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吸収合併きゅうしゅうがっぺい

商業登記 第9章 組織再編 過去問で13肢

会社が他の会社とする合併のうち、一方が存続して消滅する会社の権利義務の全部を承継する形です。存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記の二本立てで、添付書面の要否と登録免許税で肢が作られます。

吸収合併は、会社が他の会社と合併して一方が存続し、消滅する会社の権利義務の全部を効力発生日に承継する組織再編です。存続会社が株式会社なら会社法749条の事項を定めた合併契約を結び、両社がそれぞれ承認と債権者保護手続を済ませて効力発生日を迎えます。登記は存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記の二本立てで、どちらも効力発生日から2週間以内に申請します。肢で突かれるのは、どの会社の承認が要るか、何を添付するか、登録免許税をいくら納めるかです。

会社法 第749条

(株式会社が存続する吸収合併契約)
会社が吸収合併をする場合において、吸収合併後存続する会社(以下この編において「吸収合併存続会社」という。)が株式会社であるときは、吸収合併契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株式会社である吸収合併存続会社(以下この編において「吸収合併存続株式会社」という。)及び吸収合併により消滅する会社(以下この編において「吸収合併消滅会社」という。)の商号及び住所
二 吸収合併存続株式会社が吸収合併に際して株式会社である吸収合併消滅会社(以下この編において「吸収合併消滅株式会社」という。)の株主又は持分会社である吸収合併消滅会社(以下この編において「吸収合併消滅持分会社」という。)の社員に対してその株式又は持分に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項
 イ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該吸収合併存続株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項
 ロ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
 ハ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
 ニ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
 ホ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
三 前号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続株式会社を除く。)又は吸収合併消滅持分会社の社員(吸収合併存続株式会社を除く。)に対する同号の金銭等の割当てに関する事項
四 吸収合併消滅株式会社が新株予約権を発行しているときは、吸収合併存続株式会社が吸収合併に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる当該吸収合併存続株式会社の新株予約権又は金銭についての次に掲げる事項
 イ 当該吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対して吸収合併存続株式会社の新株予約権を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
 ロ イに規定する場合において、イの吸収合併消滅株式会社の新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、吸収合併存続株式会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
 ハ 当該吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対して金銭を交付するときは、当該金銭の額又はその算定方法
五 前号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対する同号の吸収合併存続株式会社の新株予約権又は金銭の割当てに関する事項
六 吸収合併がその効力を生ずる日(以下この節において「効力発生日」という。)
前項に規定する場合において、吸収合併消滅株式会社が種類株式発行会社であるときは、吸収合併存続株式会社及び吸収合併消滅株式会社は、吸収合併消滅株式会社の発行する種類の株式の内容に応じ、同項第三号に掲げる事項として次に掲げる事項を定めることができる。
一 ある種類の株式の株主に対して金銭等の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類
二 前号に掲げる事項のほか、金銭等の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容
第一項に規定する場合には、同項第三号に掲げる事項についての定めは、吸収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続株式会社並びに前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて金銭等を交付することを内容とするものでなければならない。

小さい会社の建物が大きい会社に吸い込まれるように重なり、大きい会社の代表者が小さい会社の株主に株券を配る。職員が一方の帳簿を閉じ、もう一方に書き足す
吸収合併は存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記を効力発生日から2週間以内に同時に申請します
両社の特別決議・略式と簡易差損でも株主全員の同意は不要添付は商登法80条資本金増加の1.5/1000・最低3万円

承認は両社の株主総会の特別決議で、略式と簡易の例外があります

消滅株式会社は効力発生日の前日までに株主総会の特別決議で合併契約の承認を受け、存続株式会社も同じです。種類株式発行会社でない公開会社が消滅会社になり、対価の全部または一部が譲渡制限株式等のときは、消滅会社側は特殊決議になります。存続会社が消滅会社の特別支配会社なら消滅会社側の決議は省けますが、対価が譲渡制限株式等で消滅会社が公開会社かつ種類株式発行会社でないときは省けません。「会社法上の公開会社でないA社が,種類株式を発行していない会社法上の公開会社であるB社の特別支配会社である場合において,吸収合併に際してB社の株主に対してA社の株式を交付するときは,A社の吸収合併による変更の登記の申請書には,合併契約の承認の決議をしたB社の株主総会の議事録を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。存続会社側は、対価が公開会社でない存続会社の譲渡制限株式なら、消滅会社が特別支配会社でも決議が要ります。「吸収合併に際して吸収合併消滅会社の株主に対して交付する金銭等の全部が公開会社でない吸収合併存続会社の譲渡制限株式である場合は、吸収合併消滅会社が吸収合併存続会社の特別支配会社であっても、吸収合併による変更の登記の申請書には、吸収合併契約を承認した吸収合併存続会社の株主総会の議事録を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。

承継する債務が資産を超える合併でも、株主全員の同意は要りません

承継債務額が承継資産額を超えるときは、存続会社の取締役が株主総会でその旨を説明し、簡易合併はできません。説明の義務があるだけで、株主全員の同意を要件とする規定はありません。「吸収合併における承継債務額が承継資産額を超える場合には,当該吸収合併による変更の登記の申請書には,存続会社の株主全員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りです。消滅会社の資産に存続会社の株式が含まれるときも、取締役が株主総会で説明する事項であって、株主への通知を証する書面は要りません。「存続会社が当該株式に関する事項を存続会社の株主に対して通知したことを証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りです。

合併契約書と消滅会社側の手続の書面を存続会社の申請書に添付します

商業登記法80条は、合併契約書、略式・簡易に該当する証明、両社の債権者保護手続の書面、資本金の額の計上に関する証明書を列挙します。続けて消滅会社の登記事項証明書、消滅会社の承認の書面、株券提出公告と新株予約権証券提出公告の書面が並びます。消滅会社の新株予約権者に存続会社の新株予約権を交付する定めは合併契約の内容で、消滅会社の議事録を別に添付する規定はありません。「合併契約書のほか,B社の新株予約権の内容として,吸収合併によりB社が消滅する際には吸収合併存続会社の新株予約権を交付する旨を定めたB社の株主総会の議事録又は取締役会の議事録を添付しなければならない」という肢は誤りです。合併契約書には、消滅会社から承継して自己株式になる分を含めて交付する株式の数を定めてよく、「存続会社の自己株式となる株式を含めて,消滅会社の株主に交付する存続会社の株式の数を定めた合併契約書を添付して,吸収合併による変更の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。

株券提出公告は完全子会社でも要り、催告の省略に例外はありません

消滅会社が現に株券を発行している株券発行会社なら、合併の効力発生日までに株券を提出すべき旨の公告をし、その書面を添付します。株主が存続会社だけでも規定に例外はなく、「B社がA社の完全子会社であるときは,A社の吸収合併による変更の登記の申請書には,B社が株券の提出に関する公告をしたことを証する書面を添付することを要しない」という肢は誤りです。債権者保護の各別の催告は、官報のほか定款の定めによる日刊新聞紙か電子公告で公告すれば省け、合併では分割と違って不法行為債権者の例外がありません。「不法行為によって生じた消滅会社の債務の債権者がいるときであっても,吸収合併による変更の登記の申請書には,当該債権者に対して各別の催告をしたことを証する書面を添付することを要しない」という肢は正しい肢です。

登記は消滅会社ごとに記載し、登録免許税は資本金の増加で決まります

存続会社の変更登記には、合併をした旨と消滅会社の商号・本店を登記します。消滅会社が2社あるときは契約書が1通でも会社ごとに記載し、「株式会社B及び株式会社Cを合併した旨を一括して記載しなければならない」という肢は誤りです。登録免許税は増加した資本金の額の1000分の1.5で、消滅会社の資本金の額を超える部分は1000分の7、3万円に満たなければ3万円です。資本金が増えないときは登記事項の変更として3万円で、同じ区分の商号変更を一の申請書で申請しても重ねては掛かりません。「吸収合併に際してA社の資本金の額が増加せず,かつ,その効力の発生と同時にA社の商号を変更する場合において,A社の吸収合併による変更の登記と商号の変更の登記を一の申請書で申請するときは,登録免許税の額は 3 万円である」という肢は正しい肢です。効力発生日を変更したときは消滅会社が存続会社との合意でするもので、両社の取締役会の決議を要件とする規定はなく、「効力発生日の変更に係るA社及びB社の合意を証する書面並びに効力発生日の変更の決議をしたA社及びB社の取締役会の議事録を添付しなければならない」という肢は誤りです。

商業登記法 第80条

吸収合併による変更の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。
一 吸収合併契約書
二 会社法第七百九十六条第一項本文又は第二項本文に規定する場合には、当該場合に該当することを証する書面(同条第三項の規定により吸収合併に反対する旨を通知した株主がある場合にあつては、同項の規定により株主総会の決議による承認を受けなければならない場合に該当しないことを証する書面を含む。)
三 会社法第七百九十九条第二項の規定による公告及び催告(同条第三項の規定により公告を官報のほか時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告によつてした場合にあつては、これらの方法による公告)をしたこと並びに異議を述べた債権者があるときは、当該債権者に対し弁済し若しくは相当の担保を提供し若しくは当該債権者に弁済を受けさせることを目的として相当の財産を信託したこと又は当該吸収合併をしても当該債権者を害するおそれがないことを証する書面
四 資本金の額が会社法第四百四十五条第五項の規定に従つて計上されたことを証する書面
五 吸収合併消滅会社の登記事項証明書。ただし、当該登記所の管轄区域内に吸収合併消滅会社の本店がある場合を除く。
六 吸収合併消滅会社が株式会社であるときは、会社法第七百八十三条第一項から第四項までの規定による吸収合併契約の承認その他の手続があつたことを証する書面(同法第七百八十四条第一項本文に規定する場合にあつては、当該場合に該当することを証する書面及び取締役の過半数の一致があつたことを証する書面又は取締役会の議事録)
七 吸収合併消滅会社が持分会社であるときは、総社員の同意(定款に別段の定めがある場合にあつては、その定めによる手続)があつたことを証する書面
八 吸収合併消滅会社において会社法第七百八十九条第二項(第三号を除き、同法第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による公告及び催告(同法第七百八十九条第三項(同法第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定により公告を官報のほか時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告によつてした株式会社又は合同会社にあつては、これらの方法による公告)をしたこと並びに異議を述べた債権者があるときは、当該債権者に対し弁済し若しくは相当の担保を提供し若しくは当該債権者に弁済を受けさせることを目的として相当の財産を信託したこと又は当該吸収合併をしても当該債権者を害するおそれがないことを証する書面
九 吸収合併消滅会社が株券発行会社であるときは、第五十九条第一項第二号に掲げる書面
十 吸収合併消滅会社が新株予約権を発行しているときは、第五十九条第二項第二号に掲げる書面

試験ではこう問われる

  1. 種類株式発行会社でない公開会社の消滅会社に譲渡制限株式を交付するとき略式合併できるか(できない。消滅会社の議事録が要る)
  2. 承継債務が承継資産を超える合併に株主全員の同意書は要るか(要らない。取締役の説明事項)
  3. 消滅会社の新株予約権の内容の定めについて消滅会社の議事録は要るか(要らない)
  4. 合併の各別の催告は不法行為債権者にも省略できるか(できる。分割とは違う)
  5. 資本金が増えない合併と商号変更を一の申請書で出すと登録免許税はいくらか(3万円)

この用語が問われた肢

R4 問32 エ正しい

吸収合併に際して吸収合併消滅会社の株主に対して交付する金銭等の全部が公開会社でない吸収合併存続会社の譲渡制限株式である場合は、吸収合併消滅会社が吸収合併存続会社の特別支配会社であっても、吸収合併による変更の登記の申請書には、吸収合併契約を承認した吸収合併存続会社の株主総会の議事録を添付しなければならない。

R3 問31 イ誤り

吸収合併における承継債務額が承継資産額を超える場合には,当該吸収合併による変更の登記の申請書には,存続会社の株主全員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない。

R3 問31 オ誤り

消滅会社の資産に存続会社の株式が含まれる場合には,吸収合併による変更の登記の申請書には,存続会社が当該株式に関する事項を存続会社の株主に対して通知したことを証する書面を添付しなければならない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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