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賃借権の登記ちんしゃくけんのとうき

不動産登記 第8章 用益権・その他の権利 過去問で27肢

賃貸借契約に基づいて不動産を使用収益する権利を乙区に公示し、民法605条の対抗力を与える登記です。賃貸人の立場による制約、存続期間の上限、混同や敷地権との関係が肢で突かれます。

賃借権の登記は、賃貸借契約に基づいて不動産を使用収益する債権を乙区に公示し、民法605条の対抗力を与える登記です。賃貸人である所有権の登記名義人を登記義務者、賃借人を登記権利者とする共同申請で、賃貸人に登記に協力する義務はないので特約がなければ任意です。登記事項は不動産登記法81条が定め、賃料は必ず書き、存続期間・譲渡転貸を許す定め・敷金・借地借家法の定めなどは定めがあれば書きます。肢で突かれるのは、賃貸人の立場による制約、存続期間の上限、混同や敷地権との関係です。

不動産登記法 第81条

(賃借権の登記等の登記事項)
賃借権の登記又は賃借物の転貸の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 賃料
二 存続期間又は賃料の支払時期の定めがあるときは、その定め
三 賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を許す旨の定めがあるときは、その定め
四 敷金があるときは、その旨
五 賃貸人が財産の処分につき行為能力の制限を受けた者又は財産の処分の権限を有しない者であるときは、その旨
六 土地の賃借権設定の目的が建物の所有であるときは、その旨
七 前号に規定する場合において建物が借地借家法第二十三条第一項又は第二項に規定する建物であるときは、その旨
八 借地借家法第二十二条第一項前段、第二十三条第一項、第三十八条第一項前段若しくは第三十九条第一項、高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成十三年法律第二十六号)第五十二条第一項又は大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法第七条第一項の定めがあるときは、その定め

アパートの一室の鍵を受け取る借主と鍵を渡す大家、横で登記簿に書き込む登記所の職員
賃借権の登記は賃貸人と賃借人の共同申請で、賃料は必ず登記します
賃料は必要的存続期間は50年が上限処分権限のない賃貸人はその旨を登記

処分の権限がない賃貸人は、その旨を登記し期間も短期に限られます

不在者の財産管理人や相続財産清算人のように処分の権限を持たない者が賃貸人になるときは、その旨が登記事項です。「賃貸人が財産の処分の権限を有しない者である旨として「管理人Bの設定した賃借権」を申請情報の内容としなければならない」という肢は正しい肢です。処分の権限がない者の賃貸借は民法602条の短期賃貸借に限られ、建物以外の工作物の所有を目的とする土地の賃貸借は5年を超えられません。10年とする契約には家庭裁判所の許可が要るので、「家庭裁判所の許可があったことを証する情報の提供を要しない」という肢は誤りです。

存続期間は民法上50年が上限で、不確定な期日も定められます

民法604条は賃貸借の存続期間の上限を50年とし、令和2年4月1日の施行前は20年でした。「地目が畑である土地の賃借権について,存続期間を 70 年とする賃借権の設定の登記を申請することができる」という肢は誤りで、民法604条が適用される賃貸借は上限を超えて登記できません。建物所有を目的とする土地の賃借権や建物の賃貸借には借地借家法の特則があり、50年を超える一般定期借地権も設定できます。コンテナの集配と一時保管のための30年の賃借権を誤りとした肢は、出題当時の上限が20年だったためで、今の上限なら登記できます。期間を日付や年数ではなく不確定な期日で定めることもでき、「存続期間を「Aが死亡するまで」とする賃借権の設定の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。

所有者は自分の土地の賃借人になれず、混同の抹消も相手が要ります

土地の所有者が第三者と共に自分の土地の賃借人になる賃借権は登記できません。「A及びBが共同して当該賃借権の設定の登記を申請することはできない」という肢は正しい肢です。賃借人が所有権を取得すると賃借権は混同で消え、抹消は所有者が単独でできますが、抹消しないまま土地を売ると状況が変わります。「Aは,単独で混同を登記原因とする賃借権の登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りで、現在の所有者Bを登記権利者とする共同申請になります。賃借権の一部だけを所有者に譲渡しても、残りの持分が第三者にある間は混同が起きません。「Aは,当該賃借権について混同を登記原因とする賃借権の登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りです。

敷地権付き区分建物でも建物だけの賃借権は登記できます

敷地権付き区分建物に対する所有権や担保権の登記は土地にも及びますが、賃借権は不動産登記法73条の対象外で、建物だけを目的に登記します。「当該敷地権が生じた日より後の日付を登記原因の日付とする賃借権の設定の登記を申請することはできない」という肢は誤りです。建物のみに関する旨の付記は所有権と担保権の登記に付けるものなので、「賃借権に関する登記には、建物のみに関する旨の付記登記がされる」という肢も誤りです。逆に敷地権が土地の賃借権であるときは、区分建物の売買で敷地の賃借権も移るので、譲渡を許す定めがなければ賃貸人の承諾を証する情報が要ります。

差押えや仮登記との関係では賃借権は後れる登記として扱われます

強制競売の差押えの登記に後れる賃借権は、買受人の代金納付で効力を失い、裁判所書記官が抹消を嘱託します。「裁判所書記官は,買受人への所有権の移転の登記及び当該差押えの登記の抹消のほか,当該賃借権の登記の抹消を嘱託しなければならない」という肢は正しい肢です。抵当権の設定の仮登記に基づく本登記では、後れる賃借権者の承諾は要りません。承諾が要るのは所有権に関する仮登記の本登記に限られるので、「Cの承諾を証する情報を提供しなければならない」という肢は誤りです。

民法 第605条

(不動産賃貸借の対抗力)
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

試験ではこう問われる

  1. 処分の権限がない賃貸人の賃借権で申請情報に書くべきことは何か(その旨。期間は短期賃貸借の範囲)
  2. 畑の賃借権で存続期間70年を登記できるか(できない。民法604条の上限は50年)
  3. 混同で消えた賃借権を第三者への売却後に単独で抹消できるか(できない)
  4. 敷地権付き区分建物の建物だけを目的とする賃借権を登記できるか(できる。建物のみの付記はされない)
  5. 抵当権の仮登記の本登記に後れる賃借権者の承諾は要るか(要らない)

この用語が問われた肢

R2 問20 オ誤り

地目が畑である土地の賃借権について,存続期間を 70 年とする賃借権の設定の登記を申請することができる。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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