辞任じにん
役員が自らの意思表示で任期の途中に退任することで、会社との関係が委任であることから、いつでもできます。辞任届の印鑑証明書が要る場面、定款の添付が要る場面、辞任しても登記できない場面が肢で突かれます。
辞任は、取締役や監査役などの役員が自分の意思表示で任期の途中に退任することです。会社法330条により会社と役員の関係は委任なので、民法651条の定めにより、役員はいつでも辞任できます。辞任の意思表示が会社に到達した時に効力が生じ、登記には商業登記法54条4項の退任を証する書面として辞任届を添付します。登記所に印鑑を提出している代表取締役などの辞任届には、商業登記規則61条8項により印鑑証明書が要ります。肢で突かれるのは、辞任届の印鑑証明書の要否、定款の添付の要否、そして辞任しても登記できない場面です。
会社法 第330条(株式会社と役員等との関係)
株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

辞任は会社に意思表示が届いた時に効力を生じます
辞任は相手方のある単独行為で、会社の承諾は要りません。辞任届を代表取締役に提出した日が効力の日で、登記の原因年月日になります。辞任届に将来の日付を辞任日として書けば、その日に効力が生じます。会社法346条1項により、辞任で役員が欠けるか員数を欠くことになるときは、後任が就任するまでなお役員としての権利義務を負い、その間は辞任の登記を申請できません。「定款に取締役の員数に関して別段の定めがない監査等委員会設置会社において,監査等委員である取締役以外の取締役 3 名のうち 1 名が辞任した場合であっても,当該辞任による変更の登記を申請することはできない」という肢は誤りです。監査等委員でない取締役には法定の員数がないので、権利義務は生じず辞任の登記ができます。
届出印を持つ代表取締役などの辞任届には印鑑証明書が要ります
商業登記規則61条8項により、代表取締役や代表執行役、登記所に印鑑を提出している取締役や執行役の辞任届には、押した印鑑について市町村長の印鑑証明書を添付します。辞任届に登記所の届出印を押したときは不要です。「登記所に印鑑を提出している代表取締役が辞任した場合の変更の登記の申請書には,当該代表取締役が辞任を証する書面に押した印鑑について,当該印鑑と当該代表取締役が登記所に提出している印鑑とが同一であるときを除き,市区町村長の作成した印鑑証明書を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。令和3年2月15日施行の押印見直しでオンライン申請では印鑑の提出が任意になりましたが、書面の申請書や委任状に押印するには届出印が要ります。印鑑を提出した者がある会社ではその者だけが対象で、提出した者がない会社では会社の代表者の辞任届が対象になります。「登記所に印鑑を提出した者がない取締役会設置会社の代表取締役の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。
定款の添付は員数の定めではなく代表取締役の選定方法で決まります
「取締役の員数が定款により定められている場合には、取締役の辞任による変更の登記の申請書には、定款を添付しなければならない」という肢は誤りです。員数の定めは権利義務の有無に関わりますが、登記官が定款で員数を確かめる仕組みにはなっていません。反対に、「取締役会設置会社でない会社において、定款の定めに基づく取締役の互選によって選定された代表取締役が辞任した場合には、代表取締役の辞任による変更の登記の申請書には、定款を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。互選で選ばれた代表取締役は代表取締役の地位だけを辞任でき、その前提として互選の定款の定めを登記官に示します。定款で氏名を定めた代表取締役の辞任には定款変更の株主総会議事録が要り、定款そのものを添付させる肢は誤りです。
辞任後に権利義務を負う者は解任できず、原因の誤りは更正で直します
「辞任により取締役を退任した後も取締役としての権利義務を有するAを解任する株主総会の決議がされた場合であっても,当該株主総会の議事録を添付して,Aの解任による変更の登記を申請することはできない」という肢は正しい肢です。権利義務を負う者はすでに取締役でないので、解任の対象になりません。登記された原因が辞任なのに実際は解任だったときは、商業登記法132条の更正の登記で直します。「株主総会において解任された取締役について、辞任を原因とする取締役の変更の登記がされている場合には、会社は、当該登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りで、抹消ではなく更正の対象です。
商業登記規則 第61条第8項代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者がある場合にあつては当該印鑑を提出した者に限り、登記所に印鑑を提出した者がない場合にあつては会社の代表者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等(その者の成年後見人又は保佐人が本人に代わつて行う場合にあつては、当該成年後見人又は保佐人)が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、登記所に印鑑を提出した者がある場合であつて、当該書面に押印した印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 辞任届の印鑑証明書が要るか、届出印を押したときや印鑑を提出した者がない会社でどうなるかを問う肢
- 定款で員数を定めているときや、互選・定款で選ばれた代表取締役の辞任で定款の添付が要るかを問う肢
- 辞任で員数を欠くときに辞任の登記ができるか、権利義務を負う者を解任できるかを問う肢
- 辞任と解任を取り違えた登記を抹消で直すか更正で直すかを問う肢
この用語が問われた肢
定款に取締役の員数に関して別段の定めがない監査等委員会設置会社において,監査等委員である取締役以外の取締役 3 名のうち 1 名が辞任した場合であっても,当該辞任による変更の登記を申請することはできない。
登記所に印鑑を提出した者がない取締役会設置会社の代表取締役の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。
取締役の員数が定款により定められている場合には、取締役の辞任による変更の登記の申請書には、定款を添付しなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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