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休眠担保権の抹消(70条)きゅうみんたんぽけんのまっしょう

不動産登記 第6章 変更・更正・抹消 過去問で7肢

抵当権者などの所在が知れないために共同申請ができないときに、除権決定、被担保債権の消滅の証明、弁済期から20年経過と全額供託のいずれかで登記権利者が単独で抹消する仕組みです。三つの経路の要件を入れ替えて問われます。

休眠担保権の抹消は、共同して抹消を申請すべき相手の所在が知れないために、登記権利者が単独で先取特権・質権・抵当権などの登記を抹消できる不動産登記法70条の仕組みです。明治や大正に設定されたまま残っている古い抵当権は、抵当権者やその相続人を探し出して協力を得ることが事実上できず、土地の処分を妨げていました。条文は、公示催告を経た除権決定による抹消、被担保債権が消滅したことを証する情報による抹消、弁済期から20年を経過した後に全額を供託する抹消の三つの経路を用意しています。令和5年4月1日施行の改正で、存続期間が満了した地上権などについて所在不明とみなす規定が2項に加わりました。肢では、三つの経路の要件と、どの権利に使えるかが入れ替えて問われます。

不動産登記法 第70条

(除権決定による登記の抹消等)
登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十九条に規定する公示催告の申立てをすることができる。
前項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。
前二項の場合において、非訟事件手続法第百六条第一項に規定する除権決定があったときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で第一項の登記の抹消を申請することができる。
第一項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から二十年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする。

蜘蛛の巣の張った古い鎖の掛かった家の持ち主が、供託の袋と決定書を持って一人で窓口に立ち、反対側の椅子は埃をかぶっている
休眠担保権は、除権決定、債権消滅の証明、弁済期から20年経過と全額供託のいずれかで単独で抹消できます
入口は相手の所在不明除権決定は全権利債権消滅の証明は担保権のみ弁済期から20年+全額供託

入口は相手の所在が知れないことで、どの経路でも共通です

70条の三つの経路はいずれも、共同して抹消を申請すべき者の所在が知れないため共同申請ができないことが入口の要件です。所在が知れないとは、登記記録上の住所に住んでおらず、相当な調査をしても居場所が分からない状態で、登記義務者が死亡していて相続人の所在が分からない場合も含まれます。所在が判明している相手が単に協力しないだけなら、判決による登記を使うべきで、この条文は使えません。登記実務では、所在が知れないことを、登記記録上の住所に宛てた郵便が届かなかったことを証する書面や、市町村長の証明などで疎明します。令和5年4月1日施行の2項は、地上権、永小作権、質権、賃借権、採石権の登記や買戻しの特約の登記を対象にします。登記された存続期間や買戻しの期間が満了しているときは、法務省令の方法で調査してもなお所在が判明しなければ所在が知れないものとみなされます。

除権決定を得れば、どの権利の登記でも単独で抹消できます

第一の経路は、登記権利者が非訟事件手続法の公示催告を申し立て、裁判所の除権決定を得て単独で抹消する方法です。公示催告は、登記義務者に対して一定の期間内に権利を届け出るよう公告する手続で、届出がなければ除権決定で登記上の権利が失われます。所在が知れないことだけで生きている権利を消す制度ではなく、申立てでは登記された権利が実体上消滅しているか存在しないことを疎明します。所在が知れないことだけで生きている権利を消す制度ではなく、申立てでは登記された権利が実体上消滅しているか存在しないことを疎明するのが前提です。除権決定の経路は担保権に限らず、地上権や賃借権など所在不明の名義人がいる権利に関する登記全般に使えます。除権決定があったときは、不動産登記法70条3項により、共同申請の原則にかかわらず登記権利者が単独で抹消を申請でき、除権決定があったことを証する情報を提供します。

被担保債権の消滅を証する情報があれば担保権を単独で抹消できます

第二の経路は、先取特権・質権・抵当権について、被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供して単独で抹消する方法です。不動産登記令の別表が定めるのは、債権証書と、被担保債権および最後の2年分の利息その他の定期金について完全な弁済があったことを証する情報です。消滅時効の完成を証する書面などで広く代えられる仕組みではありません。こちらは担保権に限った経路で、地上権や賃借権には使えません。所在不明が入口の要件なので、相手の所在が分かっていれば、弁済証書があっても共同申請か判決による登記になります。

弁済期から20年経過と全額の供託でも単独で抹消できます

第三の経路は、被担保債権の弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に全額を供託したときに単独で抹消する方法です。起算点は設定の日や登記の日ではなく弁済期で、弁済期が登記記録から分からないときは債権証書などの提出資料で判定し、それでも定まらない場合の基準は登記実務の扱いに従うことになるわけです。供託するのは元本だけではなく、被担保債権とその利息および債務不履行により生じた損害の全額で、供託書の正本が登記原因証明情報になります。供託の後に行うのは登記権利者による単独の申請で、供託書の正本に加えて弁済期を証する情報を提供します。供託の経路も先取特権・質権・抵当権に限られます。根抵当権は、元本確定日を弁済期とみなし、確定日が明らかでなければ設定日から3年を経過した日を確定日とみなす登記実務の扱いがあり、未確定というだけで使えないわけではありません。

解散した法人の担保権には30年の特則があります

担保権の登記名義人が法人で、既に解散していて清算人の所在も分からないときは、令和5年4月1日施行の不動産登記法70条の2が適用されます。被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、法人の解散の日から30年を経過していれば、供託をしなくても登記権利者が単独で抹消を申請できます。70条の供託による抹消は20年の経過と全額の供託が要るのに対し、70条の2は30年の経過で供託が要らない点が対照になります。改正前は、清算結了の登記がある法人の清算人が全員所在不明でも70条の供託による抹消は使えないとされていました。「不動産登記法第 70 条第 3 項後段の規定による当該抵当権の設定の登記の抹消の申請をすることはできない」という肢は改正前の出題で、正しい肢です。

不動産登記法 第70条の2

(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)
登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第二項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から三十年を経過し、かつ、その法人の解散の日から三十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

試験ではこう問われる

  1. 三つの経路の要件(除権決定/被担保債権の消滅の証明/弁済期から20年経過と全額供託)
  2. 共通の入口(相手の所在が知れないこと。協力しないだけなら判決による登記)
  3. 20年の起算点と供託の額(弁済期から。元本・利息・損害金の全額。根抵当権は元本確定日を弁済期とみなす扱い)
  4. 使える権利の範囲(除権決定は全般、他の二つは先取特権・質権・抵当権)
  5. 解散した法人の特則(70条の2。弁済期と解散から各30年。供託不要。令和5年4月1日施行)

この用語が問われた肢

R3 問21 エ正しい

抵当権の登記名義人である株式会社について清算結了の登記がされており,かつ,当該株式会社の清算人として登記されていた者全員の所在が不明である場合であっても,不動産登記法第 70 条第 3 項後段の規定による当該抵当権の設定の登記の抹消の申請をすることはできない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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