参加承継と引受承継さんかしょうけいとひきうけしょうけい
参加承継とは、訴訟の係属中に訴訟の目的である権利又は義務を承継したと主張する第三者が、独立当事者参加の形で自ら訴訟に入ることです(49条・51条前段)。引受承継とは、当事者の申立てにより、裁判所が決定で、権利又は義務を承継した第三者に訴訟を引き受けさせることです(50条・51条後段)。
XがYに貸金の返還を求めている途中で、XがZにその債権を売ってしまったとします。そのまま進めてXが勝っても、債権はもうZのものです。かといって最初からやり直すと、それまでの審理が無駄になり、Yは同じ争いをもう一度させられます。そこで民事訴訟法は、訴訟の途中で権利や義務を引き継いだ人を、それまでの訴訟の状態ごと訴訟に入れる仕組みを用意しています。承継人が自分から入るのが参加承継、相手方が承継人を引き入れるのが引受承継です。

訴訟の係属中に訴訟の目的である権利や義務が移ったときは、承継人が自ら入る参加承継と、相手方が引き入れる引受承継があります
民事訴訟法は、口頭弁論終結前に訴訟の目的である権利義務が第三者に移ったとき、その第三者を訴訟に入れて従前の訴訟状態を引き継がせる訴訟承継の考え方を採っています。権利承継人の参加で時効の完成猶予が訴訟の係属の初めにさかのぼること(49条)と、口頭弁論終結後の承継人にだけ判決の効力が及ぶこと(115条1項3号)がその根拠とされます。相続や合併による当然承継は、訴訟手続の中断と受継の問題で、別の語で扱います。売買などで係争物が譲渡された場合の承継には、承継人の申出による参加承継と、相手方当事者の申立てによる引受承継があり、どちらも権利の承継人と義務の承継人の両方に使えます。
- 参加承継(権利承継人)訴訟の目的である権利を譲り受けたと主張する者が、47条1項の独立当事者参加の形で参加する(49条)
- 参加承継(義務承継人)訴訟の目的である義務を承継したと主張する者が、同じく参加する(51条前段)
- 引受承継(義務承継人)当事者の申立てにより、裁判所が決定で、義務を承継した第三者に訴訟を引き受けさせる(50条)
- 引受承継(権利承継人)当事者の申立てにより、権利を譲り受けた第三者に訴訟を引き受けさせる(51条後段)
参加承継は独立当事者参加の形で行い、承継人に参加の義務はなく、請求を立てる必要があります
参加承継は、承継人が自分の判断で訴訟に入る制度です。参加の申出は訴えの提起の実質を持ち、処分権主義が働くので、承継人に参加する義務はありません。参加承継は47条の独立当事者参加の形を借りるので、権利の承継人が原告側で参加する場合も、義務の承継人が被告側で参加する場合も、承継人は当事者の双方又は一方を相手方とする請求を立てなければなりません。47条1項は一方だけを相手方とする参加を認めているので、前主との間に争いがなければ、承継人は相手方に対してだけ請求を立てれば足ります。参加の適否は独立当事者参加と同じく終局判決で判断され、審尋して決定で許否を判断する手続はありません。権利の承継人が参加したときは、時効の完成猶予に関しては訴訟の係属の初めに裁判上の請求があったものとみなされ(49条1項)、法律上の期間の遵守の効力も係属の初めにさかのぼります(同条2項)。令和2年4月施行の民法改正に合わせて、49条1項の効果は時効の中断から完成猶予に改められています。
引受承継は当事者の申立てにより裁判所が決定でするもので、職権ではできず、事実審の口頭弁論終結前に限られます
訴訟の係属中に第三者が訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したときは、裁判所は、当事者の申立てにより、決定で、その第三者に訴訟を引き受けさせることができます(50条1項)。決定をするときは、当事者及び第三者を審尋しなければなりません(同条2項)。この規定は、第三者が訴訟の目的である権利を譲り受けた場合にも準用されます(51条後段)。貸金債務を第三者が引き受けたときは原告が、原告から債権を譲り受けた第三者がいるときは被告が、引受けを申し立てられます。引受けは当事者の申立てによるので、職権ではできません。判例は、引受けの申立ては事実審の口頭弁論終結前に限られるとしました(最決昭和37年10月12日)。上告裁判所に引受けを申し立てることはできません。権利を譲り渡した原告自身が譲受人に引き受けさせる申立てをすることについて、申立ての利益を否定した裁判例があります(東京高決昭和54年9月28日)。
引受承継の後は同時審判申出共同訴訟の規定が準用され、必要的共同訴訟にはなりません
引受決定があると、前主と承継人が共同して当事者になりますが、この共同訴訟には同時審判申出共同訴訟の41条1項・3項が準用されます(50条3項)。原告が前主と承継人の双方に対して矛盾する理由で負けることを防ぐため、弁論及び裁判を分離できず、一部判決もできません。他方で必要的共同訴訟の40条は準用されないので、承継人の訴訟行為が前主の利益においてのみ効力を生ずるわけではなく、必要的共同訴訟にはなりません。他方、41条1項の準用で分離と一部判決が禁止されるので、通常共同訴訟と同じ手続でもありません。分離の禁止は判決手続の規律にとどまるので、承継人を除いて相手方と前主が訴訟上の和解をすることはできます。参加承継は独立当事者参加の形なので、47条4項により40条1項から3項までが準用されます。

前主は、参加承継でも引受承継でも相手方の承諾を得て脱退でき、判決の効力は脱退した前主にも及びます
承継人が入ったあと前主が訴訟に残る必要はないので、前主は訴訟から脱退できます。ただし、参加承継では独立当事者参加の訴訟脱退の規定(48条)が適用され、引受承継でも48条が準用されるので(50条3項・51条)、どちらも相手方の承諾が要ります。脱退すると相手方は前主に対する請求について判決を得られなくなるからです。判例も、引受けがあっても前主は当然に脱退するのではなく、相手方の同意を得て脱退できるにすぎないとしています(大判昭和9年3月24日)。脱退した前主にも判決の効力が及びます(48条)。
民事訴訟法 第49条第1項訴訟の係属中その訴訟の目的である権利の全部又は一部を譲り受けたことを主張する者が第四十七条第一項の規定により訴訟参加をしたときは、時効の完成猶予に関しては、当該訴訟の係属の初めに、裁判上の請求があったものとみなす。
民事訴訟法 第50条第1項訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したときは、裁判所は、当事者の申立てにより、決定で、その第三者に訴訟を引き受けさせることができる。
民事訴訟法 第50条第3項第四十一条第一項及び第三項並びに前二条の規定は、第一項の規定により訴訟を引き受けさせる決定があった場合について準用する。
試験ではこう問われる
- 訴訟引受けの申立ては事実審の口頭弁論終結前に限られ、上告審ではできない(最決昭和37年10月12日。H30 午後 問1 イ ×・出題当時)
- 権利の承継人が参加承継をすれば、時効の完成猶予の効力は訴訟の係属の初めにさかのぼる(49条1項。H30 午後 問1 エ ×・出題当時。肢の「時効の中断」は完成猶予と読み替える)
- 参加前の原告は相手方の承諾を得て脱退でき、判決は脱退者にも及ぶ(48条。H30 午後 問1 オ ○・出題当時)
- 承継人に参加承継の義務はなく、参加承継でも承継人は請求を立てる必要がある
- 引受承継は当事者の申立てによる決定で、職権ではできず、当事者と第三者を審尋する(50条1項・2項)
- 引受承継後は41条1項・3項が準用され、分離・一部判決はできないが、必要的共同訴訟にはならない(50条3項)

