親権者の決定・変更と親権の喪失・停止・辞任(818条〜819条・834条〜837条)しんけんしゃのけっていへんこうとしんけんのそうしつていしじにん
親権者の決定とは、誰が未成年の子の親権者になるかの定めで、父母の婚姻中は双方、子が養子なら養親(とその配偶者である父母)が親権者となり(818条)、離婚や認知の際は父母の協議又は裁判所が父母の双方又は一方を親権者と定め(819条1項〜5項)、家庭裁判所が子の利益のため親権者を変更し(同条6項)、親権の喪失・停止・管理権喪失の審判と辞任の許可をします(834条〜837条)。
未成年の子の親権は、父母が結婚している間は二人で持ちます。令和6年の改正(2026年4月施行)で、離婚した後も、父母の話合いや裁判所の判断で二人とも親権者のままにできるようになりました。暴力のおそれがあるときなど、子のためにならない場合は一人に決めます。一度決めた親権者は、父母の話合いだけでは変えられず、家庭裁判所の手続が必要です。親が子を虐待するようなときは、家庭裁判所が親権を奪ったり一時止めたりでき、親の側からもやむを得ない事情があれば許可を得て親権を辞められます。

父母の婚姻中は父母の双方が親権者となり、子が養子なら養親が親権者となり、一方が親権を行えないときは他方が行います
親権は成年に達しない子についてその子の利益のために行使し、父母の婚姻中はその双方が親権者となります(818条1項・2項)。子が養子のときは、養親(縁組が二以上あるときは直近の養親)と、その養親の配偶者である子の父母が親権者となります(同条3項)。普通養子は、養親の配偶者である父母を除き、実親の親権から離れて養親の親権に服し、縁組によって養親が親権者になるので、親権者の変更の手続は要りません。離婚して親権者となったBがFと婚姻し、FがCと養子縁組をした事例で、「BがFと婚姻して,FがCと養子縁組をした場合には,Cの親権者は,B及びFである。」という肢(R2 問20 エ)は正しいです。親権は父母が共同して行いますが、他の一方が親権を行うことができないときは一方が行うので(824条の2第1項2号)、父が長期間海外にいて事実上親権を行えないときは母が単独で親権を行い、一方が成年被後見人のときも、その成年後見人が代わって親権を行うのではありません。親権を行う者は、その親権に服する子に代わって、その子の子に親権を行います(833条)。成年年齢が18歳になったので、18歳の父母は自ら親権を行い、18歳の子の婚姻に父母の同意は要りません。
離婚の際は父母の協議又は裁判所が父母の双方又は一方を親権者と定め、子の利益を害するときは一方と定めなければなりません
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定め(819条1項)、裁判上の離婚の場合には、裁判所が父母の双方又は一方を親権者と定めます(同条2項)。裁判所は、子の利益のため父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮し、父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるときや、父母の一方が他方から暴力等を受けるおそれなどから共同して親権を行うことが困難なときは、一方を親権者と定めなければなりません(同条7項)。改正前の819条は離婚の際に「その一方を親権者と定めなければならない」としていたので、父母の合意によっても双方を親権者と定めることはできませんでした。令和6年の改正(2026年4月施行)で双方を親権者と定めることもできるようになり、改正前の規定を前提にした肢は結論が変わります。親権者の定めは父母の協議か家庭裁判所の審判によるので、子が15歳に達していても、子が自ら親権者を定めることはできません。
- 協議上の離婚(819条1項)父母の協議で双方又は一方
- 裁判上の離婚(819条2項)裁判所が双方又は一方
- 子の出生前の離婚(819条3項)母が行う。出生後に協議で双方又は父と定められる
- 父が認知した子(819条4項)母が行う。協議で双方又は父と定められる
- 協議が調わないとき(819条5項)家庭裁判所が父又は母の請求で審判
- 一方と定めなければならない場合(819条7項)子の心身への害悪のおそれ、暴力等で共同行使が困難なときなど

子の出生前に離婚したときと父が認知した子は母が親権を行い、出生後や認知後に協議で父母の双方又は父を親権者と定められます
子の出生前に父母が離婚した場合には親権は母が行い、子の出生後に父母の協議で父母の双方又は父を親権者と定めることができます(819条3項)。離婚の協議で出生後の親権者を定めなければならないのではなく、出生前の段階で家庭裁判所が定めるのでもありません。父が認知した子に対する親権も母が行い、父母の協議で父母の双方又は父を親権者と定めることができ(同条4項)、協議が調わなければ家庭裁判所が審判します(同条5項)。認知しただけで父母が共同して親権を行うことにはならないので、「嫡出でない子を父が認知した場合には,その子に対する親権は,父母の間に婚姻関係がなくとも,父と母が共同して行う。」という肢(R3 問21 ア)は誤りです。父母は認知した子について一方を親権者、他方を監護者と定めることもできます(788条・766条)。認知の後に父母が婚姻すれば、父母の婚姻中として双方が親権者となります(818条2項)。改正前は非嫡出子の親権は単独とされていましたが、現在は819条6項の親権者の変更の裁判で父母の双方を親権者と定めることもできます(同条7項)。
いったん定めた親権者は家庭裁判所でなければ変更できず、単独の親権者が死亡しても他方の親が当然に親権者にはなりません
子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって親権者を変更でき(819条6項)、協議で定めた親権者を変更するかは協議の経過やその後の事情の変更なども考慮して判断します(同条8項)。親権者でない親も子の親族として請求でき、子の祖父母も請求できるので、父の父母が親権者の変更を求める調停又は審判の申立てをすることはできないとする肢(R2 問20 ウ)は誤りです。変更は家庭裁判所に限られ、「離婚後に,AとBとの協議のみによって親権者をAに変更することはできない。」という肢(R2 問20 ア)は正しいです。親権者となった母が再婚し、再婚相手が子と養子縁組をした後は、子は養親とその配偶者である母の親権に服するので、虐待が疑われるときでも、実父が自分への親権者の変更を申し立てることができるとする肢(R2 問20 オ)は誤りです。離婚の際に親権者と定められた父母の一方が死亡しても、他方が当然に親権者になる規定はなく、未成年後見が開始します(838条1号)。生存する親は親権者変更の審判を求めることができますが、直ちに親権者となるのではありません。
親権喪失は子の利益を著しく害するとき、親権停止は2年以内で、子・親族・未成年後見人・検察官などが請求でき、親権の辞任には家庭裁判所の許可が要ります
家庭裁判所は、父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、親権喪失の審判をすることができます(834条)。親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、同じ者の請求により親権停止の審判ができ(834条の2第1項)、その期間は2年を超えない範囲内で定めます(同条2項)。検察官も請求権者なので、「父又は母による親権の行使が困難であることにより子の利益を害する場合には,検察官は,家庭裁判所に対し,その父又は母について親権停止の審判を請求することができる。」という肢(R3 問21 エ)は正しいです。親権停止の要件だけで親権喪失の審判をすることはできず、期間を定めずに親権停止の審判をすることもできません。子の祖父母も、子の親族として請求できます。管理権の行使が困難又は不適当で子の利益を害するときは管理権喪失の審判ができるので(835条)、「親権者による管理権の行使が不適当であることにより子の利益を害する場合に,家庭裁判所は,審判によって,その親権者について管理権のみを喪失させることはできない。」という肢(R3 問21 オ)は誤りです。親権停止で親権を行う者がいなくなれば後見が開始します(838条1号)。親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができます(837条1項)。
- 親権喪失(834条)虐待・悪意の遺棄など、子の利益を著しく害するとき。2年以内に原因消滅の見込みがあれば不可
- 親権停止(834条の2)子の利益を害するとき。2年を超えない範囲で期間を定める
- 管理権喪失(835条)管理権の行使が困難又は不適当で子の利益を害するとき
- 請求権者子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人、検察官
- 辞任・回復(837条)やむを得ない事由があれば家庭裁判所の許可を得て辞し、事由が消滅すれば許可を得て回復
民法 第819条第1項父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。
民法 第819条第2項裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。
民法 第819条第6項子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。
民法 第834条の2第2項家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。
試験ではこう問われる
- 子が養子なら、養親とその配偶者である父母が親権者となる(818条3項。R2 問20 エ ○)
- 離婚の際は協議又は裁判所が父母の双方又は一方を親権者と定め、子の利益を害するときは一方と定める(819条1項・2項・7項。令和6年改正)
- 父が認知しただけでは父母の共同親権にならず、母が親権を行う(819条4項。R3 問21 ア ×)
- 親権者の変更は家庭裁判所が子又はその親族の請求で行い、協議だけでは変更できない(819条6項。R2 問20 ア ○、R2 問20 ウ ×)
- 再婚相手が子と養子縁組をした後は、実父は自分への親権者の変更を申し立てられない(R2 問20 オ ×)
- 検察官も親権停止の審判を請求でき、親権停止は2年以内で、管理権だけを喪失させる審判もある(834条の2・835条。R3 問21 エ ○、R3 問21 オ ×)
- 単独の親権者が死亡しても他方は当然に親権者にならず未成年後見が開始し、親権の辞任には家庭裁判所の許可が要る(838条1号・837条)

