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差押え・仮差押えの登記さしおさえかりさしおさえのとうき

不動産登記 第9章 仮登記と処分制限 過去問で18肢

強制競売や担保不動産競売の開始決定、仮差押命令、滞納処分による差押えを公示するために、裁判所書記官や税務署長の嘱託でされる処分制限の登記です。嘱託の前提、目的にできる権利、抹消のされ方が肢で突かれます。

差押え・仮差押えの登記は、強制競売や担保不動産競売の開始決定、仮差押命令、滞納処分による差押えがあったことを公示するために、裁判所書記官や税務署長の嘱託でされる処分制限の登記です。登記の後も債務者は不動産を処分できますが、その処分は差押債権者に対抗できず、売却されれば効力を失います。所有権の登記がない不動産に処分制限の登記を嘱託するときは、登記官が職権で所有権の保存の登記をするのが不動産登記法76条2項です。肢では、嘱託の前提となる相続登記、差し押さえられる権利の範囲、差押えの登記がどう消えるかが突かれます。

民事執行法 第48条第1項

強制競売の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、直ちに、その開始決定に係る差押えの登記を嘱託しなければならない。

裁判所の職員が登記所に封書を届け、職員が帳簿の家の行に錠前の印を押している。家の持ち主は困った顔で、債権者が腕を組んで待っている
差押え・仮差押えの登記は裁判所書記官や税務署長の嘱託でされ、後の処分は差押債権者に対抗できません
嘱託でされる後の抵当権設定も登記できる職権では抹消されない代位嘱託の相続登記に登記識別情報は通知されない

差押えの登記は嘱託でされ、後の処分も登記はできます

強制競売の開始決定がされると、裁判所書記官が直ちに差押えの登記を嘱託します。差押えの効力は開始決定の送達か登記の早い方で生じ、以後の処分は差押債権者に対抗できません。対抗できないだけで登記自体は受理されるので、差押えの登記の後でも抵当権の設定の登記は申請できます。「当該抵当権の設定の登記を申請する前に,甲土地に対しCを債権者とする強制競売による差押えの登記がされていたときであっても,当該抵当権の設定の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。

仮登記の請求権や賃借権も差押えの目的になります

差し押さえられるのは所有権だけではなく、換価できる権利であれば仮登記で保全された請求権や譲渡できる賃借権も目的になります。「当該所有権移転請求権について,滞納処分による差押えの登記の嘱託をすることはできない」という肢は誤りです。「Bを賃借権者とする賃借権の設定の登記に賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を許す旨の定めがあるときは,国は,当該賃借権を目的として滞納処分による差押えの登記を嘱託することができる」という肢は正しい肢です。敷地権が生じる前に土地だけに設定された根抵当権を実行するときは、土地だけを目的とする差押えの登記ができ、「乙土地のみを目的として,乙土地の順位2番の根抵当権の実行として,平成28 年4月28 日○○地方裁判所担保不動産競売開始決定を登記原因及びその日付とする差押えの登記をすることはできない」という肢は誤りです。

差押えの登記は職権では消えず、嘱託か申請で消します

公売や競売で所有権が移った後の差押えの登記の抹消は、登記官の職権ではなく嘱託でされます。差押えの登記が職権で消えるのは、所有権の仮登記の本登記で承諾を得た場合や、差し押さえられた買戻権の登記が抹消される場合のように、法令が定める場面に限られます。「当該公売処分による所有権の移転の登記がされた場合には,当該差押えの後に登記された抵当権の設定の登記は,登記官の職権により,抹消される」という肢は誤りです。買戻権の行使による所有権の移転の登記がされても、後れる差押えの登記は職権では抹消されません。「当該買戻特約の登記の後にされた滞納処分に関する差押えの登記は,登記官の職権により,抹消される」という肢も誤りです。買戻権そのものが差し押さえられている場合に買戻期間が満了したときは、差押債権者の承諾を証する情報を提供して買戻しの特約の登記を抹消でき、「当該差押えの登記に係る差押債権者の承諾を証する情報を提供して当該買戻しの特約の登記の抹消を申請することができる」という肢は正しい肢です。

代位による相続登記の嘱託では登記識別情報は通知されません

債務者が死亡していれば、差押えの登記の前提として債権者が相続人に代位して相続登記を申請するか、官庁なら嘱託します。代位でされた登記では登記名義人自身が申請していないので、登記識別情報は通知されず、登記が完了した旨の通知だけがされます。「登記官は,被代位者である当該相続人に対し,登記識別情報を通知しなければならない」という肢は誤りで、「当該登記が完了した旨を通知しなければならない」という肢は正しい肢です。仮差押命令の決定書の正本は代位原因を証する情報になり、「Aは,当該仮差押命令の決定書の正本を提供することにより,Bに代位して,単独で当該所有権の移転の登記の申請をすることができる」という肢は正しい肢です。代位でされた相続登記を抹消するときは、登記実務では代位債権者も登記上の利害関係人と扱われ、仮差押債権者の承諾だけでは足りません。「登記上の利害関係を有する第三者の承諾を証する情報として,Eの承諾を証する情報を提供すれば足りる」という肢は誤りです。

仮差押債権者の住所の変更は債権者が申請できます

仮差押えの登記は民事保全法47条3項により裁判所書記官が嘱託しますが、仮差押債権者の住所に変更があったときの変更の登記は、債権者が自分で申請できます。「当該仮差押えが本執行に移行してされる強制競売の申立てがされる前に仮差押債権者であるAの住所の変更があった場合には,Aは,当該不動産の仮差押債権者の住所の変更の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。共有者の一人の持分に差押えの登記があるときは、共有者全員の持分を一括して移転する登記はできず、「A及びBからDへの共有者全員の持分の全部の移転の登記は,一の申請情報により申請することはできない」という肢は正しい肢です。

民事執行法 第46条

(差押えの効力)
差押えの効力は、強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生ずる。ただし、差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときは、登記がされた時に生ずる。
差押えは、債務者が通常の用法に従つて不動産を使用し、又は収益することを妨げない。

試験ではこう問われる

  1. 差押えの登記の後に抵当権の設定の登記を申請できるか(できる)
  2. 仮登記で保全された請求権や譲渡を許す賃借権を差し押さえられるか(差し押さえられる)
  3. 公売や買戻権の行使の後に差押えの登記は職権で抹消されるか(されない)
  4. 代位嘱託による相続登記で相続人に登記識別情報が通知されるか(されない。完了の通知はされる)
  5. 仮差押債権者の住所変更の登記を債権者が申請できるか(できる)

この用語が問われた肢

R5 問23 エ正しい

A及びBが、Bを所有権の登記名義人とする甲土地について、Aを抵当権者とする抵当権の設定契約を締結した場合において、当該抵当権の設定の登記を申請する前に、甲土地に対しCを債権者とする強制競売による差押えの登記がされていたときであっても、当該抵当権の設定の登記を申請することができる。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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