抵当権の設定と抵当権者の変更(法人の合併)ていとうけんのせっていとていとうけんしゃのへんこう
抵当権者である法人が合併で消滅したとき、存続会社や新設会社への抵当権の移転を単独で登記する仕組みです。会社分割による移転が共同申請で登記識別情報が要る点との対比と、合併後に消滅した抵当権の抹消の前提として移転の登記が要る点が肢の軸です。
抵当権者の変更(法人の合併)は、抵当権の登記名義人である会社が吸収合併や新設合併で消滅し、存続会社または新設会社が抵当権を包括承継した場面の登記です。合併は相続と同じ一般承継なので、権利の移転の登記は登記権利者が単独で申請でき、消滅会社の登記識別情報は要りません。抵当権を抹消したいときも、消滅会社の名義のまま抹消することはできず、先に合併による移転の登記をします。会社分割は特定承継として扱われ、共同申請で登記識別情報が要る点が対比されます。肢では、申請人と添付情報、抹消の前提、根抵当権での確定請求が問われます。
不動産登記法 第63条第2項相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。

合併による移転は存続会社が単独で申請します
法人の合併による権利の移転の登記は、相続による移転と同じく登記権利者が単独で申請できます。登記の目的は「○番抵当権移転」、原因は「年月日合併」で、日付は合併の効力発生日です。登記原因証明情報は合併の記載がある存続会社の登記事項証明書で、会社法人等番号を提供すれば添付を省略できます。単独申請なので消滅会社の登記識別情報や印鑑証明書は要りません。登録免許税は債権額の1000分の1です。
抹消の前提として合併による移転の登記が要ります
消滅会社を登記名義人とする抵当権が合併の後に弁済で消滅したときは、抵当権がいったん存続会社に移っているので、消滅会社の名義のまま抹消の登記を申請することはできません。存続会社への合併による移転の登記をしてから、存続会社を登記義務者として抹消を申請します。合併の前に既に消滅していた抵当権なら、移転の登記を経ずに存続会社が抹消を申請できます。「当該A株式会社を消滅会社、B株式会社を存続会社とする吸収合併がされ、その後に、弁済により当該抵当権が消滅した。この場合において、当該抵当権の登記の抹消を申請するときは、その前提として、当該合併を登記原因とするA株式会社からB株式会社への抵当権の移転の登記を申請しなければならない」という肢は正しい肢です。移転と抹消を連件で申請しても、移転の登記が完了すれば存続会社は登記名義人になるので登記識別情報が通知されます。「合併を登記原因とする抵当権の移転の登記の申請と、弁済を登記原因とする当該抵当権の抹消の登記の申請とが連件でされた場合には、B株式会社に対して登記識別情報は通知されない」という肢は誤りです。
会社分割による移転は共同申請で登記識別情報が要ります
会社分割で抵当権が承継会社に移る場合、登記実務では分割会社と承継会社の共同申請として扱われます。したがって分割会社の登記識別情報を提供しなければなりません。「A社を抵当権者とする抵当権について、会社分割を登記原因とするB社への抵当権の移転の登記を申請するときは、当該抵当権の設定の登記の際に通知された登記識別情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。登記原因証明情報には、会社分割の記載のある承継会社の登記事項証明書に加えて分割契約書が要り、「登記原因証明情報として,会社分割の記載があるB社の登記事項証明書を提供すれば,分割契約書を提供することを要しない」という肢は誤りです。確定前の根抵当権者の会社分割では根抵当権が法律上当然に分割会社と承継会社の共有になるので、分割契約書も設定者の承諾を証する情報も要りません。「株式会社B銀行を分割会社とする会社分割があったことを原因とする根抵当権の一部移転の登記を申請する場合には、Aの承諾を証する情報又はAに対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供することを要しない」という肢は正しい肢です。
確定前の根抵当権者の合併では設定者が確定請求できます
元本の確定前に根抵当権者について合併があると、根抵当権は合併の時に存する債権のほか、存続会社や新設会社が合併後に取得する債権も担保します。取引相手が変わることを望まない設定者は、担保すべき元本の確定を請求でき、請求があれば元本は合併の時に確定したものとみなされます。請求は設定者が合併を知った日から2週間、合併の日から1か月を過ぎるとできません。債務者について合併があった場合も同じですが、債務者が設定者を兼ねているときは請求できません。
民法 第398条の9(根抵当権者又は債務者の合併)
元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。
元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保する。
前二項の場合には、根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、前項の場合において、その債務者が根抵当権設定者であるときは、この限りでない。
前項の規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす。
第三項の規定による請求は、根抵当権設定者が合併のあったことを知った日から二週間を経過したときは、することができない。合併の日から一箇月を経過したときも、同様とする。
試験ではこう問われる
- 合併による抵当権の移転の登記は誰が申請するか(存続会社が単独)
- 合併による移転で登記識別情報や印鑑証明書は要るか(要らない)
- 合併後に弁済で消滅した消滅会社名義の抵当権を抹消するには何が先か(合併による移転の登記)
- 会社分割による抵当権の移転は単独申請か(共同申請。登記識別情報が要る)
- 確定前の根抵当権者の合併で設定者は何ができるか(確定請求。知った日から2週間・合併から1か月)
この用語が問われた肢
乙区 1 番の根抵当権について、元本の確定前に株式会社B銀行を分割会社とする会社分割があったことを原因とする根抵当権の一部移転の登記を申請する場合には、Aの承諾を証する情報又はAに対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供することを要しない。
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