混同による抵当権抹消こんどうによるていとうけんまっしょう
抵当権者が抵当不動産の所有権を取得すると、抵当権は混同で消滅し、混同を登記原因として抹消します。同じ人が権利者と義務者を兼ねても登記識別情報が要る点と、第三者に移転した後の申請人が肢の軸です。
混同は、抵当権とその目的物の所有権が同じ人に帰属し、抵当権を存続させる意味がなくなって消滅することです。抵当権者が抵当不動産を買い受けた場合や設定者を相続した場合に起き、先例(昭和30年2月4日民事甲第226号)は登記原因を「混同」とする抹消登記を申請するとしています。ただし後順位の担保権者がいるときや、その抵当権が転抵当など第三者の権利の目的になっているときは消滅しません。抹消は所有者兼抵当権者が登記権利者兼登記義務者として申請します。肢では、登記識別情報の要否と、混同後に所有権が移ったときや抵当権者が死亡したときの申請人が問われます。
民法 第179条(混同)
同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
前二項の規定は、占有権については、適用しない。

権利者と義務者を兼ねても抵当権の登記識別情報は要ります
所有者兼抵当権者が一人で申請しても、抵当権の登記名義人としての立場では登記義務者です。抵当権の設定の登記が完了したときに通知された登記識別情報を提供しなければなりません。「当該抵当権が混同により消滅したため、当該抵当権の設定の登記の抹消の申請をするときは、当該抵当権の設定の登記が完了した際に通知された登記識別情報を提供することを要しない」という肢は誤りで、「申請人は、抵当権の設定の登記の際に通知された登記識別情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。
混同後に所有権が第三者へ移ると元抵当権者は単独で抹消できません
混同で抵当権が消えたのに抹消をしないまま、所有権が売買で第三者に移転した場合、元の抵当権者はもう所有者ではありません。抹消は現在の所有者を登記権利者、元の抵当権者を登記義務者とする共同申請になります。「当該抵当権の設定の登記の抹消がされない間にAからBへの売買を原因とする所有権の移転の登記がされた場合には、Aは、単独で混同を登記原因とする当該抵当権の設定の登記の抹消の申請をすることができる」という肢は誤りです。賃借権が混同で消えた後に所有権が移った場合も同じで、元賃借人の単独申請はできません。
抵当権者が死亡していれば相続人全員が登記義務者です
混同後、抹消をしないまま所有者兼抵当権者が死亡したときは、抵当権の登記名義人としての地位を相続人全員が承継します。混同を登記原因として抹消を申請するときは、相続人全員を登記義務者にしなければなりません。「混同を登記原因として当該抵当権の設定の登記の抹消を申請するときは、B及びCを登記義務者としなければならない」という肢は正しい肢です。相続人の一人だけを義務者にすることはできません。
後順位者や転抵当があるときは混同で消滅しません
後順位の抵当権がある不動産で先順位の抵当権者が所有権を取得しても、先順位抵当権は消滅しません。消えると後順位者が順位上昇の利益を不当に得るからです。その抵当権が転抵当など第三者の権利の目的になっているときも同じです。ただし抵当権者が債務者を相続して債務の全部を承継し、その債権が第三者の権利の目的になっていなければ、被担保債権が混同で消えるので後順位者がいても抵当権は付従性で消滅します。登記原因の日付は、抵当権者が所有権を取得した日です。
不動産登記法 第68条(登記の抹消)
権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の抹消につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
試験ではこう問われる
- 所有者兼抵当権者が抹消するとき抵当権の登記識別情報は要るか(要る)
- 混同後に所有権が第三者へ移ったとき元抵当権者は単独で抹消できるか(できない、現所有者と共同)
- 抵当権者死亡後の混同抹消で登記義務者は誰か(相続人全員)
- 後順位抵当権があるとき先順位抵当権は混同で消えるか(消えない)
- 混同による抹消の登記原因の日付はいつか(所有権を取得した日)
この用語が問われた肢
抵当権の登記名義人が当該抵当権の目的である不動産を取得し,当該抵当権が混同により消滅したため,当該抵当権の設定の登記の抹消の申請をするときは,当該抵当権の設定の登記が完了した際に通知された登記識別情報を提供することを要しない。
抵当権の設定の登記がされている不動産の所有権を当該抵当権の登記名義人が取得した場合において、混同を原因として当該抵当権の設定の登記の抹消を申請するときは、申請人は、抵当権の設定の登記の際に通知された登記識別情報を提供しなければならない。
Aを抵当権の登記名義人とする甲土地について、Aが甲土地の所有権を取得したことにより当該抵当権が混同により消滅した後、当該抵当権の設定の登記の抹消がされない間にAからBへの売買を原因とする所有権の移転の登記がされた場合には、Aは、単独で混同を登記原因とする当該抵当権の設定の登記の抹消の申請をすることができる。
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