司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

制限行為能力者の行為の効力(日用品・13条1項の行為・同意に代わる許可・代理権の付与)せいげんこういのうりょくしゃのこういのこうりょく

民法 第1章 民法の基礎と権利の主体 過去問で31肢

制限行為能力者の行為の効力とは、成年被後見人・被保佐人・被補助人がした法律行為をどのような場合に取り消すことができるかという規律のことで、成年被後見人の行為は日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き取り消すことができ(9条)、被保佐人・被補助人の行為は同意を要する行為を同意又はこれに代わる許可なくしたときに取り消すことができます(13条4項・17条4項)。

同じ判断能力の衰えた人の契約でも、毎日の食料品の買物まで後から取り消されるとしたら、店は売るのをためらい、本人がかえって暮らしにくくなります。民法は、成年被後見人の行為は原則として取り消せるが、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せないとし、被保佐人については借金や不動産の売買のような重要な行為だけに保佐人の同意を要求しています。被補助人については、家庭裁判所が選んだ一部の行為だけが同意の対象になります。

商店街の場面。左はスーパーのレジで、高齢の女性(札「成年被後見人」)が牛乳とパンを買っている。レジの上の札「日用品の購入」。右は不動産屋の店先で、同じ女性が土地の売買契約書に署名し、横に男性(札「成年後見人」)が「同意します」と書いた紙を持

成年被後見人の行為は、成年後見人の同意を得ていても取り消すことができますが、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せません

9条本文は、成年被後見人の法律行為は、取り消すことができると定めています。成年被後見人は事理を弁識する能力を欠く常況にあり、同意を与えてもそのとおりに行動できるとは限らないので、成年後見人の同意を得ていても取り消すことができます。「成年被後見人が成年後見人の同意を得てした不動産の取得を目的とする売買契約は、行為能力の制限を理由として取り消すことができない」という肢(R5 問4 ア)は誤りです。未成年者と違い、単に権利を得る行為を除く規定もないので、建物や土地の贈与を受けた場合も取り消すことができます。他方で、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せません(9条ただし書)。「成年被後見人の法律行為は,日用品の購入その他日常生活に関する行為である場合には,これを取り消すことができない」という肢(R2 問21 ア)は正しいです。本人に残る能力と自己決定を尊重し、日常の取引から締め出されないようにするためで、相手方が成年被後見人であることを知っていたかどうかは関係なく、電気料金の支払も取り消せません。9条ただし書は取消しを制限する規定にすぎず、成年後見人は日常生活に関する行為についても成年被後見人を代理することができます(859条1項)。

被保佐人は、13条1項に掲げる重要な行為をするときだけ保佐人の同意を要し、同意を得た行為は取り消せなくなります

13条1項は、元本の領収・利用、借財・保証、不動産その他重要な財産に関する権利の得喪、訴訟行為、贈与・和解・仲裁合意、相続の承認・放棄・遺産分割、新築・改築・増築・大修繕、602条の期間を超える賃貸借などを、保佐人の同意を要する行為として掲げています。家庭裁判所はこれ以外の行為にも同意を要する旨の審判ができます(13条2項本文)が、日用品の購入その他日常生活に関する行為は除かれます(同項ただし書)。「家庭裁判所は,被保佐人の請求により,被保佐人が日用品の購入をする場合にはその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる」という肢(R3 問4 オ)は誤りです。貸付金の弁済を受けるのは元本の領収に当たるので、同意なしにすれば取り消すことができます。訴えの提起は訴訟行為に当たり同意を要しますが、相手方が提起した訴えに応訴するには同意は要りません(民事訴訟法32条1項)。相手方が被保佐人を訴えられなくなるのを避けるためです。同意又はこれに代わる許可を得ないでした行為は取り消すことができ(13条4項)、反対に同意を得てした保証契約は取り消せません。保佐人は同意権を持つ者として取消権(120条1項)も、追認権も持ちます。また、同意は行為を有効に確定させるだけで、被保佐人に行為をする義務を負わせるものではないので、同意を得た後に保証契約の締結を取りやめることもできます。同意を得て締結した契約でも、要素に錯誤があれば錯誤による取消し(出題当時は無効)を主張することはできます。行為能力の制度と錯誤の制度は別の目的で表意者を守るからです。

  • 1号元本を領収し、又は利用すること(貸付金の弁済の受領)
  • 2号借財又は保証をすること
  • 3号不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
  • 4号訴訟行為(相手方の提起した訴えへの応訴は同意不要。民事訴訟法32条1項)
  • 5号〜7号贈与・和解・仲裁合意、相続の承認・放棄・遺産分割、贈与の申込みの拒絶・遺贈の放棄・負担付贈与の承諾
  • 8号〜10号新築・改築・増築・大修繕、602条の期間を超える賃貸借、以上の行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること

保佐人・補助人が本人の利益を害するおそれがないのに同意しないときは、家庭裁判所が同意に代わる許可を与えます

保佐人の同意を要する行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができます(13条3項)。補助人についても同じで、被補助人の請求により補助人の同意に代わる許可を与えることができます(17条3項)。保護者の不当な拒否で本人の行動が止められるのを防ぐためです。許可を得た行為は取り消せず、同意も許可も得ないでした行為は取り消すことができます(13条4項・17条4項)。

家庭裁判所の窓口の場面。中年の男性(札「被保佐人」)が「同意に代わる許可の申立書」を差し出している。窓口の外の離れた場所に別の男性(札「保佐人」)が腕を組んで「同意しない」と言っている。窓口の内側の先生が裁判官役(札「家庭裁判所」)で座り、

補助人に代理権を付与しても被補助人の行為能力は制限されず、被補助人は自らその行為をすることができます

家庭裁判所は、特定の法律行為について補助人に代理権を付与する審判をすることができます(876条の9第1項)。代理権の付与は補助人がその行為を本人に代わってできるようにするだけで、被補助人の行為能力を制限するものではないので、補助人に代理権を付与する審判があっても、被補助人はその法律行為を自らすることができます。保佐人に代理権を付与する場合(876条の4第1項)も同じです。保佐人は、この審判を受けて初めて代理権を持つので、「保佐人は、保佐開始の審判により、被保佐人の財産に関する法律行為について被保佐人を代表する」という肢(R5 問4 ウ)は誤りです。被補助人の行為を取り消せるのは、17条1項の審判で補助人の同意を要するとされた行為を同意なくした場合に限られます。「借財をすることについて補助人の同意を得なければならない旨の審判がない場合には、被補助人は、補助人の同意を得ることなく、借財をすることができる」という肢(R5 問4 オ)は正しいです。

取り消すことができるのは制限行為能力者側に限られ、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為も取り消せます

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができます(120条1項)。制限行為能力者を守るための取消しなので、相手方には取消権がありません。相手方を守る仕組みは、20条の催告と21条の詐術で、制限行為能力者の相手方の保護の語で扱います。行為能力の制限による取消しには、詐欺の取消しの96条3項のような第三者を保護する規定が無いので、取消し前に権利を得た善意の第三者にも取消しを対抗できます。「成年被後見人であるAがその所有する甲土地をBに売却してその旨の登記がされ,Bが,Aが成年被後見人であることを知らないCに甲土地を売却してその旨の登記がされた後,AがBとの間の売買契約を取り消したときは,Aは,Cに対し,甲土地の所有権のAへの復帰を対抗することができない」という肢(R2 問7 イ)は誤りです。制限行為能力者が代理人としてした行為は行為能力の制限によっては取り消すことができませんが、他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は取り消すことができます(102条)。法定代理では本人が代理人を選んでいないからです。成年被後見人が未成年者の法定代理人としてした行為は、成年被後見人の行為能力の制限を理由に取り消すことができます。

民法 第9条

(成年被後見人の法律行為)
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

民法13条3項・4項

保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

民法 第102条

(代理人の行為能力)
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

試験ではこう問われる

  1. 成年被後見人が成年後見人の同意を得てした不動産の売買契約も取り消せる(9条本文。R5 問4 ア ×)
  2. 成年被後見人がした日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せない(9条ただし書。R2 問21 ア ○)
  3. 被保佐人の日用品の購入について保佐人の同意を要する旨の審判はできない(13条2項ただし書。R3 問4 オ ×)
  4. 保佐人は保佐開始の審判だけでは代理権を持たず、代理権を付与する審判が要る(876条の4第1項。R5 問4 ウ ×)
  5. 借財について補助人の同意を要する旨の審判が無ければ、被補助人は同意なく借財ができる(17条1項。R5 問4 オ ○)
  6. 保佐人・補助人が本人の利益を害するおそれがないのに同意しないときは、本人の請求で家庭裁判所が同意に代わる許可を与える(13条3項・17条3項)
  7. 成年被後見人は、取消し前に登場した善意の第三者にも取消しによる所有権の復帰を対抗できる(R2 問7 イ ×)
  8. 成年被後見人が未成年者の法定代理人としてした行為は取り消せる(102条ただし書)

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

代理

代理人の行為能力(102条)

代理人の行為能力とは、代理人になるために行為能力が要るかという問題です。制限行為能力者も代理人になることができ、代...
民法の基礎と権利の主体

未成年者の行為能力(4条〜6条・成年年齢18歳)

未成年者とは、年齢18歳に達していない者のことで(4条)、未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意を得なければ...
民法の基礎と権利の主体

後見・保佐・補助の開始の審判(7条〜19条・任意後見との関係)

後見・保佐・補助の開始の審判とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者・著しく不十分である者・不...
民法の基礎と権利の主体

制限行為能力者の相手方の保護(20条の催告・21条の詐術)

制限行為能力者の相手方の保護とは、取り消されるかどうかわからない不安定な立場に置かれた相手方のために、追認するかど...
民法の基礎と権利の主体

身分行為と行為能力(婚姻・認知・遺言・縁組と制限行為能力者)

身分行為と行為能力とは、婚姻・離婚・認知・縁組・遺言のような身分上の行為には、財産上の行為を対象とする行為能力の制...
親族・相続

後見の機関(未成年後見人・成年後見人・後見監督人の選任と職務)

後見の機関とは、被後見人の財産を管理し代表する後見人(未成年後見人・成年後見人)と、後見人の事務を監督する後見監督...