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任意的当事者変更にんいてきとうじしゃへんこう

民事訴訟法 第10章 複雑訴訟

任意的当事者変更とは、訴訟係属後に、実体関係の変動がないのに、原告が最初の被告以外の者に訴えを向け変え、又は最初の原告以外の者が原告に代わって訴えを提起することです。当事者に同一性がある表示の訂正や、実体関係の変動による訴訟承継とは区別されます。

会社に代金を請求するつもりで、うっかり社長個人を被告にして訴えてしまったとします。訴状の名前の書き間違いなら直せば済みますが、社長個人と会社は別の人なので、被告を入れ替えることになります。一から訴え直すと、手数料がかかり、それまでの審理も使えなくなります。そこで訴訟の途中で当事者を別の人に入れ替えることを認め、それまでの審理をどこまで生かせるかが議論されています。これが任意的当事者変更です。

裁判所書記官室の受付カウンターの場面。カウンターの上に訴状が置かれ、被告欄に「被告 甲野太郎(個人)」と書かれている。男性(札「原告」)が頭をかきながら「本当は甲野商事株式会社を訴えるつもりでした」と言っている。先生が裁判所書記官役(札「裁

任意的当事者変更は、実体関係に変動がないのに、同一性のない別の人に当事者を入れ替えることです

訴えの提起後に訴訟の当事者名が変わる場面は、実体関係に変動がない場合とある場合に分かれます。実体関係に変動がない場合のうち、訴訟上の当事者に同一性があるときは、誤記を直す表示の訂正にとどまります。同一性がないときが任意的当事者変更です。実体関係に変動がある場合は訴訟承継の問題で、相続や合併による当然承継と、係争物の譲渡による参加承継・引受承継があります。任意的当事者変更は、原告が被告とすべき者を誤った場合や、固有必要的共同訴訟で共同被告とすべき者の一部を落とした場合を補う場面で役立つとされます。民事訴訟法に定めはなく、要件と効果は解釈に委ねられています。

  • 表示の訂正実体関係に変動がなく、当事者に同一性がある(誤記を直すだけ)
  • 任意的当事者変更実体関係に変動がなく、当事者に同一性がない(別人に入れ替える)
  • 当然承継相続・合併などの包括承継(中断と受継)
  • 参加承継・引受承継訴訟の目的である権利義務の特定承継(49条〜51条)
教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立つ。黒板に枝分かれの図。根元「当事者名が変わる」から二本に分かれ、上の枝「実体関係の変動なし」がさらに「同一性あり → 表示の訂正」「同一性なし → 任意的当事者変更」に分かれ、下の枝「実

通説は、任意的当事者変更を新当事者に対する新訴の提起と旧訴の取下げの複合とみています

かつては訴えの変更の一種とする見解もありましたが、現在は訴えの変更に当たらないとする理解が一般的です。従来の通説は、新しい当事者による又は新しい当事者に対する訴えの追加的な併合と、旧訴の取下げとが組み合わさったものとみる見解です。この見解では、旧訴の取下げには取下げの要件(261条2項の相手方の同意など)が要り、従来の訴訟の結果は原則として新当事者に及びません。旧被告が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続で申述をし、又は口頭弁論をした後なら、取下げには旧被告の同意が要ります(261条2項)。取下げは書面でするのが原則で、口頭弁論等の期日なら口頭でもでき(同条3項・4項)、旧被告がその期日に出頭しなかったときは、取下げを記録した電子調書の送達を受けた日から2週間以内に異議を述べなければ同意したものとみなされます(同条5項・6項)。「被告が出頭しない口頭弁論の期日で原告が口頭で訴えを取り下げ、その期日から 2 週間以内に被告が異議を述べないときは、被告は、訴えの取下げに同意したものとみなされる」という肢(R6 午後 問3 イ)は、起算点を期日の日としている点で誤りです。取下げがあった部分は初めから係属していなかったものとみなされるので(262条1項)、旧被告との訴訟はさかのぼって消えます。もっとも、判例は訴えの主観的追加的併合を認めていないので(最判昭和62年7月17日)、この見解の前提との関係が問題になります。そこで、新当事者が旧当事者の訴訟追行の結果を追認すれば相手方は拒めない、旧当事者と新当事者の訴訟追行が実質的に同一視できる場合には新当事者は従来の結果を争えないとして、従来の結果をできるだけ生かそうとする修正説があります。これに対し、任意的当事者変更を一個の特殊な訴訟行為とみる見解もあります。

最高裁の立場はまだ示されておらず、実務では表示の訂正として扱うことが多いとされます

当事者を誤ったことは訴訟の早い段階で分かることが多く、実務では、関係者の同意を得たり送達をやり直したりしたうえで、表示の訂正として処理することが多いとされます。任意的当事者変更そのものについて最高裁の判断はまだなく、下級審の裁判例は変更を認める場面も結論もさまざまです。当事者を誰とみるかの基準は当事者の確定の語で、追加的に共同被告を加える場面は主観的追加的併合の語で扱います。

民事訴訟法 第261条第2項

訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。ただし、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない。

試験ではこう問われる

  1. 任意的当事者変更は、実体関係に変動がないのに同一性のない別人に当事者を入れ替えることである
  2. 同一性があれば表示の訂正、実体関係に変動があれば訴訟承継の問題である
  3. 通説は新訴の提起と旧訴の取下げの複合とみる
  4. 旧訴の取下げには相手方の同意など取下げの要件が要り、期日に欠席した相手方の同意擬制の2週間は電子調書の送達の日から数える(261条2項・6項。R6 午後 問3 イ ×)
  5. 判例は主観的追加的併合を認めない(最判昭和62年7月17日)
  6. 最高裁の判断はまだなく、実務では表示の訂正として扱うことが多い

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