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一時取締役(仮取締役)いちじとりしまりやく

商業登記 第5章 役員の変更 過去問で9肢

役員が欠けたときに裁判所が利害関係人の申立てで選任する、一時役員の職務を行うべき者です。登記が嘱託か申請か、一時会計監査人との違い、後任の就任で職権抹消されることが肢で突かれます。

一時取締役は、会社法346条2項により、役員が欠けるか員数を欠く場合に裁判所が利害関係人の申立てで選任する、一時役員の職務を行うべき者です。登記簿には「一時取締役の職務を行うべき者」として記録され、仮取締役とも呼ばれます。選任の登記は会社法937条1項2号により裁判所書記官の嘱託でされ、会社が申請することはできません。会計監査人が欠けたときの一時会計監査人は会社法346条4項により監査役が選任し、こちらは会社が申請します。肢で突かれるのは、嘱託と申請の区別、一時取締役の権限、そして後任が就任したときの職権抹消です。

会社法 第346条第2項

前項に規定する場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時役員の職務を行うべき者を選任することができる。

裁判所から出てきた人物が空席の会議室の席に座り、裁判所の職員が登記所へ書面を運んでいる
一時取締役は裁判所が選任し、登記は裁判所書記官の嘱託でされます
嘱託登記・会社は申請できない取締役と同じ権限正規の役員の就任で職権抹消

一時取締役の登記は裁判所書記官の嘱託でされます

一時取締役や一時監査役、一時代表取締役の職務を行うべき者を裁判所が選任すると、会社法937条1項2号により裁判所書記官が登記を嘱託します。「一時監査役の職務を行うべき者の選任による変更の登記は,裁判所書記官の嘱託により行われる」という肢は正しい肢です。会社が選任決定書を添付して就任の登記を申請することはできません。権利義務を負う役員がいる場合でも、裁判所は必要があると認めれば一時役員を選任でき、その登記も嘱託でされます。

一時取締役は取締役と同じ権限を持ちます

一時取締役の職務を行うべき者は、取締役の職務の全部を行う権限を持ちます。株主総会の招集も取締役として行えるので、裁判所の許可は要りません。「一時取締役の職務を行うべき者が招集した臨時株主総会の決議によって取締役を選任した場合の変更の登記の申請書には,一時取締役の職務を行うべき者が臨時株主総会を招集することについての裁判所の許可書を添付しなければならない」という肢は誤りです。職務執行停止の仮処分で選ばれる職務代行者は別の制度です。会社法352条1項により、仮処分命令に別段の定めがなければ常務に属しない行為に裁判所の許可が要り、登記の抹消も商業登記規則68条2項で別に扱われます。

一時会計監査人は監査役が選任し、会社が登記を申請します

会計監査人が欠けて遅滞なく選任されないときは、会社法346条4項により監査役が一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければなりません。同条6項から8項により、監査役会設置会社では監査役会、監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会が選任します。登記は会社が申請し、商業登記法55条1項により選任に関する書面、就任承諾書、資格を証する書面を添付します。「会計監査人が欠けた場合において、監査役会の決議によって一時会計監査人の職務を行うべき者を選任したときは、当該一時会計監査人の職務を行うべき者の就任による変更の登記の申請書には、一時会計監査人を選任した監査役会の議事録を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。会計監査人が退任する前に先回りして選任することはできず、「唯一の会計監査人が資格喪失により退任する前に,監査役会の決議によって一時会計監査人の職務を行うべき者を選任した場合には,当該監査役会の議事録を添付して,一時会計監査人の職務を行うべき者の就任による変更の登記の申請をすることができる」という肢は誤りです。

正規の役員が就任すると一時役員の登記は職権で抹消されます

商業登記規則68条1項により、一時役員の職務を行うべき者の登記は、正規の取締役や会計監査人の就任の登記をしたときに登記官が抹消する記号を記録します。「一時会計監査人の職務を行うべき者に関する登記がされている場合において,会計監査人の就任による変更の登記がされたときは,登記官の職権により,一時会計監査人の職務を行うべき者に関する登記を抹消する記号が記録される」という肢は正しい肢です。会社が抹消を同時に申請する必要はなく、申請させる肢は誤りです。一時会計監査人の就任の登記にも登録免許税は課され、「一時会計監査人の職務を行うべき者の就任による変更の登記については,登録免許税は課されない」という肢は誤りです。

商業登記規則 第68条

(仮取締役又は取締役職務代行者等の登記)
一時取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役、代表執行役又は会計監査人の職務を行うべき者に関する登記は、取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役、代表執行役又は会計監査人の就任の登記をしたときは、抹消する記号を記録しなければならない。
取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役又は代表執行役の職務の執行停止又は職務代行者に関する登記は、その取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役又は代表執行役の選任の決議の不存在、無効若しくは取消し又は解任の登記をしたときは、抹消する記号を記録しなければならない。

試験ではこう問われる

  1. 一時取締役・一時監査役の登記が嘱託か会社の申請かを問う肢
  2. 一時取締役が招集する株主総会に裁判所の許可書が要るかを問う肢
  3. 一時会計監査人の選任の時期(欠けた後か、退任前に先回りできるか)と添付書面を問う肢
  4. 正規の役員が就任したときに一時役員の登記が職権抹消か、同時申請が要るかを問う肢
  5. 一時会計監査人の就任の登記に登録免許税が課されるかを問う肢

この用語が問われた肢

R8 問31 オ誤り

唯一の取締役が死亡により退任した場合には、一時取締役の職務を行うべき者を選任した裁判所の選任決定書を添付して、当該一時取締役の職務を行うべき者の就任の登記を申請することができる。

R6 問30 エ正しい

会計監査人が欠けた場合において、監査役会の決議によって一時会計監査人の職務を行うべき者を選任したときは、当該一時会計監査人の職務を行うべき者の就任による変更の登記の申請書には、一時会計監査人を選任した監査役会の議事録を添付しなければならない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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