登記官の職権抹消とうきかんのしょっけんまっしょう
登記官が抹消すべき事由のある登記を発見したとき、登記をした者に通知して異議の機会を与えたうえで職権で抹消する手続です。通知と公告の期間、異議の処理、職権でできる場合とできない場合が肢で突かれます。
登記官の職権抹消は、登記官が、管轄違いや二重登記など商業登記法24条1号から3号・5号の却下事由がある登記を発見したときに、申請を待たずに自ら抹消する手続です。無効の原因がある登記も対象ですが訴えによってのみ無効を主張できる事項は除かれ、商業登記法135条は1か月を超えない期間内に異議がなければ抹消する旨の通知(住所不明なら官報公告)を登記官に求めます。異議があれば登記官が決定をし、異議がないか理由がないときに抹消します。通知の手続とは別に、解散や継続などの登記に伴って登記官が抹消の記号を記録する職権の処理があり、未成年者が成年に達したときの消滅の登記のように法律が個別に職権を認める場面もあります。肢で突かれるのは、手続の流れと職権が及ぶ範囲です。
商業登記法 第135条(職権抹消)
登記官は、登記が前条第一項各号のいずれかに該当することを発見したときは、登記をした者に、一月をこえない一定の期間内に書面で異議を述べないときは登記を抹消すべき旨を通知しなければならない。
登記官は、登記をした者の住所又は居所が知れないときは、前項の通知に代え官報で公告しなければならない。
登記官は、官報のほか相当と認める新聞紙に同一の公告を掲載することができる。

1か月以内の期間を定めて通知し、異議がなければ抹消します
登記官は抹消すべき事由を発見すると、登記をした者に対し、1か月を超えない一定の期間内に書面で異議を述べないときは登記を抹消する旨を通知します。登記をした者の住所や居所が分からないときは通知に代えて官報で公告し、相当と認める新聞紙にも同じ公告を載せることができます。期間内に異議がなければ登記官は職権で登記を抹消し、抹消した旨を登記記録に記録する流れです。異議があったときは登記官がその異議について決定をし、理由がないと却下したときに抹消します。
異議の却下には審査請求ができ、職権抹消と両立します
登記官が異議を却下する決定をしたときは、登記をした者はその処分について審査請求ができます。「登記官が異議を却下したときは,当該登記をした者は,当該異議を却下した処分に関する審査請求をすることができる」という肢は正しい肢です。無効原因のある登記について登記官が職権で抹消できるとしても、その登記に関する審査請求ができなくなるわけではありません。「登記官が職権により当該登記を抹消することができるときは,当該登記に関する審査請求をすることはできない」という肢は誤りです。職権抹消と審査請求は別の仕組みで、どちらかがあれば他方が使えなくなる関係にはありません。
解散や継続などの登記に伴う抹消の記号は通知なしの職権です
合併と破産手続開始の決定を除く解散の登記で取締役や会計監査人などの登記に、継続の登記で清算人の登記に抹消の記号が記録されるのは、135条の通知の手続ではありません。登記の効果として登記官が当然に行う職権の処理です。株主総会の決議で解散した委員会設置会社について、「委員会設置会社である旨の登記並びに委員,執行役及び代表執行役に関する登記は,いずれも登記官の職権により抹消される」という肢は正しい肢です。会計監査人の就任の登記をしたときの一時会計監査人の登記や、電子公告への変更の登記をしたときの貸借対照表の電磁的開示のアドレスの登記も同じ型で、「登記官の職権により,一時会計監査人の職務を行うべき者に関する登記を抹消する記号が記録される」という肢は正しい肢です。みなし解散の解散の登記も職権で、登記記録が閉鎖されるまでは同一の商号・本店の設立ができません。
未成年者の成年による消滅は職権ででき、後見人の登記はできません
未成年者の登記をした未成年者が成年に達したときは、登記官が職権で消滅の登記をすることができます。「未成年者の登記をした未成年者が成年に達したことによる消滅の登記は、登記官が、職権ですることができる」という肢は正しい肢です。後見人の登記では、未成年被後見人が成年に達したことによる消滅の登記は後見人のほか本人も申請でき、登記官の職権ではできません。「後見人の登記において,未成年被後見人が成年に達したことによる消滅の登記は,登記官が職権ですることができる」という肢は誤りです。未成年者の登記記録には生年月日があるので登記官が成年を読み取れますが、後見人の登記は被後見人の氏名と住所だけで生年月日がないからです。
嘱託による登記は裁判所書記官が本店所在地の登記所にします
判決による登記は登記官の職権ではなく裁判所書記官の嘱託で、嘱託を受けた登記官が登記をし、必要に応じて抹消の記号や回復の処理をします。本店移転の決議の取消しの判決が確定したときも嘱託ですが、「裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、新所在地を管轄する登記所を経由して旧所在地を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない」という肢は誤りで、経由の形は定められていません。嘱託による登記には特別清算の登記のように非課税の定めがあるものが多く、会社が申請書を作ることもありません。
商業登記法 第36条(申請人)
未成年者の登記は、未成年者の申請によつてする。
営業の許可の取消しによる消滅の登記又は営業の許可の制限による変更の登記は、法定代理人も申請することができる。
未成年者の死亡による消滅の登記は、法定代理人の申請によつてする。
未成年者が成年に達したことによる消滅の登記は、登記官が、職権ですることができる。
試験ではこう問われる
- 職権抹消の通知で異議を述べられる期間はどれだけか(1か月を超えない一定の期間)
- 通知先の住所が分からないときはどうするか(官報で公告)
- 職権抹消ができる登記について審査請求はできるか(できる)
- 未成年者が成年に達したときの消滅の登記は職権でできるか(できる。後見人の登記ではできない)
- 本店移転の決議取消しの判決による登記は誰がするか(裁判所書記官の嘱託)
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