判決の成立と言渡し(電子判決書・調書判決・欠席時の言渡し・送達)はんけつのせいりつといいわたし
判決の成立と言渡しとは、裁判所が電子判決書を作成し、それに基づいて公開の法廷で言い渡すことで判決が効力を生じ、その電子判決書を職権で当事者に送達するまでの手続です。争いのない事件などで請求を認容するときは、電子判決書に基づかずに言い渡し、電子調書に記録させることができます(調書判決)。
判決は、裁判官の頭の中で結論が出ただけでは成り立ちません。結論と理由をまとめた判決書をあらかじめ作り、公開の法廷で主文を読み上げて初めて効力が生じます。判決書を先に作らせるのは、言い渡した内容が後で動かないようにするためです。令和4年の改正で判決書は電子判決書になりましたが、作ってから言い渡し、言い渡した後に当事者へ送達するという流れは変わりません。上訴の期間はこの送達から数えます。

判決は言渡しで効力を生じ、言渡しは言渡しの前に作成した電子判決書に基づいてします
判決は言渡しによってその効力を生じます(250条)。送達によって効力を生ずるのではないので、「判決は、当事者に対する判決書の送達によってその効力を生ずる」という肢(R7 午後 問5 ウ)は誤りです。裁判所は、判決の言渡しをするときは、主文・事実・理由・口頭弁論の終結の日・当事者及び法定代理人・裁判所を記録した電子判決書を作成しなければならず(252条1項)、言渡しはその電子判決書に基づいてします(253条1項)。出題当時の規定では「判決書の原本に基づいてする」とされていましたが、言渡しの前に作成しておく必要がある点は同じで、電子判決書を言渡しの後に作成することはできません。言渡しの方式は規則で定められ、裁判長が主文を朗読してし、理由は相当と認めるときに朗読し又は要領を告げることができるにとどまります(民事訴訟規則157条2項。出題当時は155条)。合議体で評議が終わった後に一部の裁判官が署名押印できなくなっても、他の裁判官がその事由を付記すれば足り(出題当時の同規則157条)、判決の成立は妨げられません。
- 主文訴えに対する結論です
- 事実請求を明らかにし、主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示します(252条2項)
- 理由主文の結論に至った判断です
- 口頭弁論の終結の日既判力の基準時を示します
- 当事者及び法定代理人法人の代表者も法定代理人に準じて記録します(37条)。訴訟代理人は記録事項ではありません
- 裁判所判決をした裁判所です
事実の記録は主文が正当であることを示すのに必要な主張で足り、当事者と法定代理人は記録事項ですが訴訟代理人は記録事項ではありません
事実の記録では、請求を明らかにし、かつ、主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示しなければなりません(252条2項)。逆にいえば、当事者が主張した主要事実でも、請求を明らかにするものでも主文が正当であることを示すのに必要なものでもなければ、摘示しなくてかまいません。当事者と法定代理人は記録事項ですが(252条1項5号)、訴訟代理人は記録事項とされていません(最判昭和33年1月23日)。法定代理人は当事者本人に代わって訴訟を追行する者なので、訴訟行為が権限のある者によってされたことを判決上明らかにしておく必要があるからです。法人の代表者には法定代理人の規定が準用される(37条)ので、株式会社の代表者も記録します。
争いのない事件や公示送達で被告が欠席した事件で請求を認容するときは、電子判決書に基づかずに言い渡せ、当事者の意見を聴く必要はありません
被告が口頭弁論で原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法も提出しない場合(254条1項1号)と、公示送達による呼出しを受けた被告が期日に出頭しない場合(同項2号。準備書面の陳述擬制があった場合を除きます)に原告の請求を認容するときは、電子判決書に基づかないで判決を言い渡すことができます。この場合、裁判所は、電子判決書の作成に代えて、当事者及び法定代理人・主文・請求・理由の要旨を、言渡しをした期日の電子調書に裁判所書記官に記録させます(同条2項)。これを調書判決といい、争いのない事件にまで理由を整えた判決書を求めるのは迅速な処理を妨げるからです。被告が欠席して原告の主張を争わない場合も1号に当たります。「被告が口頭弁論の期日に出頭したが、原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合において、原告の請求を認容するときは、裁判所は、判決書の原本に基づかないで判決を言い渡すことができる」という肢(R6 午後 問3 オ)は、「判決書の原本」を現行法の電子判決書と読み替えれば正しいです。254条には当事者の意見を聴く手続がありません。

判決の言渡しは当事者が在廷しなくてもでき、口頭弁論の終結から2か月以内という期間は裁判所への訓示規定です
判決の言渡しは、当事者が在廷しない場合においても、することができます(251条2項)。言渡期日に当事者がする訴訟行為はなく、当事者の欠席で判決の効力の発生が妨げられては困るからです。「判決の言渡しは、当事者双方が判決の言渡期日に出頭しない場合においても、することができる」という肢(R7 午後 問5 ア)は正しいです。同じ理由で、判決の言渡しは訴訟手続の中断中でもでき(132条1項)、「判決の言渡しは、訴訟手続の中断中には、することができない」という肢(R7 午後 問5 イ)は誤りです。判例も、当事者双方が欠席した期日に弁論を終結して判決言渡期日を告知すれば、在廷しない当事者にも告知の効力が及び、言渡期日の呼出状を送達する必要はないとしています(最判昭和56年3月20日)。言渡しは口頭弁論の終結の日から2か月以内にしなければなりません(251条1項本文)が、これは裁判所に対する訓示規定で、違反しても言渡しが違法になるわけではありません(大判大正7年4月30日)。これに対し、判決の言渡しを公開の法廷で行わなかったことは公開主義という公益性の強い規定の違反なので、当事者が遅滞なく異議を述べなくても異議権を失いません(90条ただし書)。
電子判決書は申請がなくても職権で当事者に送達され、控訴期間は言渡しの日ではなく送達を受けた日から2週間です
電子判決書(ファイルに記録されたもの)又は調書判決の電子調書は、当事者に送達しなければなりません(255条1項)。送達は、記録事項と同一であることを裁判所書記官が証明した書面の送達か、電子情報処理組織による送達(109条の2)によってします(同条2項)。言渡しでは理由まで告げられるとは限らず、当事者が在廷しないこともあるので、判決の内容を確実に知らせる必要があるからです。当事者の申請がなくても送達します。控訴は、電子判決書又は調書判決の電子調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければなりません(285条本文)。ただし、送達の前にした控訴も有効です(同条ただし書)。起算点は言渡しの日ではありません。
民事訴訟法 第253条第1項判決の言渡しは、前条第一項の規定により作成された電子判決書に基づいてする。
民事訴訟法 第251条第2項判決の言渡しは、当事者が在廷しない場合においても、することができる。
民事訴訟法 第285条(控訴期間)
控訴は、電子判決書又は第二百五十四条第二項の規定により当事者及び法定代理人、主文、請求並びに理由の要旨が記録された電子調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。
試験ではこう問われる
- 判決は言渡しで効力を生じ、送達によって効力を生ずるのではない(250条。R7 午後 問5 ウ ×)
- 判決の言渡しは当事者双方が在廷しなくてもできる(251条2項。R7 午後 問5 ア ○、R4 午後 問4 オ ×、R3 午後 問5 エ ×)
- 判決の言渡しは訴訟手続の中断中でもできる(132条1項。R7 午後 問5 イ ×)
- 被告が争わず防御方法も出さないときの請求認容判決は、電子判決書に基づかないで言い渡せる(254条1項1号。R6 午後 問3 オ ○。肢の「判決書の原本」は電子判決書と読み替える)
- 言渡しは事前に作成した電子判決書に基づいてし、記録事項は当事者及び法定代理人で訴訟代理人は含まない(252条・253条1項)
- 電子判決書は申請がなくても当事者に送達し、控訴期間は送達を受けた日から2週間である(255条・285条)
- 口頭弁論の終結から2か月以内(251条1項)は訓示規定である(大判大正7年4月30日)

