認知(779条〜789条)にんち
認知とは、嫡出でない子について、父又は母が戸籍法の届出又は遺言によって法律上の親子関係を生じさせることで(779条・781条)、出生の時に遡って効力を生じ(784条)、父が認知しないときは子・その直系卑属・これらの者の法定代理人が認知の訴えを提起でき(787条)、認知が事実に反するときは子・認知をした者・子の母などが7年以内に認知の無効の訴えを提起できます(786条)。
結婚していない男女の間に生まれた子と父との親子関係は、父が「自分の子だ」と認める認知によって初めて法律上生じます。母との関係は出産で当然に生じるので、認知が問題になるのはほとんど父です。認知は役所への届出か遺言でし、効果は生まれた時までさかのぼります。父が認めないときは、子の側から認知の訴えを起こせ、父が亡くなっても3年間はできます。認知は親子という身分を決める行為なので、未成年の父でも自分の判断ででき、後から取り消すことはできません。

認知は本人の意思でする身分行為なので、未成年者や成年被後見人も法定代理人の同意なくでき、認知をした者は取り消せません
認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しません(780条)。「未成年者が認知をするには、その法定代理人の同意を要しない。」という肢(R6 問4 エ)は正しく、「未成年被後見人が子を認知するには、未成年後見人の同意を得なければならない。」という肢(R4 問20 イ)は誤りです。成年被後見人も、成年後見人の同意なく認知できます。認知をした父又は母はその認知を取り消すことができず(785条)、同意が要らない以上、法定代理人が行為能力の制限を理由に取り消すこともできません。認知は親子関係を定める行為なので条件を付けることはできず、「認知には、条件を付すことができる。」という肢(R6 問5 エ)は誤りです。認知は戸籍法の届出によってするので(781条1項)、届出がなければ父の生前の認知の意思が明らかでも効力は生じず、父の死亡の時に認知の効力が生ずることもありません。ただし判例は、父が嫡出でない子を嫡出子として届け出た出生届が受理されたときは、その届出に認知届の効力を認めています(最判昭和53年2月24日)。
成年の子の認知には子の承諾、胎児の認知には母の承諾が要り、死亡した子は直系卑属があるときに限り認知でき、その直系卑属が成年なら承諾が要ります
成年の子は、その承諾がなければ認知できません(782条)。成年年齢は18歳なので、18歳の子の認知にも子の承諾が要ります。未成年の子の認知には、子の承諾も母の承諾も要りません。父は胎内にある子も認知できますが、その場合は母の承諾が要り(783条1項)、「父が胎内に在る子を認知するには、母の承諾を得なければならない。」という肢(R4 問20 ア)は正しいです。判例は、母は胎児を代理して認知の訴えを提起できないとしています(大判明治32年1月12日)。父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り認知でき、その直系卑属が成年者であるときはその承諾を得なければなりません(783条3項)。直系卑属が未成年であれば承諾は要らず、「死亡した子Aに未成年の直系卑属Bがある場合において、Aを認知するには、Bの承諾を得る必要はない。」という肢(R4 問20 ウ)は正しいです。
- 成年の子(782条)子の承諾が要る
- 未成年の子子・母の承諾は要らない
- 胎児(783条1項)母の承諾が要る。母は胎児を代理して認知の訴えを提起できない
- 死亡した子(783条3項)直系卑属があるときに限る。直系卑属が成年なら承諾が要る
- 遺言による認知(781条2項)遺言の効力発生時に認知が成立し、出生時に遡る

遺言による認知も出生の時に遡って効力を生じ、父の死亡後も3年間は認知の訴えを提起できます
認知は遺言によってもでき(781条2項)、認知は出生の時に遡って効力を生じます(784条本文)。遺言執行者がする届出は報告的なもので、遺言による認知は届出の時からではなく、遺言の効力発生によって効力を生じます。子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は認知の訴えを提起でき、父又は母の死亡の日から3年を経過するまでは父の死亡後も提起できます(787条)。父の死亡後は検察官を被告とします。母が訴えを提起できるのは子の法定代理人としてなので、子が成年に達した後は母は提起できません。判例は、認知の判決が正当な当事者の間で確定している以上その判決は第三者に対しても効力を有し、第三者は再審で争うほかないとしています(最判昭和28年6月26日)。
認知の無効の訴えは、子・その法定代理人・認知をした者・子の母が7年以内に限って提起でき、知りながら認知した者も提起できます
令和4年の改正(令和6年4月施行)で、認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効の訴えは、子又はその法定代理人(認知を知った時から)、認知をした者(認知の時から)、子の母(認知を知った時から)が、それぞれ7年以内に限り提起できることになりました(786条1項)。子の母の訴えは、子の利益を害することが明らかなときは認められません。改正前の規定は「子その他の利害関係人」が期間の制限なく反対の事実を主張できるとしていましたが、現在は提訴権者が子又はその法定代理人・認知をした者・子の母に限られ、期間もあります(786条1項)。判例は、改正前の規定の下で、血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした者も、利害関係人として自らした認知の無効を主張できるとしており(最判平成26年1月14日)、現在は786条1項2号で認知をした者が提訴権者とされています。認知が無効とされても、子は認知をした者が支出した監護費用を償還しません(同条4項)。
認知された子は母の氏を称し、親権は母が行い、父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得します
嫡出でない子は母の氏を称します(790条2項)。認知されても子の氏は変わらず、父の氏を称するには家庭裁判所の許可を得て届け出る必要があります(791条1項)。父が認知した子の親権は母が行い、父母の協議で父母の双方又は父を親権者と定めることができます(819条4項)。認知しただけで父母が共同して親権を行うことにはならないので、「嫡出でない子を父が認知した場合には,その子に対する親権は,父母の間に婚姻関係がなくとも,父と母が共同して行う。」という肢(R3 問21 ア)は誤りです。認知した子の監護について必要な事項は、離婚の規定(766条)の準用により父母の協議で定め、調わなければ家庭裁判所が定めます(788条)。父が認知した子は、父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得します(789条1項。準正)。準正の後に婚姻が重婚を理由に取り消されても、取消しは将来に向かってのみ効力を生じるので(748条1項)、子は嫡出子の身分を失いません。父母が婚姻すれば、親権は父母が共同して行います。
民法 第780条(認知能力)
認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。
民法 第782条(成年の子の認知)
成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。
民法 第784条(認知の効力)
認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。
民法 第787条(認知の訴え)
子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 未成年者・未成年被後見人・成年被後見人の認知に法定代理人の同意は要らない(780条。R6 問4 エ ○、R4 問20 イ ×)
- 認知には条件を付けられず、認知をした者は認知を取り消せない(785条。R6 問5 エ ×)
- 胎児の認知には母の承諾が要り(783条1項。R4 問20 ア ○)、母は胎児を代理して認知の訴えを提起できない(大判明治32年1月12日)
- 死亡した子の認知は直系卑属があるときに限り、直系卑属が成年のときだけその承諾が要る(783条3項。R4 問20 ウ ○)
- 成年の子の認知には子の承諾が要る(782条)
- 認知の訴えは父の死亡後3年間は検察官を被告に提起でき、認知の無効の訴えは子・認知をした者・子の母などが7年以内に提起する(787条・786条)
- 認知しただけでは父母の共同親権にならず、母が親権を行う(819条4項。R3 問21 ア ×)

