賃借権の登記事項(賃料・敷金・譲渡転貸の許否)ちんしゃくけんのとうきじこう
不動産登記法81条が定める賃借権と転貸の登記に固有の事項で、賃料は必ず書き、ほかは定めがあるときに書きます。どの定めを申請情報の内容にできるか、賃料の変更で誰が利害関係人になるかが肢で突かれます。
賃借権の登記事項は、不動産登記法81条が定める賃借権と転貸の登記に固有の事項です。賃料は必ず書き、存続期間と支払時期、譲渡や転貸を許す定め、敷金、賃貸人が処分の権限を持たない旨、建物所有の目的、借地借家法の定めは、定めがあるときに書きます。賃料は金銭に限られず、定め方の自由度が高い一方で、不動産ごとに定めなければなりません。肢で突かれるのは、どの定めを申請情報の内容にできるか、賃料の変更で誰が利害関係人になるかです。
不動産登記法 第81条第1項賃借権の登記又は賃借物の転貸の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 賃料
二 存続期間又は賃料の支払時期の定めがあるときは、その定め
三 賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を許す旨の定めがあるときは、その定め
四 敷金があるときは、その旨
五 賃貸人が財産の処分につき行為能力の制限を受けた者又は財産の処分の権限を有しない者であるときは、その旨
六 土地の賃借権設定の目的が建物の所有であるときは、その旨
七 前号に規定する場合において建物が借地借家法第二十三条第一項又は第二項に規定する建物であるときは、その旨
八 借地借家法第二十二条第一項前段、第二十三条第一項、第三十八条第一項前段若しくは第三十九条第一項、高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成十三年法律第二十六号)第五十二条第一項又は大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法第七条第一項の定めがあるときは、その定め

賃料は必ず書き、金銭以外や算定方法による定めもできます
賃料は賃借権の要素なので申請情報に必ず書き、「賃料 1月金5万円」のように期間と金額で表します。金額だけで期間の単位を落とした記載は補正の対象になります。金銭以外の定めもでき、「賃料の定めを,「乙土地を使用収益する」とすることができる」という肢は正しい肢です。固定資産税評価額に一定率を掛ける算定方法でも登記でき、「賃料の月額が「固定資産税評価額に1000分の 3 を乗じた額」と定められているときは、その旨を申請情報の内容とすることができる」という肢は正しい肢です。他方で賃料は不動産ごとに定めるので、「「甲土地,乙土地合計金何円」として 2 筆を合わせて定めた賃料を申請情報の内容とすることができる」という肢は誤りです。
支払時期・前払・敷金の定めも登記できます
賃料の支払時期の定めは存続期間と並ぶ登記事項で、一定の時期に前払をする定めも支払時期の定めとして登記できます。「その旨を申請情報の内容とすることはできない」という肢は誤りで、前払の定めは転借人が賃貸人に対抗できる範囲にも関わるので公示する意味があります。敷金があるときはその旨が登記事項で、「賃貸借契約に敷金が定められているときであっても、その旨を申請情報の内容とすることはできない」という肢は誤りです。支払時期は「毎月末日」のように、前払の定めは「毎年1月に1年分を前払する」のような形で記載します。支払時期も敷金も任意の事項なので、定めがなければ申請情報に書かなくても補正の対象にはなりません。
譲渡や転貸を許す定めは、承諾の要否と差押えの可否を左右します
賃借権の譲渡や賃借物の転貸を許す旨の定めがあれば、譲渡や転貸の登記に賃貸人の承諾を証する情報は要りません。定めがあれば賃借権は賃借人が自由に処分できる財産なので、「国は,当該賃借権を目的として滞納処分による差押えの登記を嘱託することができる」という肢は正しい肢です。賃借権を目的とする質権の設定にも賃貸人の承諾は要らず、「賃貸人の承諾を証する情報を提供することを要する」という肢は誤りです。定めがないときは、民法612条により承諾がなければ譲渡や転貸ができないので、承諾書と印鑑証明書を添えます。承諾書の印鑑証明書には作成後3か月の制限はありません。
賃料の減額と増額で利害関係人が変わります
賃料を減らす変更では、賃借権に優先する同意をした先順位抵当権者が登記上の利害関係人に当たり、「Cは,登記上の利害関係を有する第三者に該当しない」という肢は誤りです。「当該先順位抵当権者は、当該賃借権の変更の登記についての登記上の利害関係を有する第三者に当たる」という肢は正しい肢です。賃料を増やす変更では後順位の抵当権者に不利益がなく、「Bの承諾を証する情報の提供を要する」という肢も誤りになります。利害関係人がいないか承諾がある変更は付記登記、承諾がない変更は主登記です。減額の変更で承諾がなくても主登記になるだけで、申請が却下されるわけではありません。
民法 第604条(賃貸借の存続期間)
賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。
試験ではこう問われる
- 賃料を「乙土地を使用収益する」や固定資産税評価額の一定率と定めて登記できるか(できる)
- 2筆を合わせた賃料を申請情報にできるか(できない)
- 賃料の前払の定めと敷金は登記事項か(どちらも登記できる)
- 譲渡転貸を許す定めがある賃借権の差押えや質権設定に賃貸人の承諾は要るか(要らない)
- 賃料の減額と増額で承諾が要る利害関係人は誰か(減額は優先する同意をした抵当権者。増額なら後順位抵当権者は該当しない)
この用語が問われた肢
建物の賃借権の設定の登記を申請する場合において、賃貸借契約に賃料の月額が「固定資産税評価額に1000分の 3 を乗じた額」と定められているときは、その旨を申請情報の内容とすることができる。
賃借権の設定の登記を申請する場合において、賃貸借契約に一定の時期に賃料の前払をする旨が定められているときであっても、その旨を申請情報の内容とすることはできない。
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