済の日にされる契約でも、買戻特約の原因日付は契約日、移転の原因日付は完済日として同時に申請でき、できるとする肢は正しい肢です。売買予約を原因とする所有権移転請求権の仮登記がされた後でも、売主を権利者とする買戻特約の仮登記はでき、「本登記がされるまでの間に,Aを権利者とする買戻しの特約の仮登記を申請することはできない」という肢は誤りです。
買戻権の移転には印鑑証明書が要り、住所証明情報は要りません
買戻権は売主の権利で、売買で第三者に譲れます。登記の目的は「○番付記1号買戻権移転」で、地上権に付記された場合は「1番地上権付記1号の付記1号買戻権移転」となり、「何番地上権付記1号買戻権移転」とする肢は誤りです。買戻権の移転では登記権利者の住所を証する情報は要らず、「登記権利者の住所を証する情報を提供することを要しない」という肢は正しい肢です。他方で登記義務者の印鑑証明書は要り、「買戻権の移転の登記を申請する場合には,Aの印鑑に関する証明書を提供することを要しない」という肢は誤りです。
行使で特約は職権抹消、10年経過なら買主の単独抹消です
買戻権を行使すると、買戻権者を権利者、現在の所有者を義務者とする買戻しによる所有権の移転の登記を申請し、登記官は買戻特約の登記を職権で抹消します。買戻権者にも登記識別情報が通知され、通知されないとする肢は誤りです。特約の後にされた差押えの登記までは職権で抹消されず、抹消されるとする肢は誤りです。契約の日から10年を経過したときは、登記権利者である買主が単独で特約の抹消を申請でき、登記原因証明情報も要りません。「買戻しの特約が付された売買契約の日から10年を経過したことにより、Bが単独で当該買戻しの特約の登記の抹消を申請する場合には、登記原因証明情報を提供することを要しない」という肢は正しい肢です。所有権の移転の登記を錯誤で抹消するときは、その申請に先立ってまたは同時に特約の付記登記の抹消を申請しなければならず、しなければならないとする肢は正しい肢です。
民法 第580条(買戻しの期間)
買戻しの期間は、十年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、十年とする。
買戻しについて期間を定めたときは、その後にこれを伸長することができない。
買戻しについて期間を定めなかったときは、五年以内に買戻しをしなければならない。
試験ではこう問われる
- 別段の合意で定めた金額や分割払いの現実支払額は登記事項になるか(なる。複数不動産の一括代金は不可)
- 15年の期間で申請すると10年に引き直して登記されるか(されない。却下)
- 買戻特約の登記は所有権の移転と同時か(同時に別の申請情報で同一の受付番号。原因日付は契約日と完済日で違ってよい)
- 買戻権の移転に住所証明情報と印鑑証明書は要るか(住所証明情報は不要、印鑑証明書は要る)
- 10年経過後の抹消は誰がどう申請するか(買主が単独。登記原因証明情報不要)
この用語が問われた肢
甲建物の所有権を目的として買戻しの特約が付された売買契約が締結され、買主が実際に支払った代金に代えて別途合意により定めた金額により買い戻せるものとした場合において、当該買戻しの特約の登記を申請するときは、その合意により定めた金額を申請情報の内容とすることはできない。
甲土地及び乙土地の売買代金及び契約費用を一括して定めた買戻しの特約が付された売買契約が締結された場合において、甲土地及び乙土地について買戻しの特約の登記を申請するときは、甲土地及び乙土地で一括して定めた売買代金及び契約費用を申請情報の内容とすることができる。
買戻しの期間を 15 年と合意する旨を記載した登記原因を証する情報を添付し、買戻しの期間を 15 年として申請情報を提供してした買戻しの特約の登記の申請をしても、買戻期間を 10 年と引き直して買戻しの特約の登記がされる。
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