抵当権の抹消ていとうけんのまっしょう
弁済や解除で抵当権が消滅したときに、乙区の抵当権の登記を抹消する登記です。現在の所有権の登記名義人が権利者・抵当権者が義務者の共同申請で、利害関係人の承諾と前提登記の要否が肢の軸です。
抵当権の抹消は、被担保債権の弁済、抵当権の解除や放棄などで抵当権が消滅したときに、その登記を消す登記です。現在の所有権の登記名義人(設定後に所有権が移っていればその取得者)を登記権利者、抵当権者を登記義務者とする共同申請で、義務者はその名義を取得したときの登記識別情報を提供します。抹消される登記を目的とする転抵当や差押えの登記があれば、その名義人は登記上の利害関係を有する第三者で、承諾を証する情報が要ります。承諾があれば登記官がその第三者の登記も職権で抹消します。肢では、誰が申請できるか、承諾は誰の分が要るか、前提としてどんな登記が要るかが問われます。
不動産登記法 第68条(登記の抹消)
権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の抹消につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

後順位の抵当権者は申請人になれません
先順位の抵当権が弁済で消えても、後順位の抵当権者は当事者ではないので、所有者と共同して先順位抵当権の抹消を申請することはできません。「Aの抵当権が弁済により消滅したときは、Bは、甲不動産の所有権の登記名義人であるCと共同して、Aの抵当権の登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りです。抹消を申請できるのは、抹消で登記記録上直接利益を受ける設定者と、不利益を受ける抵当権者です。後順位者は順位が繰り上がる利益を得ますが、それは登記記録上の直接の利益ではありません。
転抵当権者や差押債権者の承諾が要ります
抹消される抵当権を目的とする転抵当権の登記や、その抵当権を目的とする差押えの登記があるときは、それらの名義人が登記上の利害関係を有する第三者です。承諾を証する情報または対抗できる裁判の謄本を提供しなければなりません。承諾があれば、転抵当権の登記は登記官が職権で抹消します。後順位の抵当権者は、先順位抵当権の抹消で不利益を受けないので利害関係人ではありません。承諾書の印鑑証明書に作成後3か月以内の制限はありません。
抵当権者の合併や設定者の死亡があれば前提の登記が要ります
抵当権者である会社が合併で消滅した後に抵当権が消えたときは、まず合併による抵当権の移転の登記をして存続会社を義務者にします。所有者が死亡した後に抵当権が消えたときは、まず相続人への所有権の移転の登記をして相続人を権利者にします。合併や死亡の前に抵当権が消えていたときは、存続会社や相続人が一般承継人として移転の登記を経ずに抹消を申請できます。支店長が作成した解除証書でも、会社の代表者が申請人になっていれば登記原因証明情報として使え、「支配人の登記がされていない株式会社A銀行の支店長Dが作成した解除証書を提供して、当該抵当権の抹消の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。
抵当権者の所在が知れないときは単独で抹消できる場合があります
抵当権者の所在が知れず共同申請ができないときは、公示催告と除権決定を得て所有者が単独で抹消を申請できます。さらに、被担保債権の弁済期から20年を経過し、その期間経過後に元本・利息・損害金の全額に相当する金銭を供託したことを証する情報を提供すれば、除権決定なしでも単独申請ができます。利息や損害金を除いて元本だけ供託したのでは足りず、「被担保債権の元本の全額に相当する金銭が供託されたことを証する情報を提供して、単独で当該抵当権の登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りです。
登録免許税は不動産1個につき1,000円です
抵当権の抹消の登記の登録免許税は、債権額ではなく不動産の個数を課税標準にし、不動産1個につき1,000円です。同じ申請で20個を超える不動産を抹消するときは2万円が上限です。「抵当権の抹消の登記の登録免許税は、債権金額を課税標準として算出する」という肢は誤りです。
不動産登記法 第70条(除権決定による登記の抹消等)
登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十九条に規定する公示催告の申立てをすることができる。
前項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。
前二項の場合において、非訟事件手続法第百六条第一項に規定する除権決定があったときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で第一項の登記の抹消を申請することができる。
第一項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から二十年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする。
試験ではこう問われる
- 後順位抵当権者は先順位抵当権の抹消を申請できるか(できない)
- 転抵当権者や差押債権者の承諾は要るか(要る。後順位抵当権者は不要)
- 抵当権者の合併の後に抵当権が消えたとき何が前提になるか(合併による移転の登記。合併前の消滅なら不要)
- 所在不明の抵当権者の抵当権を供託で単独抹消するとき何を供託するか(元本・利息・損害金の全額)
- 抹消の登録免許税はどう決まるか(不動産の個数を課税標準に1個につき1,000円。20個超は2万円)
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