本店所在地と支店所在地の登記ほんてんしょざいちとしてんしょざいちのとうき
定款には本店の所在地を最小行政区画まで定め、登記には本店と支店の具体的な所在場所を記録し、登記は本店の所在地を管轄する登記所でします。令和4年9月1日に支店所在地での登記が廃止されたこと、管轄外への本店移転の経由申請の骨格が肢で突かれます。
本店所在地と支店所在地の登記は、会社法911条3項3号により登記事項になっている本店と支店の所在場所の登記です。定款には会社法27条3号により本店の所在地を記載しますが、最小行政区画である市区町村まで定めれば足りる扱いです。登記には番地までの具体的な所在場所を書き、商業登記法1条の3により本店の所在地を管轄する登記所が登記の事務を行います。令和4年9月1日の改正で支店の所在地における登記は廃止され、支店の所在場所は本店所在地の登記記録にだけ記録されます。肢で突かれるのは、管轄外への本店移転のときの申請の形と、廃止された支店所在地の登記の知識です。
会社法 第911条第3項第3号本店及び支店の所在場所

定款は市区町村まで、登記は番地までの所在場所です
定款の本店の所在地が最小行政区画までの記載なら、同じ市区町村内で本店を移すときは定款変更が要りません。定款に番地まで書いてある会社は、その番地を変える移転に定款変更が要ります。取締役会の決議(取締役会を置かない会社では取締役の過半数の決定)で具体的な所在場所を決めます。市区町村をまたぐ移転は株主総会の特別決議で定款を変えたうえで、具体的な場所を取締役会で決めます。現実の移転と決議の順序が逆でも登記はでき、「本店の移転に当たり定款の変更を要しない場合において,現実に本店を移転した後に取締役会で当該本店の移転を承認する決議をしたときは,当該決議の日に本店の移転があったものとみなして本店移転の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。支店の移転の時期を「7月1日から1週間」のように概括的に定めても、その範囲内に移転すれば改めての承認は要らず、改めて承認を求める肢は誤りです。
支店の所在地における登記は令和4年9月1日に廃止されました
改正前は、支店の所在地でも商号・本店・支店の所在場所を登記し、成立後に設けた支店なら設置から3週間以内に支店所在地でも登記する仕組みでした。インターネットで本店の登記記録を誰でも見られるようになり、支店所在地での登記の意味が薄れたため、会社法930条から932条までと商業登記法48条から50条までが削除されました。現在は支店を設けても本店所在地の登記記録に支店の所在場所を登記するだけです。「設立しようとする会社が設立に際して支店を設ける場合において,当該支店が当該会社の本店の所在地を管轄する登記所の管轄区域外にあるときは,当該支店の所在地における登記の申請は,当該本店の所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない」という肢は改正前の出題で、当時も経由は義務ではなく誤りとされました。
管轄外への本店移転は旧所在地を経由して2通を同時に出します
本店を他の登記所の管轄区域内に移すときは、商業登記法51条1項により新所在地での登記の申請を旧所在地の登記所を経由して行い、同条2項により旧所在地での登記の申請と同時にします。新所在地宛ての申請書には同条3項により委任状以外の書面を添付しませんが、委任状は両方に要ります。「本店移転の登記を代理人によって申請する場合には,A登記所宛ての申請書及びB登記所宛ての申請書のいずれにも,代理人の権限を証する書面を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。登録免許税は旧所在地と新所在地の登記にそれぞれ3万円です。
取下げも却下も旧所在地の登記所が窓口になります
経由申請の取下げは、旧所在地の登記所に対して両方の申請の取下書を提出します。「本店移転の登記の申請を取り下げる場合には,B登記所に対し,取下書1通(A登記所及びB登記所宛ての申請をともに取り下げる旨の記載のあるもの)を提出すれば足りる」という肢は誤りです。商業登記法52条1項により、旧所在地の登記所はどちらかの申請に却下事由があれば両方を却下します。新所在地の登記所が却下したときは、同条5項により旧所在地の申請は却下されたものとみなされ、旧所在地の登記官が改めて却下の決定をするわけではありません。「B登記所の登記官が新所在地における登記の申請を却下したときは,その旨の通知を受けたA登記所の登記官は,旧所在地における登記の申請を却下しなければならない」という肢は誤りです。
設立時の支店は発起人、持分会社の支店は業務執行社員が定めます
設立に際して支店を置くときは、支店の具体的な所在場所は発起人が決めます。「設立の登記の申請書には、支店の具体的な所在場所の決定につき設立時取締役の過半数の一致があったことを証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りで、添えるのは発起人の過半数の一致を証する書面です。合名会社の支店の設置は業務執行社員の過半数で決め、「業務執行社員が 2 人以上ある場合には、合名会社における支店の設置の登記の申請書には、業務執行社員の過半数の一致を証する書面を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。株式会社の成立後の支店の設置・移転・廃止は、取締役会設置会社では会社法362条4項4号により取締役会の決議事項で、取締役会を置かない会社では取締役の過半数で決めます。
商業登記法 第51条(本店移転の登記)
本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記の申請は、旧所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない。
前項の登記の申請と旧所在地における登記の申請とは、同時にしなければならない。
第一項の登記の申請書には、第十八条の書面を除き、他の書面の添付を要しない。
試験ではこう問われる
- 定款の本店の所在地はどこまで定めれば足りるか(最小行政区画まで)
- 支店の所在地における登記は今もあるか(令和4年9月1日に廃止)
- 管轄外への本店移転の申請は誰が窓口か(旧所在地の登記所を経由し、2通を同時に提出)
- 経由申請の取下書はどこに出すか(旧所在地の登記所)
- 設立時の支店の所在場所を決めるのは誰か(発起人の過半数)
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