職権による登記しょっけんによるとうき
当事者の申請や官公署の嘱託によらず、登記官が自らの判断でする登記です。表示に関する登記は広く認められますが、権利に関する登記は条文が列挙する場面に限られ、どれが職権でどれが申請や嘱託かが肢で突かれます。
職権による登記は、不動産登記法16条1項の申請主義の例外として、申請も嘱託もなしに登記官が自ら行う登記です。表示に関する登記は28条により登記官が職権でできますが、権利に関する登記は条文が個別に認める場面に限られます。却下事由のある登記の抹消を定める71条と、登記官の過誤による更正を定める67条がその中心です。処分の制限の嘱託に伴う保存を定める76条2項や、本登記や仮処分に伴う抹消を定める109条2項・111条3項・114条も職権の根拠です。肢で突かれるのは、職権で消される登記と申請や嘱託で消される登記の仕分けです。
不動産登記法 第28条(職権による表示に関する登記)
表示に関する登記は、登記官が、職権ですることができる。

表示に関する登記は登記官の職権が原則として認められます
28条は表示に関する登記を登記官が職権ですることができると定め、29条はそのための調査権限を与えます。登記官は必要があれば日出から日没までの間に不動産を検査し、所有者や関係者に文書の提示を求め、質問をすることができます。表示に関する登記が公示の土台であり、申請を待っていては記録が実態からずれるからです。権利に関する登記はこれと違い、当事者の意思に関わるので職権の場面を条文で限ります。所有権の登記名義人の氏名や住所の変更は、令和8年4月1日から登記官が職権でできるようになり、自然人についてはその申出があるときに限られます。
却下事由のある登記は通知と異議の手続を経て職権で抹消します
71条は、登記を完了した後に25条1号から3号までか13号に当たることを発見したときの手続です。登記官は権利者・義務者と利害関係人に1か月以内の期間を定めて通知し、期間内に書面で異議がなければ職権で抹消します。管轄違い、登記事項以外の事項の登記、既に登記されている登記、政令で定める登記すべきでないものの四つが対象です。「職権による登記の抹消がされるのは,管轄違いの登記又は登記事項以外の事項の登記を目的とする登記がされている場合に限られます」という解答は誤りで、既登記のものと13号の場合も含まれます。抹消に監督する局長の許可は要らず、抹消した後に権利者や義務者へ通知する定めもないので、「登記の抹消をした旨を通知することはありませんが」という解答は正しい肢です。
本登記や仮処分の登記に伴って後れる登記を職権で消します
所有権の仮登記に基づく本登記では109条2項により利害関係人の登記を職権で抹消し、仮登記名義人自身の根抵当権は「承諾を証する情報を提供しなくても,当該根抵当権の設定の登記は登記官の職権で抹消される」という肢が正しい肢です。処分禁止の仮処分の債権者が後れる登記の抹消を申請したときは、111条3項により「当該処分禁止の登記は,登記官の職権により,抹消される」という肢のとおり処分禁止の登記も消えます。保全仮登記に基づく本登記をするときも、114条により「当該処分禁止の登記は,登記官の職権により,抹消される」という肢が正しい肢です。後れる賃借権そのものは職権ではなく仮処分債権者の単独申請で消すので、「登記官は,職権で当該賃借権の登記を抹消しなければならない」という肢は誤りです。単有名義を共有名義に更正するときに地上権の登記があれば、「登記官は,職権で当該地上権の登記を抹消しなければならない」という肢は正しい肢です。
保存や回復を職権でする場面も条文で決まっています
所有権の登記がない不動産に嘱託で処分の制限の登記をするときは、76条2項により登記官が職権で所有権の保存の登記をします。仮登記を命ずる処分に基づく仮登記は申請であって嘱託ではないので、「登記官は,職権で所有権の保存の登記をしなければならない」という肢は誤りです。職権でした保存の登記は、後に処分の制限の登記が錯誤で抹消されても「登記官は職権で当該所有権の保存の登記を抹消することはできない」という肢のとおり残ります。敷地権付き区分建物で表題部所有者から取得した者名義の保存の登記を抹消したときは、「登記官は,その登記記録を閉鎖することなく,職権で表題部所有者の表示を回復する」という肢のとおり表示が戻ります。承役地の地役権の登記が申請で抹消されたときは、「要役地についての地役権の登記は,登記官の職権により抹消される」という肢のとおり要役地側も職権で消えます。
嘱託で消される登記を職権と取り違えさせます
破産手続開始の登記は裁判所書記官の嘱託で抹消されるので、担保権の実行による売却の後に「当該破産手続開始の登記は登記官の職権で抹消される」という肢は誤りです。公売による移転の登記がされたときの差押え後の抵当権も、税務署長の嘱託で抹消され、「登記官の職権により,抹消される」という肢は誤りです。買戻権の行使による移転の登記がされても、買戻特約の後にされた滞納処分の差押えの登記が「登記官の職権により,抹消される」という肢は誤りです。民事執行法82条の売却による移転でも、後れる賃借権の抹消は書記官の嘱託によります。職権で消えるのは条文が指す登記だけで、それ以外は嘱託か申請で消すと整理しておきます。
不動産登記法 第71条(職権による登記の抹消)
登記官は、権利に関する登記を完了した後に当該登記が第二十五条第一号から第三号まで又は第十三号に該当することを発見したときは、登記権利者及び登記義務者並びに登記上の利害関係を有する第三者に対し、一月以内の期間を定め、当該登記の抹消について異議のある者がその期間内に書面で異議を述べないときは、当該登記を抹消する旨を通知しなければならない。
登記官は、通知を受けるべき者の住所又は居所が知れないときは、法務省令で定めるところにより、前項の通知に代えて、通知をすべき内容を公告しなければならない。
登記官は、第一項の異議を述べた者がある場合において、当該異議に理由がないと認めるときは決定で当該異議を却下し、当該異議に理由があると認めるときは決定でその旨を宣言し、かつ、当該異議を述べた者に通知しなければならない。
登記官は、第一項の異議を述べた者がないとき、又は前項の規定により当該異議を却下したときは、職権で、第一項に規定する登記を抹消しなければならない。
試験ではこう問われる
- 表示に関する登記と権利に関する登記で職権の範囲はどう違うか(表示は原則として職権可、権利は条文の列挙のみ)
- 職権抹消の対象と手続は何か(25条1〜3号・13号。1か月以内の期間を定めて通知し、異議がなければ抹消。許可不要)
- 本登記や仮処分で職権抹消されるのはどの登記か(利害関係人の登記、処分禁止の登記。後れる賃借権は債権者の単独申請)
- 職権で保存の登記がされるのはいつか(所有権の登記がない不動産に処分の制限の登記が嘱託されたとき)
- 破産手続開始の登記や公売後の抵当権は職権で消えるか(消えない。裁判所書記官や税務署長の嘱託で抹消)
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