組織再編の登記の同時申請そしきさいへんのとうきのどうじしんせい
合併・分割・株式交換・株式移転・組織変更で生じる複数の会社の登記を、一方の会社の登記所を経由して同時に申請させ、片方だけが登記される事態を防ぐ仕組みです。誰が申請人か、どこへ出すか、添付書面が要るかで肢が作られます。
組織再編の登記の同時申請は、合併・会社分割・株式交換・株式移転・組織変更で、関係する複数の会社の登記を同時に申請させる商業登記法の仕組みです。一方の登記だけが先に実行されると、消滅したはずの会社が残ったり、承継した旨の登記がない会社に権利義務が移ったりして登記簿が矛盾します。そこで合併・分割・株式交換・株式移転では片方の登記を他方の会社の登記所を経由して出させます。会社の種類が変わるだけの組織変更では同じ登記所に同時に出させ、どちらも一方に却下事由があれば両方を却下します。肢で突かれるのは、誰が申請し、どこに出し、何を添付するかです。
商業登記法 第82条合併による解散の登記の申請については、吸収合併後存続する会社(以下「吸収合併存続会社」という。)又は新設合併により設立する会社(以下「新設合併設立会社」という。)を代表すべき者が吸収合併消滅会社又は新設合併消滅会社を代表する。
前項の登記の申請は、当該登記所の管轄区域内に吸収合併存続会社又は新設合併設立会社の本店がないときは、その本店の所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない。
第一項の登記の申請と第八十条又は前条の登記の申請とは、同時にしなければならない。
申請書の添付書面に関する規定は、第一項の登記の申請については、適用しない。

合併の解散登記は存続会社の代表者が消滅会社を代表して申請します
吸収合併による消滅会社の解散登記と新設合併による消滅会社の解散登記は、存続会社または設立会社を代表すべき者が消滅会社を代表して申請します。消滅会社は効力発生日に消えているので、消滅会社の代表者には申請する地位がありません。存続会社の本店が消滅会社の登記所の管轄区域内にないときは、存続会社の登記所を経由して、存続会社の変更登記または設立会社の設立登記と同時に申請します。解散登記の申請書には添付書面の規定が適用されず、分割などの経由申請と違って委任状さえ要りません。
分割会社の変更登記は分割会社自身が承継会社の登記所へ出します
吸収分割の分割会社と新設分割の分割会社がする変更登記は、承継会社または設立会社の本店が管轄区域内にないときは、その登記所を経由します。承継会社の変更登記または設立会社の設立登記と同時に申請します。合併と違って分割会社は消滅しないので、申請人は分割会社の代表者です。「新設分割による変更の登記の申請は、新設分割設立会社を代表すべき者が新設分割会社を代表してしなければならない」という肢は誤りです。「B法務局に対し、同時に提出します」と答える新設分割の肢は正しい肢です。分割会社の申請書には委任状以外の添付書面は要りません。
株式交換・株式移転では子会社の新株予約権の登記だけが同時申請です
株式交換と株式移転では、子会社の登記が要るのは親会社の新株予約権を交付して子会社の新株予約権が消滅したときだけです。その変更登記は、親会社または設立会社の本店が管轄区域内にないときはその登記所を経由し、親会社の変更登記または設立登記と同時に申請します。申請書には委任状以外の添付書面は要りません。組織変更では、株式会社についての登記と組織変更後の持分会社についての登記を同時に申請し、株式会社側の申請には添付書面の規定が適用されません。
経由先の登記所は両方を共に却下し、登記の日を記載して送り返します
経由先の登記所は、同時にされた申請のどちらかに却下事由があれば、両方を共に却下します。経由先で存続会社の変更登記や設立登記をしたときは、遅滞なくその登記の日を経由された申請書に記載し、消滅会社や分割会社の登記所に送付します。送付を受けた登記所がその申請書で解散登記や変更登記をするので、両方の登記に同じ効力発生の日付が揃います。経由すべき登記所を経由しないこと、同時にすべき申請を同時にしないことは、どちらも却下事由です。
同時申請が義務になるのは法律が定めた場面に限られます
同時申請は商業登記法が個別に定めた場面の規律で、関連する登記なら何でも同時に出さなければならないわけではありません。「唯一の会計監査人が辞任した場合にする会計監査人の辞任による変更の登記は,新たに選任された会計監査人(一時会計監査人の職務を行うべき者も含む。)の就任による変更の登記と同時に申請しなければならない」という肢は誤りです。持分会社の社員の死亡で解散するときも、「Aの死亡による変更の登記,解散の登記及び清算人の登記は,同時に申請しなければならない」という肢は誤りです。管轄の異なる登記所を経由する申請は、経由しない別の登記と一の申請書にはできず、「吸収分割による変更の登記と資本金の額の減少による変更の登記とは,一の申請書で申請することはできない」という肢は正しい肢です。
商業登記法 第87条吸収分割会社又は新設分割会社がする吸収分割又は新設分割による変更の登記の申請は、当該登記所の管轄区域内に吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の本店がないときは、その本店の所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない。
前項の登記の申請と第八十五条又は前条の登記の申請とは、同時にしなければならない。
第一項の登記の申請書には、第十八条の書面を除き、他の書面の添付を要しない。
試験ではこう問われる
- 消滅会社の解散登記の申請人は誰か(存続会社・設立会社の代表者が消滅会社を代表)
- 分割会社の変更登記はどこへ出すか(承継会社・設立会社の登記所を経由し同時に。申請人は分割会社)
- 経由申請の申請書に添付書面は要るか(分割・株式交換等は委任状だけ。合併の解散登記は委任状も要らない)
- 一方に却下事由があるとどうなるか(両方を共に却下)
- 会計監査人の辞任と就任の登記は同時申請が義務か(義務でない)
この用語が問われた肢
新設分割による変更の登記の申請は、新設分割設立会社を代表すべき者が新設分割会社を代表してしなければならない。
【問】新設分割株式会社の本店所在地を管轄する登記所がA法務局、新設分割設立株式会社の本店所在地を管轄する登記所がB法務局の場合には、新設分割による新設分割設立株式会社の設立の登記の申請書と新設分割株式会社の変更の登記の申請書は、どの法務局に提出しますか。 B法務局に対し、同時に提出します。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
この用語で問われた肢を、解説つきでそのまま解けます。無料プランは月100問まで。