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組織再編の債権者保護手続と株式買取請求そしきさいへんのさいけんしゃほごてつづきとかぶしきかいとりせいきゅう

商業登記 第9章 組織再編 過去問で8肢

組織再編に反対する債権者に異議を述べる機会を与える債権者保護手続と、反対する株主に持株を公正な価格で買い取らせる株式買取請求です。再編の型と会社の立場ごとに誰が相手になるかと、登記の添付書面に現れるのがどちらかで肢が作られます。

組織再編の債権者保護手続は、合併・分割・株式交換・株式移転・株式交付・組織変更で財産や債務者が動くときの手続です。債権者に官報公告と各別の催告で異議を述べる機会を与え、異議があれば弁済や担保提供をします。株式買取請求は、再編に反対する株主が会社に対して自分の株式を公正な価格で買い取るよう求める権利です。どちらも株主総会の承認と並ぶ再編の手続ですが、登記の添付書面に現れるのは債権者保護手続だけになります。肢で突かれるのは、再編の型ごとに誰が相手になるかと、各別の催告を省ける範囲です。

会社法 第789条

(債権者の異議)
次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、消滅株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる。
一 吸収合併をする場合 吸収合併消滅株式会社の債権者
二 吸収分割をする場合 吸収分割後吸収分割株式会社に対して債務の履行(当該債務の保証人として吸収分割承継会社と連帯して負担する保証債務の履行を含む。)を請求することができない吸収分割株式会社の債権者(第七百五十八条第八号又は第七百六十条第七号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、吸収分割株式会社の債権者)
三 株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合 当該新株予約権付社債についての社債権者
前項の規定により消滅株式会社等の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、消滅株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができるものに限る。)には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 吸収合併等をする旨
二 存続会社等の商号及び住所
三 消滅株式会社等及び存続会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
前項の規定にかかわらず、消滅株式会社等が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告(吸収分割をする場合における不法行為によって生じた吸収分割株式会社の債務の債権者に対するものを除く。)は、することを要しない。
債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該吸収合併等について承認をしたものとみなす。
債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは、消滅株式会社等は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収合併等をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

代表者が掲示板に大きな紙を貼り、手紙を受け取った債権者たちが手を挙げる。隅で株主が株券を差し出して硬貨の袋を受け取る
債権者保護手続は再編の型と会社の立場で相手が決まり、株式買取請求は登記の添付書面に現れません
合併は両社の全債権者分割会社は履行請求できなくなる債権者分割の不法行為債権者は催告省略不可買取請求は添付書面でない

合併は両社の全債権者、分割は承継会社の全部と分割会社の一部です

吸収合併では消滅会社と存続会社の債権者全員が異議を述べられ、新設合併では各消滅会社の債権者全員です。吸収分割では承継会社の債権者全員が相手で、新設分割では設立会社側の手続はありません。分割会社の債権者は、分割後に分割会社に履行を請求できなくなる者だけです。分割会社がすべての債務を重畳的に引き受けるならその債権者はおらず、分割会社側の手続は要りません。逆に、分割対価の株式を分割会社の株主に配当する定めがあるときは、分割会社の債権者全員が相手になります。組織変更では、組織変更をする会社の債権者全員です。

株式交換・株式移転・株式交付では相手が限られます

株式交換の子会社側で異議を述べられるのは、新株予約権付社債の社債の債務を親会社が承継する場合の社債権者だけです。親会社側は、対価が親会社の株式その他これに準ずるもの以外を含む場合と、社債の債務を承継する場合に手続が要ります。株式移転では、設立会社の新株予約権に代える株式移転計画新株予約権が付された新株予約権付社債の社債権者だけで、設立会社側の手続はありません。株式交付では対価が親会社の株式以外を含み、その割合が法務省令で定める5パーセント以上の場合に親会社の債権者が相手で、「株式交付親会社の株式のみを交付した場合は、株式交付による変更の登記の申請書には、債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りです。

催告の省略は公告方法で決まり、分割の不法行為債権者は例外です

官報公告のほか、定款の定めに従って日刊新聞紙か電子公告でも公告すれば、知れている債権者への各別の催告を省けます。合併では不法行為債権者についての例外がなく、「不法行為によって生じた消滅会社の債務の債権者がいるときであっても,吸収合併による変更の登記の申請書には,当該債権者に対して各別の催告をしたことを証する書面を添付することを要しない」という肢は正しい肢です。吸収分割と新設分割では、分割会社の不法行為債権者への催告は省けません。合併で消滅する会社が合名会社か合資会社のときも、二重の公告による省略はできません。組織変更をする持分会社のうち省略できるのは合同会社だけで、「合名会社が組織変更をした場合において、債権者保護手続に係る公告を官報のほか定款の定めに従って時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙によってしたときは、組織変更後の株式会社についてする登記の申請書には、知れている債権者に対して各別の催告をしたことを証する書面を添付することを要しない」という肢は誤りです。

登記には公告・催告と異議への対応を証する書面を添付します

申請書には、公告および催告をしたことを証する書面を添付します。異議を述べた債権者がいるときは、弁済・担保提供・信託をしたこと、または再編をしてもその債権者を害するおそれがないことを証する書面も要ります。公告の内容は再編をする旨、相手会社の商号と住所、計算書類に関する事項、1か月以上の異議期間で、承継する事業の内容までは要りません。「当該公告をしたことを証する書面の内容として,吸収分割承継会社が吸収分割により承継する事業の内容が記載されていることを要する」という肢は誤りです。相手となる債権者がいないときは、その旨を上申する形です。

株式買取請求は登記の添付書面には現れず、簡易のときはありません

吸収型の再編では、反対株主は効力発生日の20日前の日から前日までの間に買取請求をし、新設型では通知または公告の日から20日以内にします。吸収型では会社は効力発生日の20日前までに、新設型では承認決議の日から2週間以内に、株主に再編をする旨と相手会社の商号・住所を通知し、公開会社などでは公告で代えることが可能です。簡易組織再編のときは買取請求がなく、略式のときは特別支配会社を除く株主にあります。買取請求や通知の書面は登記の添付書面ではなく、通知から20日を経過した日は新設型の登記期間の起算日を決める候補の一つになるだけです。再編の型に応じた新株予約権買取請求という別の制度も、新株予約権者のために置かれた仕組みです。

会社法 第799条

(債権者の異議)
次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、存続株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる。
一 吸収合併をする場合 吸収合併存続株式会社の債権者
二 吸収分割をする場合 吸収分割承継株式会社の債権者
三 株式交換をする場合において、株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式その他これに準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合又は第七百六十八条第一項第四号ハに規定する場合 株式交換完全親株式会社の債権者
前項の規定により存続株式会社等の債権者が異議を述べることができる場合には、存続株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 吸収合併等をする旨
二 消滅会社等の商号及び住所
三 存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
前項の規定にかかわらず、存続株式会社等が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該吸収合併等について承認をしたものとみなす。
債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは、存続株式会社等は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収合併等をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

試験ではこう問われる

  1. 吸収分割の分割会社でどの債権者が異議を述べられるか(履行を請求できなくなる債権者。配当の定めがあれば全員)
  2. 株式交換の子会社側で債権者保護手続が要るのは誰に対してか(新株予約権付社債の社債権者だけ)
  3. 各別の催告を省けない債権者は誰か(分割会社の不法行為債権者。合併には例外なし)
  4. 組織変更をする合名会社は各別の催告を省けるか(省けない。合同会社だけ)
  5. 株式買取請求の書面は登記に要るか(要らない)

この用語が問われた肢

R3 問31 ウ正しい

消滅会社が債権者保護手続に係る公告を官報及び定款の定めに従って電子公告の方法によりした場合には,不法行為によって生じた消滅会社の債務の債権者がいるときであっても,吸収合併による変更の登記の申請書には,当該債権者に対して各別の催告をしたことを証する書面を添付することを要しない。

R6 問34 ウ正しい

【問】新設分割計画において、会社法第 763 条第 1 項第 12 号に掲げる事項の定めがなく、かつ、新設分割株式会社が新設分割設立株式会社に承継させる債務の全てにつき新設分割株式会社が重畳的債務引受けをする旨の定めがある場合には、新設分割設立株式会社の設立の登記の申請書には、債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付する必要がありますか。 この場合、当該登記の申請書に債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付する必要はありません。

R5 問33 エ誤り

株式交付親会社が、株式交付計画に基づき、株式交付子会社の株式の譲渡人に対し、株式交付親会社の株式のみを交付した場合は、株式交付による変更の登記の申請書には、債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければならない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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