訴訟手続の中断と受継(124条〜132条)そしょうてつづきのちゅうだんとじゅけい
訴訟手続の中断とは、当事者の死亡や法定代理権の消滅など訴訟を追行する者に交代が必要な事由が生じたとき、新しい追行者が手続に関与できるまで訴訟手続が法律上当然に停止することです。受継とは、承継人などが中断した手続を受け継いで再開させることです(124条〜132条)。
訴訟の途中で当事者が亡くなると、誰がその訴訟を続けるのかが決まるまで、手続を進めることができません。相続人が知らないうちに不利な手続が進むのを防ぐため、民事訴訟法は、当事者の死亡などの事由があると訴訟手続は法律上当然に止まり(中断)、承継する人が受け継ぐ(受継)まで再開しないことにしました。ただし、訴訟代理人がいれば訴訟を進める人がいるので、中断は起きません。

当事者の死亡・法人の合併・訴訟能力の喪失や法定代理権の消滅などがあると、訴訟手続は当然に中断し、承継する者が受け継ぎます
124条1項は、次の事由があるときは訴訟手続は中断し、それぞれに定める者が訴訟手続を受け継がなければならないとしています。中断は事由が生じた時に法律上当然に生じるもので、裁判所の決定は要りません。合併によって当事者である会社が消滅すれば、新設合併の場合も中断します。当事者である会社の唯一の代表取締役が死亡すれば法定代理人(代表者)がいなくなるので中断します(37条・124条1項3号)。法定代理権の消滅は相手方に通知しなければ効力を生じず(36条1項・37条)、「当事者である未成年者が成年に達した場合には,その親権者の法定代理権の消滅は,本人又は代理人から相手方に通知しなくても,訴訟上その効力を生ずる」という肢(R3 午後 問1 オ)は誤りです。もっとも、最判平成19年3月27日は、代表権の消滅が公知の事実であるときは通知があったものと同視し、直ちに効力を生ずるとしました。破産手続開始の決定があったときも、破産財団に関する訴訟手続は中断します(破産法)。
- 当事者の死亡(1号)相続人・相続財産の管理人・相続財産の清算人など
- 法人の合併による消滅(2号)合併により設立された法人・合併後存続する法人
- 訴訟能力の喪失・法定代理人の死亡・法定代理権の消滅(3号)法定代理人・訴訟能力を有するに至った当事者。保佐人・補助人の同意が要らないか得ているときは中断しない(124条5項)
- 受託者などの信託に関する任務の終了(4号)新たな受託者など
- 一定の資格で他人のために当事者となった者の資格喪失(5号)同一の資格を有する者(破産管財人の交代など)
- 選定当事者の全員の死亡・資格喪失(6号)選定者の全員又は新たな選定当事者
訴訟代理人がいる間は中断せず、訴訟代理人の死亡でも中断せず、判決の送達で代理権が尽きた時に中断します
124条1項は、訴訟代理人がある間は適用されません(同条2項)。訴訟代理人の権限は当事者の死亡などで消滅しないので(58条1項)、代理人が引き続き訴訟を追行できるからです。「訴訟代理権は、委任をした当事者が死亡した場合には、消滅する」という肢(R6 午後 問1 ウ)は誤りです。当事者が訴訟能力を失った場合も同じで、「被告が訴訟係属中に成年被後見人になった場合には、その被告について訴訟代理人があるときを除き、訴訟手続は、中断する」という肢(R7 午後 問1 ウ)は正しいです。訴訟代理人そのものが死亡しても、当事者本人が訴訟を追行できるので中断しません。訴訟代理人が上訴の特別の委任を受けていないときは、その審級の判決正本の送達で代理権が尽きるので、その時に中断します。判決の言渡しの時ではありません。
保佐開始・選定当事者の一部の死亡・選定者全員の死亡・係争物の譲渡・債権者代位訴訟の債務者の死亡では中断せず、一身専属権なら訴訟は終了します
被保佐人は保佐人の同意を得て訴訟行為ができるので、訴訟係属中に保佐開始の審判がされても訴訟能力を失わず、中断しません。選定当事者が数人いるときは、一部が死亡しても残りの者が訴訟を追行するので中断せず(30条5項)、全員が死亡したときに中断します(124条1項6号)。選定者が全員死亡しても、当事者である選定当事者は残るので中断しません。債権者代位訴訟では債権者が当事者なので、債務者が死亡しても中断しません。係争物の譲渡は当事者の変更ではなく、参加承継・引受承継の問題になるので、建物を譲渡しても中断しません。他方、第三者が独立当事者参加をすれば参加人も当事者になるので、参加人が死亡すれば中断します。訴訟物が一身専属権であれば承継する者がいないので、中断せずに訴訟は終了します(最大判昭和42年5月24日)。
通常共同訴訟では死亡した者との関係だけ中断し、必要的共同訴訟と独立当事者参加では全員について中断します
通常共同訴訟では共同訴訟人の一人について生じた事由は他の共同訴訟人に影響しないので(39条)、中断も死亡した者との関係に限られます。建物の共有者2人に対する建物収去土地明渡請求で一人が死亡したときはその者との関係だけ中断し、受継した共同相続人の一人が死亡しても他の相続人との関係では中断せず、主債務者が死亡しても保証人についての手続は中断しません。賃借人と転借人に対する建物明渡請求で賃借人が死亡しても、転借人に対する訴訟は中断しません。必要的共同訴訟では、共同訴訟人の一人に中断の原因があれば全員について中断します(40条3項)。入会権の確認のような固有必要的共同訴訟で共同原告の一人が死亡したときも、全員について中断します。独立当事者参加訴訟にも40条が準用される(47条4項)ので、三者の一人に中断の事由が生じれば全員との関係で中断します。

受継の申立ては相手方もでき、裁判所は職権で続行を命じることもでき、相続人は相続放棄ができる間は受け継げません
受継の申立ては、承継人のほか相手方もすることができ(126条)、申立てがあれば裁判所は相手方に通知し(127条)、職権で調査して理由がなければ決定で却下します(128条1項)。当事者が受継の申立てをしなくても、裁判所は職権で訴訟手続の続行を命ずることができます(129条)。相続人は、相続の放棄をすることができる間は訴訟手続を受け継ぐことができません(124条3項)。中断は受継の通知又は続行の時に解消し、そこから期間が改めて進行します(132条2項)。相手方との関係では127条の通知の時に解消し、申立ての時ではありません。
中断中でも判決の言渡しはでき、期間の進行は止まり、中断中の訴訟行為は異議権の放棄で有効になります
判決の言渡しは、訴訟手続の中断中であってもすることができます(132条1項)。口頭弁論が終結していれば当事者がすることは残っていないからです。口頭弁論終結後判決言渡し前に被告が死亡した場合、手続は中断しますが判決は言い渡せます。「判決の言渡しは、訴訟手続の中断中には、することができない」という肢(R7 午後 問5 イ)は誤りです。中断中は期間の進行が止まり、受継の通知又は続行の時から新たに全期間が進行します(132条2項)。請求を棄却する判決の送達を受けた翌日に原告が死亡したときは、訴訟代理人がいなければ中断し、控訴期間の進行が停止します。中断中に裁判所や当事者がした訴訟行為は無効ですが、中断が解消した後に当事者双方が責問権(異議権)を放棄すれば有効になります。中断と違い、天災などで裁判所が職務を行えないとき(130条)や当事者に不定期間の故障があるとき(131条)は訴訟手続の中止になり、後者は裁判所の決定で命じます。
民事訴訟法 第124条第2項前項の規定は、訴訟代理人がある間は、適用しない。
民事訴訟法 第124条第3項第一項第一号に掲げる事由がある場合においても、相続人は、相続の放棄をすることができる間は、訴訟手続を受け継ぐことができない。
民事訴訟法 第132条第1項判決の言渡しは、訴訟手続の中断中であっても、することができる。
民事訴訟法 第132条第2項訴訟手続の中断又は中止があったときは、期間は、進行を停止する。この場合においては、訴訟手続の受継の通知又はその続行の時から、新たに全期間の進行を始める。
試験ではこう問われる
- 当事者の死亡・合併・訴訟能力の喪失・法定代理人の死亡や代理権の消滅などで、訴訟手続は法律上直ちに中断し、中断決定は要らない(124条1項)
- 訴訟代理権は当事者の死亡で消滅せず(58条1項、R6 午後 問1 ウ ×)、訴訟代理人がいる間は中断しない(124条2項)。訴訟代理人の死亡でも中断しない
- 被告が訴訟係属中に成年被後見人になれば、訴訟代理人がいない限り中断する(R7 午後 問1 ウ ○)。保佐開始では中断しない
- 法定代理権の消滅は相手方に通知しなければ効力を生じない(36条1項、R3 午後 問1 オ ×)。代表権の消滅が公知の事実なら通知なしに消滅時に中断する(最判平成19年3月27日)
- 選定当事者の一部の死亡・選定者全員の死亡・係争物の譲渡・債権者代位訴訟の債務者の死亡では中断しない。一身専属権なら訴訟は終了する
- 通常共同訴訟は死亡者との関係だけ中断し、必要的共同訴訟・独立当事者参加は全員中断する(40条3項・47条4項)。受継の申立ては相手方もでき(126条)、相続放棄ができる間は受継できない(124条3項)
- 中断中も判決の言渡しはできる(132条1項、R7 午後 問5 イ ×)。中断中は期間の進行が止まり、受継の通知又は続行の時から新たに進行する(132条2項)

