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登記名義人の合併・会社分割による移転とうきめいぎにんのがっぺいかいしゃぶんかつによるいてん

不動産登記 第6章 変更・更正・抹消 過去問で25肢

登記名義人である法人が合併で消滅したり会社分割で権利を承継させたりしたときに、承継した法人へ権利を移す登記です。合併は単独申請で会社分割は共同申請という違いと、登記原因証明情報の違いが肢で突かれます。

合併・会社分割による移転は、所有権や抵当権の登記名義人である法人が合併で消滅したり、会社分割で権利を承継させたりしたときの登記です。承継した存続会社や承継会社を新しい登記名義人にする権利の移転の登記として申請し、合併は包括承継なので、不動産登記法63条2項により相続と同じく登記権利者が単独で申請できます。会社分割は分割契約や分割計画で承継する権利を選ぶ性質があるので、原則どおり承継会社を登記権利者、分割会社を登記義務者とする共同申請です。登記原因は「年月日合併」「年月日会社分割」で、日付は合併や分割の効力が生じた日です。肢では申請人、登記原因証明情報、根抵当権の特則が突かれます。

不動産登記法 第63条第2項

相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。

二つの会社の看板が一つに重なり、社員が一人で窓口に立つ横で、隣の窓口では二社の社員が契約書を一緒に出す
合併による移転は存続会社の単独申請、会社分割による移転は分割契約書を添えた共同申請です
合併は単独・会社分割は共同合併は存続会社の登記事項証明書会社分割は分割契約書確定前根抵当権は当然に一部移転

合併は存続会社が単独で申請します

合併による権利の移転の登記は、存続会社や新設会社が登記権利者として単独で申請し、消滅会社の登記識別情報や印鑑証明書は要りません。登記原因証明情報は合併の事実が分かる登記事項証明書で、消滅会社ではなく合併の記載がある存続会社のものを提供します。「登記原因証明情報として、合併の記載のあるAの登記事項証明書を提供しなければならない」という肢は誤りです。存続会社の会社法人等番号を申請情報の内容にすれば、登記官が商業登記の情報を確認できるので、登記事項証明書の提供を省略できます。合併による移転の登記で存続会社は新たに登記名義人になるので登記識別情報が通知され、直後に抹消が連件で続く場合でも同じです。「B株式会社に対して登記識別情報は通知されない」という肢は誤りで、通知されます。

会社分割は共同申請で、分割契約書が登記原因証明情報です

会社分割による移転の登記は承継会社と分割会社の共同申請で、分割会社の登記識別情報を提供します。「当該抵当権の設定の登記の際に通知された登記識別情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。登記原因証明情報は、どの権利を承継させるかを定めた分割契約書や分割計画書で、会社分割の記載がある承継会社の登記事項証明書だけでは足りません。「会社分割の記載があるB社の登記事項証明書を提供すれば,分割契約書を提供することを要しない」という肢は誤りです。元本が確定した根抵当権でも同じで、「登記原因証明情報として,当該会社分割の記載のあるB株式会社の登記事項証明書を提供すれば足りる」という肢は誤りです。

確定前の根抵当権は会社分割で当然に一部移転します

元本の確定前に根抵当権者を分割会社とする会社分割があったときは、民法398条の10により一部移転が法律上当然に生じます。分割会社と承継会社が根抵当権を準共有する形なので登記原因証明情報は会社分割の事実が分かる登記事項証明書で足り、「登記原因証明情報として当該会社分割の分割契約書を提供することを要する」という肢は誤りです。承継会社だけを根抵当権者とする移転の登記は会社分割では直接できず、「根抵当権者をB株式会社のみとする根抵当権の移転の登記を申請することができる」という肢も誤りになります。一部移転に根抵当権設定者の承諾は要りません。したがって「Aの承諾を証する情報又はAに対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供することを要しない」という肢は正しい肢です。設定者は会社分割を理由に元本の確定を請求できますが、確定の登記は共同申請ですから、「根抵当権設定者は元本の確定を請求したことを証する書面を添付して,単独で元本確定の登記を申請することができる」という肢は誤りです。

抹消の前提として合併による移転の登記が要ります

抵当権や賃借権の登記名義人である会社が吸収合併された後にその権利が消滅したときは、消滅会社を義務者にはできないので、抹消の前提として合併による移転の登記を申請します。「その前提として,合併を原因とする乙区 1 番賃借権の移転の登記の申請をしなければならない」という肢は正しい肢です。合併の前に弁済などで権利が消滅していたときは、移転すべき権利が合併の時点で既になかったので、合併による移転の登記を経ずに、存続会社が消滅会社の一般承継人として抹消を申請します。前提の移転の登記が要るのは、合併の後に生じた原因で抹消する場合です。債務者の側の合併や会社分割は変更登記の問題で、普通抵当権では承継会社が被担保債務を承継しないと定めたときは変更の登記自体が要りません。元本確定前の根抵当権の債務者については、分割契約の定めにかかわらず分割会社と承継会社の両方が債務者になるので、債務者の変更の登記が要ります。

民法 第398条の10

(根抵当権者又は債務者の会社分割)
元本の確定前に根抵当権者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。
元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。
前条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合について準用する。

試験ではこう問われる

  1. 合併と会社分割の申請人(合併は単独、会社分割は共同)
  2. 登記原因証明情報(合併は存続会社の登記事項証明書か会社法人等番号、会社分割は分割契約書)
  3. 確定前の根抵当権の会社分割(当然に一部移転。分割契約書・設定者の承諾は不要。承継会社のみへの移転は不可)
  4. 抹消の前提(合併後に生じた原因による抹消は先に合併による移転の登記。合併前に消滅した権利は存続会社が一般承継人として抹消)
  5. 登記識別情報の通知(合併で名義人になる存続会社に通知される)

この用語が問われた肢

R6 問19 イ誤り

甲土地の所有権の登記名義人である株式会社Aを吸収合併消滅会社とし、株式会社Bを吸収合併存続会社とする吸収合併がされた場合において、甲土地について合併を原因とする所有権の移転の登記の申請をするときは、登記原因証明情報として、合併の記載のあるAの登記事項証明書を提供しなければならない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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