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債権者保護手続さいけんしゃほごてつづき

商業登記 第7章 株式と資本金 過去問で12肢

資本金等の額の減少や組織再編の前に、債権者に官報公告と各別の催告で異議を述べる機会を与え、異議があれば弁済や担保提供をする手続です。どの場面で要り、どの場面で省けるかと、添付書面の形が肢で突かれます。

債権者保護手続は、会社の責任財産が減るおそれのある行為の前に、債権者に異議を述べる機会を与える手続です。会社法449条が資本金または準備金の額の減少について定め、官報に公告し、知れている債権者には各別に催告します。1か月以上の期間内に異議を述べた債権者には、弁済・担保提供・信託のいずれかをします。組織再編にも同じ型の手続があり、それぞれの条文で要否が分かれます。登記では、公告と催告をしたことを証する書面の添付が要るかどうかが問われるのが典型です。

会社法 第449条

(債権者の異議)
株式会社が資本金又は準備金(以下この条において「資本金等」という。)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる。ただし、準備金の額のみを減少する場合であって、次のいずれにも該当するときは、この限りでない。
一 定時株主総会において前条第一項各号に掲げる事項を定めること。
二 前条第一項第一号の額が前号の定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
前項の規定により株式会社の債権者が異議を述べることができる場合には、当該株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 当該資本金等の額の減少の内容
二 当該株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
三 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
前項の規定にかかわらず、株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該資本金等の額の減少について承認をしたものとみなす。
債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べたときは、株式会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等(信託会社及び信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項の認可を受けた金融機関をいう。)をいう。以下同じ。)に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該資本金等の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
次の各号に掲げるものは、当該各号に定める日にその効力を生ずる。ただし、第二項から前項までの規定による手続が終了していないときは、この限りでない。
一 資本金の額の減少 第四百四十七条第一項第三号の日
二 準備金の額の減少 前条第一項第三号の日
株式会社は、前項各号に定める日前は、いつでも当該日を変更することができる。

代表者が掲示板に公告を貼り、郵便配達が債権者の家に封書を配り、一人が封書を開いて手を挙げる
債権者保護手続は官報公告と各別の催告で、1か月以上の期間に異議があれば弁済・担保・信託をします
資本金減少は常に要る準備金のみの欠損填補と全部資本組入れは不要日刊紙か電子公告で催告省略組織再編は当事会社と対価で分かれる

資本金の減少には常に要り、準備金の減少には例外があります

資本金の額を減少する場合は、金額や理由にかかわらず債権者が異議を述べることができます。準備金の額のみを減少する場合は、定時株主総会で定め、かつ減少額がその日の欠損の額を超えないときは異議を述べることができません。会計監査人設置会社で計算書類が取締役会の承認で確定するときは、欠損の額はその承認の日を基準にします。減少する準備金の額の全部を資本金にするときも、会社の財産は動かないので手続の対象から外れます。準備金の一部を資本金にする場合は会社法上の手続は要りますが、準備金の額は登記事項でないので登記の添付書面にはなりません。「準備金の額を減少させてその一部を資本金とする場合における資本金の額の変更の登記の申請書には,準備金の額の減少に関して債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りです。

日刊紙か電子公告を重ねれば各別の催告を省けます

会社は、減少の内容、計算書類に関する事項、一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報に公告し、知れている債権者には各別に催告します。異議を述べる期間は1か月を下ることができません。官報のほかに定款で定めた日刊新聞紙または電子公告で公告したときは、各別の催告を省略できます。期間内に異議を述べなかった債権者は減少を承認したものとみなされ、異議を述べた債権者には弁済するか、相当の担保を提供するか、信託会社等に相当の財産を信託します。害するおそれがないときは何もしなくて構いません。

減資の登記には公告・催告と異議への対応を証する書面が要ります

資本金の額の減少による変更の登記の申請書には、公告と催告をしたことを証する書面を添付します。日刊新聞紙または電子公告で重ねて公告したときは、その方法による公告をしたことを証する書面で足ります。異議を述べた債権者がいるときは、弁済や担保提供や信託をしたこと、または害するおそれがないことを証する書面も要ります。異議を述べた債権者がいないときは、その旨を代表者が証明する書面を添付する扱いです。

組織再編では当事会社と対価によって要否が分かれます

吸収分割では承継会社は常に手続が要りますが、分割会社は、分割対価の株式を株主に配当する定めがない限り、承継させる債務の全部について重畳的債務引受をするなら手続が要りません。「A社に承継させる債務の全てにつきB社が重畳的債務引受をする旨の条項が吸収分割契約書にある場合には,A社の吸収分割による変更の登記の申請書に,A社及びB社において債権者保護手続をしたことを証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りです。株式交付親会社が対価として株式のみを交付するときも手続は要らず、「株式交付親会社の株式のみを交付した場合は、株式交付による変更の登記の申請書には、債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りです。合併の消滅会社が官報と電子公告で公告したときは、不法行為債権者がいても各別の催告の書面を要しないとする肢が正しい肢で、分割と違って不法行為債権者の例外がありません。

商業登記法 第70条

(資本金の額の減少による変更の登記)
資本金の額の減少による変更の登記の申請書には、会社法第四百四十九条第二項の規定による公告及び催告(同条第三項の規定により公告を官報のほか時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告によつてした場合にあつては、これらの方法による公告)をしたこと並びに異議を述べた債権者があるときは、当該債権者に対し弁済し若しくは相当の担保を提供し若しくは当該債権者に弁済を受けさせることを目的として相当の財産を信託したこと又は当該資本金の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないことを証する書面を添付しなければならない。

試験ではこう問われる

  1. 準備金の一部を資本金にする登記に債権者保護の書面は要るか(要らない。準備金は登記事項でない)
  2. 各別の催告を省略できるのはどんなときか(官報のほか定款の日刊新聞紙か電子公告で公告したとき)
  3. 異議を述べる期間は最短で何か月か(1か月)
  4. 重畳的債務引受のある吸収分割で分割会社の手続は要るか(分割対価を株主に配当する定めがなければ要らない)
  5. 株式のみを対価とする株式交付に手続は要るか(要らない)

この用語が問われた肢

R2 問31 ア誤り

準備金の額を減少させてその一部を資本金とする場合における資本金の額の変更の登記の申請書には,準備金の額の減少に関して債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければならない。

R5 問33 エ誤り

株式交付親会社が、株式交付計画に基づき、株式交付子会社の株式の譲渡人に対し、株式交付親会社の株式のみを交付した場合は、株式交付による変更の登記の申請書には、債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければならない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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