登記の抹消とうきのまっしょう
管轄違いや二重登記、無効原因のある登記を当事者の申請で消す手続と、他の登記に伴って抹消の記号が記録される仕組みです。申請で消すもの、同時申請が要るもの、職権や嘱託で消えるものの区別が肢で突かれます。
登記の抹消は、登記を消して効力のない状態にすることです。商業登記法134条は、管轄違い、登記すべき事項以外の登記、二重登記、同時申請の違反という却下事由がある登記について当事者の抹消の申請を認めています。登記された事項に無効の原因がある登記も同じく抹消を申請できます。訴えをもってのみ無効を主張できる事項は判決による嘱託で処理され、別の登記に伴って登記官が職権で抹消の記号を記録する場面も多くあります。肢で突かれるのは、申請で消すのか、同時に申請しなければならないのか、職権や嘱託で自動的に消えるのかの区別です。
商業登記法 第134条(抹消の申請)
登記が次の各号のいずれかに該当するときは、当事者は、その登記の抹消を申請することができる。
一 第二十四条第一号から第三号まで又は第五号に掲げる事由があること。
二 登記された事項につき無効の原因があること。ただし、訴えをもつてのみその無効を主張することができる場合を除く。
第百三十二条第二項の規定は、前項第二号の場合に準用する。

抹消を申請できるのは却下事由の一部と無効原因がある登記です
当事者が抹消を申請できるのは、管轄違い、登記すべき事項以外の事項の登記、既に登記されている事項の登記、同時に申請すべき他の申請との不整合という却下事由があるときです。登記された事項に無効の原因があるときも申請できます。無効を訴えによってのみ主張できる事項は除かれ、資本金の額の減少の無効のような判決は裁判所書記官が登記を嘱託します。「資本金の額の減少の無効の訴えに係る請求を認容する判決書の謄本及び確定証明書を添付して、当該変更の登記の抹消を申請しなければならない」という肢は誤りです。無効原因を理由とする抹消の申請書には、無効の原因があることを証する書面を添付します。
管轄外本店移転の抹消は旧所在地の登記所を経由します
他の登記所の管轄区域内への本店移転の登記をした後に本店移転の無効を原因としてその登記を抹消するときは、新所在地と旧所在地の両方の登記を消す必要があります。新所在地の本店移転の登記の抹消の申請は、旧所在地を管轄する登記所を経由してします。「新所在地における本店移転の登記の抹消の申請は、旧所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない」という肢は正しい肢です。本店移転の登記と同じ経由の仕組みを逆向きにたどり、旧所在地の登記記録を復活させます。本店移転の決議の取消しの判決が確定したときは嘱託で、裁判所書記官が新所在地の登記所を経由して旧所在地の登記所に嘱託するという定めはありません。
機関の定めを廃止したときは関連する登記の抹消を同時に申請します
監査役会を置く旨の定款の定めを廃止したときは、社外監査役である旨の登記が意味を失うので、廃止の登記と同時に社外監査役である旨の登記の抹消を申請します。「当該申請と同時に、社外監査役である旨の登記がされている監査役について、社外監査役である旨の登記の抹消を申請しなければならない」という肢は正しい肢です。監査役設置会社が委員会を置く定めを設けたときも、監査役設置会社の定めの廃止と監査役の退任の登記を申請し、職権では消えません。「監査役設置会社の定めの登記は,登記官の職権により抹消される」という肢は誤りです。代表取締役の氏名抹消のように、他の登記の結果として要らなくなる登記も当事者が申請します。
一時会計監査人の登記や電磁的開示のアドレスは職権で抹消されます
一時会計監査人の職務を行うべき者の登記がある会社で会計監査人の就任の登記がされると、登記官が職権で一時会計監査人の登記に抹消の記号を記録します。「会計監査人の就任による変更の登記を申請するときは、当該申請と同時に、一時会計監査人の職務を行うべき者に関する登記の抹消を申請しなければならない」という肢は誤りです。公告方法を官報から電子公告に変えたときの貸借対照表の電磁的開示のアドレスの登記も、公告方法の変更の登記で職権により抹消の記号が記録されます。合併や破産手続開始の決定による場合を除く解散の登記による取締役などの登記、継続の登記による清算人の登記も同じく職権です。
決議不存在の登記では回復があり、株式発行無効ではありません
取締役が1人しかいない会社でAが辞任しBが就任した登記の後、Bの選任決議の不存在を確認する判決が確定して嘱託で不存在の登記がされると、登記官はBの就任の登記に抹消の記号を記録します。Bの選任がなければAは権利義務取締役として残るので、Aの退任の登記も職権で抹消してAの登記を回復します。「登記官は,取締役Bの就任の登記を抹消する記号を記録するとともに,職権で取締役Aの退任の登記を抹消し,取締役Aの登記を回復する」という肢は正しい肢です。株式の発行の無効の判決は将来に向かってのみ効力があり、発行済株式の総数や資本金の額が遡って元に戻るわけではないので、無効の登記で登記官が抹消の記号を記録して回復することはありません。「発行済株式の総数及び資本金の額に関する登記を抹消する記号を記録するとともに,当該登記により抹消する記号が記録された登記を回復する」という肢は誤りで、会社が変更の登記を申請します。
商業登記規則 第100条(登記の抹消)
登記の抹消をする場合には、抹消すべき登記事項を抹消する記号を記録し、その登記により抹消する記号が記録された登記事項があるときは、その登記を回復しなければならない。ただし、登記の抹消をすることによつて登記記録を閉鎖すべきときは、この限りでない。
法第百三十七条の規定によつて登記の抹消をする場合には、その旨をも記録しなければならない。
第九十八条の規定は、登記の抹消の申請に準用する。
試験ではこう問われる
- 当事者が抹消を申請できる登記は何か(管轄違い・二重登記などの却下事由がある登記、無効原因がある登記)
- 減資無効の判決による抹消は申請か嘱託か(嘱託)
- 監査役会の廃止と同時に申請する抹消は何か(社外監査役である旨の登記の抹消)
- 一時会計監査人の登記は会計監査人就任の登記で職権で消えるか(消える。同時申請は不要)
- 株式発行無効の登記で登記官は発行済株式の総数を回復するか(しない。決議不存在の登記では回復する)
この用語が問われた肢
資本金の額の減少による変更の登記があった場合において、当該資本金の額の減少に係る株主総会の決議に無効の原因があるときは、資本金の額の減少の無効の訴えに係る請求を認容する判決書の謄本及び確定証明書を添付して、当該変更の登記の抹消を申請しなければならない。
他の登記所の管轄区域内への本店移転の登記をした場合において、本店移転の無効を原因として当該登記の抹消の申請をするときは、新所在地における本店移転の登記の抹消の申請は、旧所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない。
他の登記所の管轄区域内への本店移転の登記をした場合において、当該本店移転に係る株主総会の決議の取消しの訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、新所在地を管轄する登記所を経由して旧所在地を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。
監査役会を置く旨の定款の定めを廃止した場合において、当該定めの廃止の登記を申請するときは、当該申請と同時に、社外監査役である旨の登記がされている監査役について、社外監査役である旨の登記の抹消を申請しなければならない。
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