簡易組織再編・略式組織再編かんいそしきさいへんりゃくしきそしきさいへん
組織再編の規模が小さいときに株主総会の承認を省く簡易手続と、相手会社が特別支配会社であるときに承認を省く略式手続です。どの会社のどの再編で使えるか、使えない例外、添付書面の形で肢が作られます。
簡易組織再編は、存続会社等が交付する対価の額や分割会社が承継させる資産の額が5分の1以下のときに、株主総会の承認を省ける手続です。略式組織再編は、相手会社が総株主の議決権の10分の9以上を持つ特別支配会社であるときに、被支配会社側の株主総会の承認を省ける手続です。どちらも吸収型の再編と事業譲渡等で使え、新設型には相手会社がないので略式はなく、簡易も新設分割の分割会社側にしかありません。肢で突かれるのは、使える場面の境界と、例外で承認が戻る場合です。
会社法 第796条(吸収合併契約等の承認を要しない場合等)
前条第一項から第三項までの規定は、吸収合併消滅会社、吸収分割会社又は株式交換完全子会社(以下この目において「消滅会社等」という。)が存続株式会社等の特別支配会社である場合には、適用しない。ただし、吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続株式会社等の譲渡制限株式である場合であって、存続株式会社等が公開会社でないときは、この限りでない。
前条第一項から第三項までの規定は、第一号に掲げる額の第二号に掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を存続株式会社等の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合には、適用しない。ただし、同条第二項各号に掲げる場合又は前項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
一 次に掲げる額の合計額
イ 吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社(以下この号において「消滅会社等の株主等」という。)に対して交付する存続株式会社等の株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額
ロ 消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の社債、新株予約権又は新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
ハ 消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額
二 存続株式会社等の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額
前項本文に規定する場合において、法務省令で定める数の株式(前条第一項の株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)を有する株主が第七百九十七条第三項の規定による通知又は同条第四項の公告の日から二週間以内に吸収合併等に反対する旨を存続株式会社等に対し通知したときは、当該存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。

簡易は5分の1以下のときで、存続会社側は反対通知で戻ります
存続会社等では、交付する株式の数に一株当たり純資産額を掛けた額と、社債等やそれ以外の財産の帳簿価額の合計が、純資産額の5分の1を超えなければ承認を省けます。ただし一定数の株式を持つ株主が2週間以内に反対を通知すると、株主総会の承認が要ります。分割会社側では承継させる資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えなければ承認を省け、こちらには反対通知で戻る仕組みがありません。「B社の株主から吸収分割に反対する旨の通知があったときは,A社の吸収分割による変更の登記の申請書に,反対する旨を通知したB社の株主が有する株式の数を証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りです。株式交付でも対価が純資産額の5分の1以下なら簡易ですが、公開会社でない親会社は使えません。
差損や非公開会社の譲渡制限株式の対価では簡易にできません
存続会社が承継する債務が資産を超えるなど差損が生じる場合は、取締役が株主総会で説明すべき事項なので簡易合併にはできません。存続会社等が公開会社でなく、対価が存続会社等の譲渡制限株式であるときも簡易にはできず、株主総会の承認が要ります。「A社が会社法上の公開会社でなく,かつ,吸収分割の対価としてA社の譲渡制限株式のみを交付する場合において,交付するA社の株式の価額の合計額がA社の純資産額として法務省令により定まる額の5分の1を超えないときは,A社の吸収分割による変更の登記の申請書に,吸収分割契約を承認したA社の株主総会議事録を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。非公開会社の株主にとって新しい株主が入ることは重大なので、規模に関わらず承認を要する作りです。
略式は特別支配会社が相手のときで、譲渡制限株式が絡むと戻ります
存続会社等が消滅会社等の特別支配会社なら消滅会社等側の承認は要らず、消滅会社等が存続会社等の特別支配会社なら存続会社等側の承認は要りません。消滅会社等側の例外は、対価が譲渡制限株式等で、消滅会社等が公開会社かつ種類株式発行会社でない場合です。「会社法上の公開会社でないA社が,種類株式を発行していない会社法上の公開会社であるB社の特別支配会社である場合において,吸収合併に際してB社の株主に対してA社の株式を交付するときは,A社の吸収合併による変更の登記の申請書には,合併契約の承認の決議をしたB社の株主総会の議事録を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。存続会社等側の例外は、対価が公開会社でない存続会社等の譲渡制限株式である場合に限られます。「吸収合併に際して吸収合併消滅会社の株主に対して交付する金銭等の全部が公開会社でない吸収合併存続会社の譲渡制限株式である場合は、吸収合併消滅会社が吸収合併存続会社の特別支配会社であっても、吸収合併による変更の登記の申請書には、吸収合併契約を承認した吸収合併存続会社の株主総会の議事録を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。
新設型には略式がなく、簡易は新設分割の分割会社側だけです
新設合併、新設分割、株式移転には相手となる既存の会社がないので、特別支配会社を前提とする略式はありません。簡易があるのは新設分割の分割会社側だけで、承継させる資産が総資産額の5分の1以下のときに承認を省けます。「いわゆる簡易分割又は略式分割の場合には、当該登記の申請書に株主総会の議事録を添付する必要はありません」と答える新設分割の肢は誤りです。事業譲渡等にも簡易と略式があり、譲受けの対価が純資産額の5分の1以下なら簡易、相手方が特別支配会社なら略式に当たります。
申請書には該当を証する書面と取締役会議事録を添付します
簡易や略式に当たるときに株主総会議事録の代わりに添付するのは、その場合に該当することを証する書面です。存続会社等側の簡易では、反対の通知をした株主がいても承認を要する数に達しないことを証する書面も必要です。消滅会社等や分割会社側で承認を省いたときは、該当を証する書面とともに取締役会議事録または取締役の過半数の一致を証する書面が要ります。簡易のときは反対株主の株式買取請求がなく、略式のときに買取請求を持つのは特別支配会社以外の株主です。
会社法 第784条(吸収合併契約等の承認を要しない場合)
前条第一項の規定は、吸収合併存続会社、吸収分割承継会社又は株式交換完全親会社(以下この目において「存続会社等」という。)が消滅株式会社等の特別支配会社である場合には、適用しない。ただし、吸収合併又は株式交換における合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合であって、消滅株式会社等が公開会社であり、かつ、種類株式発行会社でないときは、この限りでない。
前条の規定は、吸収分割により吸収分割承継会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が吸収分割株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を吸収分割株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合には、適用しない。
試験ではこう問われる
- 簡易組織再編の基準は何か(存続会社等は対価が純資産額の5分の1以下、分割会社は承継資産が総資産額の5分の1以下)
- 分割会社側の簡易分割で反対株主の通知は承認を復活させるか(させない)
- 非公開の存続会社が譲渡制限株式を対価にするとき簡易・略式にできるか(できない)
- 新設分割に略式分割はあるか(ない)
- 簡易・略式の申請書に何を添付するか(該当を証する書面と取締役会議事録)
この用語が問われた肢
吸収合併に際して吸収合併消滅会社の株主に対して交付する金銭等の全部が公開会社でない吸収合併存続会社の譲渡制限株式である場合は、吸収合併消滅会社が吸収合併存続会社の特別支配会社であっても、吸収合併による変更の登記の申請書には、吸収合併契約を承認した吸収合併存続会社の株主総会の議事録を添付しなければならない。
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