必要的共同訴訟の審判(40条)ひつようてききょうどうそしょうのしんぱん
必要的共同訴訟とは、訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき共同訴訟で、固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟があります。その審判では、一人の訴訟行為は全員の利益においてのみ効力を生じ、相手方の一人に対する訴訟行為は全員に効力を生じ、一人についての中断・中止は全員に効力を生じます(40条)。
共有者三人が共有地の確認を求めて一緒に訴えたのに、一人だけが勝手に訴えを取り下げたり、相手の言い分を認めたりしたらどうなるでしょう。三人について結論が食い違えば、共有地が誰のものかが決まりません。そこで、全員について同じ結論を出す必要がある共同訴訟では、一人が全員の足を引っ張ることはできず、全員のためになる行為だけが効力を持つというルールが置かれています。手続の進み方もそろえるために、中断や上訴も全員をまとめて扱います。

必要的共同訴訟では、一人の訴訟行為は全員の利益になる限りで効力を生じるので、自白・請求の認諾・訴えの取下げは一人ではできません
訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生じます(40条1項)。全員について矛盾のない結論を出すには訴訟資料をそろえる必要があるからです。そのため、否認や証拠の提出のような有利な行為は一人がすれば全員のためにした効力を生じますが、自白、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解のような不利な行為は、一人でしても効力を生じません。欠席した共同訴訟人は、後の期日でその事実を争えます。自白は自白した者との関係でも成立しないので、「必要的共同訴訟において、請求原因事実について、共同被告の一人がこれを認める旨の陳述をし、他の共同被告がこれを否認しているときは、当該請求原因事実についての自白は、これを認める旨の陳述をした共同被告との関係においても、成立しない」という肢(R8 午後 問1 ウ)は正しいです。遺産確認の訴えは共同相続人全員の固有必要的共同訴訟なので(最判平成元年3月28日)、被告の一部だけの認諾は効力を生じません。「遺産確認の訴えに係る訴訟には、共同相続人全員が当事者として関与しなければならない」という肢(R8 午後 問1 イ)は正しいです。訴えの取下げについて、判例は、共有権の確認や共有権に基づく登記手続を共有者全員が求める固有必要的共同訴訟の係属中に、共同原告の一人が訴えを取り下げても、その取下げは効力を生じないとしました(最判昭和46年10月7日)。一人の取下げを認めると、残りの者の訴えが当事者適格を欠いて却下されてしまうからで、取り下げた本人についても効力を生じません。被告側でも同じで、「固有必要的共同訴訟において、共同被告の一人に対する訴えを取り下げた場合には、当該共同被告の一人に対して訴えの取下げの効力が生ずる」という肢(R8 午後 問1 エ)は誤りです。共同被告の一人が取下げに同意しても同じなので、「その共同被告の一人が訴えの取下げに同意をしたときは、共同被告の全員が同意をしなくても、同意をした者に対する関係で訴えの取下げの効力が生ずる」という肢(R5 午後 問2 オ)も誤りです。請求の減縮を訴えの一部取下げとみる見解に立てば、固有必要的共同訴訟の共同原告の一人がした請求の減縮も同じく効力を生じないことになります。
相手方の一人に対する訴訟行為は全員に効力を生じ、一人に中断の原因があれば全員について手続が中断します
共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生じます(40条2項)。共同訴訟人の一部が欠席しても、相手方が不利益を受けないようにするためです。相手方が在廷しない口頭弁論では準備書面に記載した事実しか主張できないのが原則ですが(161条3項)、共同訴訟人のうち一人でも出頭していれば、相手方は準備書面に記載していない事実も主張でき、全員に主張したことになります。遺産確認の訴えで共同原告の一人が欠席しても同じです。訴訟の進行をそろえるため、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は全員について効力を生じます(40条3項)。当事者が死亡しても訴訟代理人がいる間は中断しないので(124条2項)、その場合は全員について中断しません。共有権の確認訴訟や入会権の確認訴訟でも同じです。

必要的共同訴訟では弁論の分離も一部判決もできず、一部判決がされれば名宛人でない共同訴訟人も控訴できます
全員について一つの判決で合一に確定させなければならないので、裁判所は弁論を分離することも、一部の共同訴訟人についてだけ判決することもできません。第三者が夫婦を被告として提起する婚姻の取消しの訴えは、夫婦間の法律関係を変動させる形成の訴えで、夫婦双方を被告とする固有必要的共同訴訟で、裁判所は弁論を分離できません。誤って一部判決がされた場合、その判決は違法なので、名宛人とされなかった共同訴訟人も違法を正すために控訴できると解されています。
一人が上訴すれば全員について確定が遮断されて全体が移審し、判決は全員の上訴期間が経過するまで確定しません
上訴は一般に有利な行為なので、共同訴訟人の一人が上訴すれば、40条1項により全員について判決の確定が遮断され、訴訟は全体として上訴審に移ります。上訴期間は判決の送達を受けた日から共同訴訟人ごとに進行し、自分の期間が過ぎた者は原則として自ら上訴できませんが(最決平成15年11月13日)、他の者の期間が残っていれば、その者が上訴する可能性がある以上、判決は全体として確定しません。上訴期間そのものが最も遅い送達の日にそろえられるわけではないので、「必要的共同訴訟における控訴期間は、全ての共同訴訟人につき、共同訴訟人に対する判決書の送達日のうち最も遅い日から進行する」という肢(R8 午後 問1 オ)は誤りです。合一確定の要請は上訴審での判断の範囲にも及びます。判例は、共同相続人の一人が相続人の地位を有しないことの確認を他の共同相続人全員に求める固有必要的共同訴訟で、ある被告に対する請求を認容し別の被告に対する請求を棄却する矛盾した判決がされた場合には、原告が上訴又は附帯上訴をしていなくても、上訴審は合一確定に必要な限度で、上訴しなかった被告に関する部分をその者に不利益に変更できるとしました(最判平成22年3月16日)。なお、株主代表訴訟のような類似必要的共同訴訟では、自ら上訴しなかった者は上訴人にならないとする判例があります(類似必要的共同訴訟の語で扱います)。
- 40条1項一人の訴訟行為は全員の利益においてのみ効力を生じます。自白・請求の放棄や認諾・和解・訴えの取下げは一人では効力を生じず、上訴は全員のために効力を生じます
- 40条2項相手方の一人に対する訴訟行為は全員に効力を生じます。一人でも出頭すれば準備書面にない事実も主張できます
- 40条3項一人についての中断・中止は全員に効力を生じます。訴訟代理人がいれば中断しません
- 解釈弁論の分離と一部判決はできません。判決は全員の上訴期間が経過するまで確定しません
民事訴訟法 第40条第1項訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。
民事訴訟法 第40条第2項前項に規定する場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる。
民事訴訟法 第40条第3項第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる。
試験ではこう問われる
- 必要的共同訴訟で共同被告の一人が請求原因事実を認めても他が否認すれば、自白は認めた者との関係でも成立しない(40条1項。R8 午後 問1 ウ ○)
- 固有必要的共同訴訟で共同被告の一人に対する取下げや、一人の同意による取下げは効力を生じない(R8 午後 問1 エ ×、R5 午後 問2 オ ×)
- 控訴期間は共同訴訟人ごとに送達の日から進行し、最も遅い送達日にそろうのではない(最決平成15年11月13日。R8 午後 問1 オ ×)
- 遺産確認の訴えは共同相続人全員が当事者として関与しなければならない(最判平成元年3月28日。R8 午後 問1 イ ○)
- 共同訴訟人の一部が欠席しても、相手方は準備書面に記載していない事実を主張できる(40条2項)
- 一人に中断の原因があれば全員について中断するが、訴訟代理人がいれば中断しない(40条3項・124条2項)
- 一人の上訴で全員について確定が遮断され全体が移審し、弁論の分離と一部判決はできない

