登記の更正とうきのこうせい
登記に錯誤または遺漏があるときに、当事者の申請または登記官の職権で登記を正す手続です。更正できる誤りと無効原因との区別、添付書面、登記官の過誤の処理が肢で突かれます。
登記の更正は、登記に錯誤または遺漏があるときに、その登記を正しい内容に改める手続です。商業登記法132条は当事者が更正を申請できるとし、錯誤や遺漏があることを証する書面を添付させますが、氏、名、住所の更正については要りません。133条は登記官が錯誤や遺漏を発見したときの通知と、登記官の過誤による場合の職権更正を定めています。更正の対象になるのは登記と申請の内容や実体との食い違いで、登記された事項そのものに無効原因があるときは更正ではなく抹消や訴えの問題です。肢で突かれるのは、この線引きと添付書面、職権更正の要件です。
商業登記法 第132条(更正)
登記に錯誤又は遺漏があるときは、当事者は、その登記の更正を申請することができる。
更正の申請書には、錯誤又は遺漏があることを証する書面を添付しなければならない。ただし、氏、名又は住所の更正については、この限りでない。

錯誤や遺漏があれば当事者が更正を申請できます
登記に錯誤または遺漏があるときは、当事者はその登記の更正を申請できます。錯誤は登記の内容が本来登記すべき内容と食い違っていること、遺漏は登記すべき事項の一部が登記されていないことです。更正の登記の申請書には錯誤や遺漏があることを証する書面を添付しますが、氏、名または住所の更正については添付しません。登録免許税は申請1件につき2万円です。更正の登記がされると、誤っていた部分には抹消の記号が記録され、正しい内容が記録される形です。
登記官の過誤による錯誤は監督法務局長の許可で職権更正します
登記官が登記に錯誤または遺漏があることを発見したときは、遅滞なく登記をした者にその旨を通知し、当事者からの更正の申請を促します。錯誤や遺滞が登記官の過誤によるものであるときは通知ではなく、登記官が遅滞なく監督法務局または地方法務局の長の許可を得て職権で更正します。申請書の記載どおりに登記されていれば登記官の過誤ではなく、当事者が更正を申請します。職権更正は登記官の側の誤りを正す仕組みで、当事者の申請の誤りには使えません。
無効原因のある登記は更正ではなく抹消や無効の訴えの対象です
剰余金の資本組入れによる変更の登記がされた後、組み入れるべき剰余金が存在しなかったことが分かることがあります。剰余金の不存在は登記された事項に無効の原因がある場合で、錯誤や遺漏による更正の対象ではありません。「剰余金の資本組入れによる変更の登記がされた後,資本金に組み入れるべき剰余金が存在しなかったことを理由として当該登記の更正を申請することはできない」という肢は正しい肢です。登記された事項に無効の原因があるときは登記の抹消の申請の問題で、訴えをもってのみ無効を主張できる事項は判決による嘱託で処理されます。登記実務では、募集株式の発行による変更の登記で申請の誤りにより資本金の額が少なく登記された場合に、更正によって額を増やすことは認められていません。「資本金の額について当該登記の更正を申請することができる」という肢は誤りです。
退任事由の取り違えは更正の問題で、抹消の対象ではありません
株主総会で解任された取締役について辞任を原因とする退任の登記がされているときは、退任の事実自体はあって原因の記載が誤っているので、登記の抹消ではなく更正で原因を正します。「株主総会において解任された取締役について、辞任を原因とする取締役の変更の登記がされている場合には、会社は、当該登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りです。更正の申請書には解任を決議した株主総会議事録のような錯誤を証する書面を添付します。更正と抹消は、登記された事項の一部を正すか、登記そのものを消すかという使い分けです。登記の年月日や受付番号のように登記官が記録する事項の誤りは、申請人の更正ではなく登記官の過誤として処理されます。
商業登記法 第133条登記官は、登記に錯誤又は遺漏があることを発見したときは、遅滞なく、登記をした者にその旨を通知しなければならない。ただし、その錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、この限りでない。
前項ただし書の場合においては、登記官は、遅滞なく、監督法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない。
試験ではこう問われる
- 登記の更正の対象は何か(錯誤または遺漏。無効原因のある登記は対象外)
- 氏名や住所の更正に錯誤を証する書面は要るか(要らない)
- 登記官の過誤による錯誤はどう直すか(監督法務局長の許可を得て職権で更正)
- 剰余金が存在しなかった資本組入れの登記を更正できるか(できない)
- 解任を辞任と登記したときは更正か抹消か(更正)
この用語が問われた肢
剰余金の資本組入れによる変更の登記がされた後,資本金に組み入れるべき剰余金が存在しなかったことを理由として当該登記の更正を申請することはできない。
募集株式の発行による変更の登記において,誤った申請により資本金の額が少なく登記された場合には,当該登記後に更に資本金の額の変更の登記がされている場合を除き,資本金の額について当該登記の更正を申請することができる。
株主総会において解任された取締役について、辞任を原因とする取締役の変更の登記がされている場合には、会社は、当該登記の抹消を申請することができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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