法定代理人と特別代理人(35条・36条・親権者の共同代理)ほうていだいりにんととくべつだいりにん
法定代理人とは、本人の意思によらずに法律の規定で代理権を持ち、訴訟能力を欠く本人に代わって訴訟を追行する者のことで、親権者・後見人などの実体法上の法定代理人がそのまま訴訟法上の法定代理人になります(28条)。特別代理人とは、法定代理人がいないか代理権を行えない場合に、受訴裁判所の裁判長がその訴訟限りで選任する法定代理人のことです(35条)。
未成年者を相手に貸金の返還を求めたいのに、両親が亡くなっていて未成年後見人もまだ決まっていないとします。法定代理人がいなければ訴状を受け取る人も応訴する人もいないので、家庭裁判所の選任を待つしかないのでは原告が困ります。そこで民事訴訟法は、実体法上の法定代理人をそのまま訴訟でも法定代理人とする一方で、その訴訟限りの特別代理人を受訴裁判所の裁判長が選任できる仕組みを用意しました。法定代理人は本人に代わって訴訟を追行するので、当事者に近い扱いを受けます。

訴訟無能力者の法定代理は民法に従うので、親権者や後見人がそのまま訴訟法上の法定代理人になり、父母は共同して代理権を行います
28条により、訴訟無能力者の法定代理は、民事訴訟法に特別の定めがある場合を除き民法その他の法令に従います。未成年者であれば親権者や未成年後見人、成年被後見人であれば成年後見人が、訴訟法上も法定代理人になります。父母がともに親権者であるときは、親権は父母が共同して行います(民法824条の2第1項)。後見人その他の法定代理人が、訴えの取下げ、和解、請求の放棄・認諾、訴訟脱退、上訴の取下げ、異議の取下げをするには、特別の授権が要ります(32条2項)。同じ規定は被保佐人にも適用され、「被告が訴訟係属中に保佐開始の審判を受けた場合において,訴訟上の和解をするときは,保佐人の特別の授権を要する」という肢(R3 午後 問1 ウ)は正しいです。相手方の訴え又は上訴について訴訟行為をするには、後見監督人の同意その他の授権は要りません(32条1項)。法定代理権は書面又は電磁的記録で証明しなければならず(民事訴訟規則)、その消滅は、本人又は代理人から相手方に通知しなければ効力を生じません(36条1項)。「当事者である未成年者が成年に達した場合には,その親権者の法定代理権の消滅は,本人又は代理人から相手方に通知しなくても,訴訟上その効力を生ずる」という肢(R3 午後 問1 オ)は誤りです。
法定代理人がいないか代理権を行えないときは、遅滞のため損害を受けるおそれを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てられます
35条1項は、法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合に、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができると定めています。家庭裁判所が未成年後見人を選任するのを待っていられない原告のための制度です。親権者が死亡して未成年後見人がいなくても、特別代理人の選任を申し立てれば、未成年後見人の選任を待たずに訴えを提起できます。代理権を行うことができない場合とは、利益相反のように法律上代理できない場合をいいます。判例は、未成年者や法人の側が自ら訴訟行為をする場合にもこの制度を使えるとし、法人に代表者がいない場合にも37条で準用されます。特別代理人はその訴訟限りの臨時の法定代理人なので、本人の意思が重視され代理になじまない離婚訴訟には35条は適用されないとした判例があります(最判昭和33年7月25日)。裁判所はいつでも特別代理人を改任でき(35条2項)、特別代理人が訴訟行為をするには後見人と同一の授権が要ります(35条3項)。

法定代理人は本人と同視されるので、判決書に記載され、当事者尋問の方式で尋問され、証人にはなれません
法定代理人は、訴訟能力を欠く本人に代わって訴訟を追行する者なので、手続上は当事者に近い扱いを受けます。訴状には当事者とともに法定代理人を記載し(134条2項1号)、電子判決書にも当事者及び法定代理人を記録します(252条1項5号)。訴訟代理人は電子判決書の記録事項ではありません。法定代理人を尋問するときは当事者本人の尋問に関する規定が準用されます(211条本文)。そのため法定代理人はその訴訟の証人になれません。これに対し、訴訟代理人は証人になることができます。訴訟無能力者に対する送達は法定代理人にし、数人が共同して代理権を行うべき場合でも、送達はその一人にすれば足ります(99条1項・2項)。
本人の更正権や代理権の不消滅は訴訟代理人だけの規律であり、法定代理人の死亡や代理権の消滅は訴訟手続の中断事由になります
訴訟代理人の事実に関する陳述は、当事者が直ちに取り消し又は更正すれば効力を生じません(57条)が、法定代理人には同じ規定がありません。本人は自分で訴訟を追行する能力を欠くので、法定代理人の陳述に干渉する権限を認めていないからです。「相手方の具体的な事実の主張について訴訟代理人がした認否は、当事者が直ちにこれを取り消したときは、その効力を生じない」という肢(R6 午後 問1 イ)は正しいですが、法定代理人の陳述には同じ扱いがありません。また、法定代理人が死亡し、又は代理権を失うと、本人のために訴訟行為をする者がいなくなるので、訴訟手続は中断します(124条1項3号)。これに対し、訴訟代理人が死亡しても本人が自ら訴訟を追行できるので、中断しません。なお、法定代理人が死亡しても訴訟代理人がいれば中断しません(124条2項)。当事者が訴訟能力を失った場合も同じで、「被告が訴訟係属中に成年被後見人になった場合には、その被告について訴訟代理人があるときを除き、訴訟手続は、中断する」という肢(R7 午後 問1 ウ)は正しいです。特別代理人が改任された場合も、従前の特別代理人の代理権が消滅するので、訴訟代理人がいなければ訴訟手続は中断します。
- 判決書・訴状への記載法定代理人は訴状に記載し、電子判決書に記録します(134条2項1号・252条1項5号)。訴訟代理人は電子判決書の記録事項ではありません
- 尋問の方式法定代理人は当事者尋問の方式です(211条)。訴訟代理人は証人として尋問できます
- 数人あるときの送達どちらも一人にすれば足ります(99条2項。訴訟代理人は56条1項の個別代理)
- 本人による陳述の更正訴訟代理人の事実に関する陳述だけが対象です(57条)
- 死亡・代理権の消滅法定代理人は中断事由です(124条1項3号)。訴訟代理人の死亡は中断事由ではありません
- 代理権消滅の効力どちらも相手方への通知が必要です(36条1項・59条)
民事訴訟法 第35条第1項法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができる。
民事訴訟法 第36条第1項法定代理権の消滅は、本人又は代理人から相手方に通知しなければ、その効力を生じない。
民事訴訟法 第211条(法定代理人の尋問)
この法律中当事者本人の尋問に関する規定は、訴訟において当事者を代表する法定代理人について準用する。ただし、当事者本人を尋問することを妨げない。
試験ではこう問われる
- 親権者である父母は訴訟法上も法定代理人となり、共同して代理権を行う(28条・民法824条の2第1項)
- 後見人その他の法定代理人や被保佐人が和解・請求の放棄・訴えの取下げなどをするには特別の授権が要る(32条2項、R3 午後 問1 ウ ○)。相手方の訴えについての訴訟行為には同意その他の授権は要らない(32条1項、R7 午後 問1 オ ○)
- 法定代理人がいなくても、遅滞のため損害を受けるおそれを疎明して受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てれば、未成年後見人の選任を待たずに訴えを提起できる(35条1項)
- 法定代理人は電子判決書の記録事項で、当事者尋問の方式で尋問され証人になれない(252条1項5号・211条)
- 当事者が直ちに取り消して陳述の効力を失わせる更正権は、訴訟代理人の陳述についてだけ認められる(57条、R6 午後 問1 イ ○)
- 当事者の訴訟能力の喪失や法定代理人の死亡は中断事由だが、訴訟代理人がいる間は中断しない(124条1項3号・2項、R7 午後 問1 ウ ○)
- 法定代理権の消滅は相手方に通知しなければ効力を生じない(36条1項)。未成年者が成年に達した場合も同じである(R3 午後 問1 オ ×)

