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株式移転かぶしきいてん

商業登記 第9章 組織再編 過去問で3肢

一または二以上の株式会社が、その発行済株式の全部を新しく設立する株式会社に取得させ、完全子会社になる組織再編です。設立登記の登記事項に株式移転をした旨が含まれないこと、子会社側の登記が要る例外、社債権者への債権者保護で肢が作られます。

株式移転は、一または二以上の株式会社が、その発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させる組織再編です。会社法773条の事項を定めた株式移転計画を作り、子会社の株主総会で承認を受け、設立会社の成立の日に子会社の株主は設立会社の株主になります。持株会社を作るときの典型的な手法で、設立される完全親会社の設立登記が効力要件になります。肢で突かれるのは、設立登記に何を登記するか、子会社側にいつ登記が要るかの二点になります。

会社法 第773条

(株式移転計画)
一又は二以上の株式会社が株式移転をする場合には、株式移転計画において、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株式移転により設立する株式会社(以下この編において「株式移転設立完全親会社」という。)の目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数
二 前号に掲げるもののほか、株式移転設立完全親会社の定款で定める事項
三 株式移転設立完全親会社の設立時取締役の氏名
四 次のイからハまでに掲げる場合の区分に応じ、当該イからハまでに定める事項
 イ 株式移転設立完全親会社が会計参与設置会社である場合 株式移転設立完全親会社の設立時会計参与の氏名又は名称
 ロ 株式移転設立完全親会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合 株式移転設立完全親会社の設立時監査役の氏名
 ハ 株式移転設立完全親会社が会計監査人設置会社である場合 株式移転設立完全親会社の設立時会計監査人の氏名又は名称
五 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転をする株式会社(以下この編において「株式移転完全子会社」という。)の株主に対して交付するその株式に代わる当該株式移転設立完全親会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式移転設立完全親会社の資本金及び準備金の額に関する事項
六 株式移転完全子会社の株主に対する前号の株式の割当てに関する事項
七 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の株主に対してその株式に代わる当該株式移転設立完全親会社の社債等を交付するときは、当該社債等についての次に掲げる事項
 イ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
 ロ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
 ハ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのイに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのロに規定する事項
八 前号に規定する場合には、株式移転完全子会社の株主に対する同号の社債等の割当てに関する事項
九 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる当該株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付するときは、当該新株予約権についての次に掲げる事項
 イ 当該株式移転設立完全親会社の新株予約権の交付を受ける株式移転完全子会社の新株予約権の新株予約権者の有する新株予約権(以下この編において「株式移転計画新株予約権」という。)の内容
 ロ 株式移転計画新株予約権の新株予約権者に対して交付する株式移転設立完全親会社の新株予約権の内容及び数又はその算定方法
 ハ 株式移転計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、株式移転設立完全親会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
十 前号に規定する場合には、株式移転計画新株予約権の新株予約権者に対する同号の株式移転設立完全親会社の新株予約権の割当てに関する事項
株式移転設立完全親会社が監査等委員会設置会社である場合には、前項第三号に掲げる事項は、設立時監査等委員である設立時取締役とそれ以外の設立時取締役とを区別して定めなければならない。
第一項に規定する場合において、株式移転完全子会社が種類株式発行会社であるときは、株式移転完全子会社は、その発行する種類の株式の内容に応じ、同項第六号に掲げる事項として次に掲げる事項を定めることができる。
一 ある種類の株式の株主に対して株式移転設立完全親会社の株式の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類
二 前号に掲げる事項のほか、株式移転設立完全親会社の株式の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容
第一項に規定する場合には、同項第六号に掲げる事項についての定めは、株式移転完全子会社の株主(前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて株式移転設立完全親会社の株式を交付することを内容とするものでなければならない。
前二項の規定は、第一項第八号に掲げる事項について準用する。この場合において、前二項中「株式移転設立完全親会社の株式」とあるのは、「株式移転設立完全親会社の社債等」と読み替えるものとする。

既存の会社の株主が株券を差し出し、頭上に新しく建った持株会社から株券が降ってくる。元の建物は残り、職員が新しい帳簿を開く
株式移転は設立の登記で効力が生じ、株式移転をした旨や子会社の商号は登記事項になりません
効力は設立登記株式移転の旨は登記しない子会社の新株予約権変更登記は経由・同時債権者保護は新株予約権付社債の社債権者のみ

効力は設立の登記で生じ、登記期間は承認などの日から2週間です

株式移転設立完全親会社は成立の日に子会社の発行済株式の全部を取得し、成立の日は設立の登記の日です。登記期間は、承認決議の日、必要な種類株主総会の決議の日、株主や新株予約権者への通知または公告から20日を経過した日などのうち最も遅い日から2週間です。債権者保護手続終了の日と子会社が定めた日も候補に入ります。共同株式移転では、子会社が定めた日の代わりに合意で定めた日を候補に入れます。新設型なので略式も簡易もなく、承認は原則として特別決議で、種類株式発行会社でない公開会社が譲渡制限株式等の交付を受けるときは特殊決議です。設立会社が定める発行可能株式総数や役員は、株式移転計画に定めておきます。

登記簿に載るのは通常の設立の事項だけで、株式移転の旨はありません

合併と分割には、合併・分割をした旨と相手会社の商号・本店を登記する規定がありますが、株式移転にはありません。設立会社の登記簿には通常の設立と同じ事項だけが載り、株式移転で設立されたことは読み取れません。「株式移転による設立の登記の申請書には,登記すべき事項として,株式会社の設立の登記における登記すべき事項のほか,株式移転をした旨並びに株式移転完全子会社の商号及び本店をも記載しなければならない」という肢は誤りです。会社成立の年月日は登記の日です。

新株予約権を設立会社のものに代えたときは子会社も登記します

株式移転計画で設立会社が子会社の新株予約権者に設立会社の新株予約権を交付する定めがあるときは、子会社の新株予約権は成立の日に消滅します。子会社はその変更登記を、設立会社の本店が管轄区域内になければ設立会社の登記所を経由し、設立登記と同時に申請します。「株式移転完全子会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代えて当該株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付した場合には、株式移転完全子会社について株式移転による新株予約権の変更の登記を申請する必要があります」という肢は正しい肢です。それ以外の場合、子会社は株主が変わるだけで登記をしません。

債権者保護手続は新株予約権付社債の社債権者に対してだけです

株式移転では子会社の財産も設立会社の財産も動かないので、債権者保護手続は原則としてありません。子会社の新株予約権付社債に付された新株予約権に代えて設立会社の新株予約権を交付し、社債の債務を設立会社が承継するときだけ、その社債権者が異議を述べられます。「株式移転に際して株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる当該株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付する場合において、当該株式移転完全子会社の新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、株式移転による設立の登記の申請書には、株式移転完全子会社が当該新株予約権付社債の社債権者に対して債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。株券発行会社の子会社は株券提出公告をしてその書面を添付し、全部の株式について株券を発行していなければ公告の代わりにその旨を証する書面を添付します。登録免許税は通常の設立と同じ資本金の額の1000分の7で、15万円に満たなければ15万円です。

商業登記法 第90条

(株式移転の登記)
株式移転による設立の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。
一 株式移転計画書
二 定款
三 第四十七条第二項第六号から第八号まで及び第十号から第十二号までに掲げる書面
四 前条第四号に掲げる書面
五 株式移転をする株式会社(以下「株式移転完全子会社」という。)の登記事項証明書。ただし、当該登記所の管轄区域内に株式移転完全子会社の本店がある場合を除く。
六 株式移転完全子会社において会社法第八百四条第一項及び第三項の規定による株式移転計画の承認その他の手続があつたことを証する書面
七 株式移転完全子会社において会社法第八百十条第二項の規定による公告及び催告(同条第三項の規定により公告を官報のほか時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告によつてした場合にあつては、これらの方法による公告)をしたこと並びに異議を述べた債権者があるときは、当該債権者に対し弁済し若しくは相当の担保を提供し若しくは当該債権者に弁済を受けさせることを目的として相当の財産を信託したこと又は当該株式移転をしても当該債権者を害するおそれがないことを証する書面
八 株式移転完全子会社が株券発行会社であるときは、第五十九条第一項第二号に掲げる書面
九 株式移転完全子会社が新株予約権を発行している場合であつて、会社法第七百七十三条第一項第九号に規定する場合には、第五十九条第二項第二号に掲げる書面

試験ではこう問われる

  1. 株式移転の効力はいつ生じるか(設立の登記の日)
  2. 株式移転をした旨と子会社の商号は設立登記の登記事項か(登記事項でない)
  3. 子会社側に登記が要るのはどんな場合か(設立会社の新株予約権を交付したとき)
  4. 債権者保護手続が要るのはどんな場合か(新株予約権付社債の社債の債務を承継するときだけ)
  5. 株式移転による設立の登録免許税の最低額はいくらか(15万円)

この用語が問われた肢

R2 問33 イ誤り

株式移転による設立の登記の申請書には,登記すべき事項として,株式会社の設立の登記における登記すべき事項のほか,株式移転をした旨並びに株式移転完全子会社の商号及び本店をも記載しなければならない。

R7 問34 イ正しい

【問】次に、株式移転をする場合に、株式移転完全子会社について登記を申請する必要があるのはどのような場合ですか。 株式移転設立完全親会社が、株式移転完全子会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代えて当該株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付した場合には、株式移転完全子会社について株式移転による新株予約権の変更の登記を申請する必要があります。

R4 問32 ア正しい

株式移転に際して株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる当該株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付する場合において、当該株式移転完全子会社の新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、株式移転による設立の登記の申請書には、株式移転完全子会社が当該新株予約権付社債の社債権者に対して債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければならない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

商業登記を肢別で解く

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