分離処分禁止と敷地権付き区分建物の登記ぶんりしょぶんきんしとしきちけんつきくぶんたてもののとうき
区分所有者は専有部分と敷地利用権を分離して処分できず、不動産登記法73条2項・3項が土地だけ・建物だけの移転や担保権の登記を原則として受け付けないことで、この禁止を登記で担保しています。登記原因の日付と敷地権が生じた日の前後、登記の種類による例外が肢で突かれます。
分離処分禁止は、区分所有法22条1項本文が定める、区分所有者が専有部分とその専有部分に係る敷地利用権を分離して処分することができないという原則です。規約に別段の定めがあれば分離処分は可能になり、そのときは敷地利用権は敷地権になりません。不動産登記法73条2項と3項は、敷地権である旨の登記がされた土地だけを目的とする登記と、建物だけを目的とする登記を原則として禁じます。実体法の分離処分禁止を登記簿の上で守るための規定です。肢で突かれるのは、どの種類の登記が禁止に当たり、登記原因の日付が敷地権の前か後かで結論がどう変わるかです。
不動産登記法 第73条第2項第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記又は敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は敷地権についての仮登記若しくは質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。

敷地権発生後の原因による片方だけの移転・担保はできません
敷地権が生じた後に登記原因が生じた所有権の移転や抵当権の設定は、土地だけ・建物だけを目的としてはできません。「乙土地のA株式会社の持分のみを目的として,平成28 年3月15 日判決を登記原因及びその日付とする当該持分の移転の登記をすることはできない」という肢は正しい肢で、判決による移転でも結論は変わりません。「乙土地のB株式会社の持分のみを目的として,平成28 年3月15 日売買を登記原因及びその日付とする当該持分の移転の仮登記をすることができる」という肢は誤りで、仮登記でも原因が後なら禁止の対象です。一般の先取特権も担保権なので、「乙土地のみを目的として,令和 3 年 2 月 1 日から同年 3 月 1 日までの給料債権の先取特権発生を登記原因とする一般の先取特権の保存の登記は,申請することができない」という肢は正しい肢です。
敷地権発生前の原因なら仮登記・質権・抵当権はできます
不動産登記法73条2項と3項のただし書は、敷地権が生じる前に登記原因が生じた仮登記と、質権・抵当権の登記を例外として認めます。「敷地権付き区分建物について、当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じた当該建物のみを目的とする質権の設定の登記の申請をすることができる」という肢は正しい肢です。土地だけの抵当権設定仮登記が敷地権の前にされていれば、その本登記もでき、「乙土地のみを目的として,乙土地の順位1番の抵当権設定仮登記につき,…当該抵当権設定仮登記の本登記をすることはできない」という肢は誤りです。敷地権が生じる前の売買予約を原因とする土地だけの所有権移転請求権の仮登記も申請でき、そのときに分離処分可能規約を定めたことを証する情報は要りません。
敷地権でない権利の処分は分離処分に当たりません
区分所有法の分離処分禁止は敷地利用権全般に及びますが、登記で止められるのは敷地権になっている権利の処分です。地上権が敷地権の土地では、土地の所有権は敷地権ではないので、所有権の移転は制限を受けません。「地上権の設定の登記がされている土地について、当該地上権が敷地権である旨の登記がされたときは、敷地権の登記がされた後に締結された売買を原因とする当該土地のみを目的とする所有権の移転の登記の申請をすることができない」という肢は誤りです。土地の所有権が敷地権なら土地の所有権の移転が止まり、地上権が敷地権なら地上権の移転が止まる、と権利ごとに見ます。
用益権と処分制限の登記は片方だけでできます
分離処分禁止が登記で止めるのは、敷地権の移転と建物だけの所有権の移転、そして担保権の登記です。土地だけを目的とする地役権や区分地上権の登記、土地だけまたは建物だけを目的とする賃借権の登記は申請できます。「乙土地を承役地として,令和 3 年 4 月 1 日設定を登記原因とする地役権の設定の登記は,申請することができる」という肢は正しい肢で、土地だけの区分地上権の設定や建物だけの賃借権の設定を敷地権より後の原因だからできないとする肢はいずれも誤りです。処分の制限の登記も同じで、「敷地権付き区分建物についての処分禁止の仮処分の登記は、当該敷地権が生じた後に当該仮処分がされた場合であっても、敷地権の目的である土地のみを目的とすることができる」という肢は正しい肢です。土地だけにある根抵当権の実行としての差押えの登記も、土地だけを目的としてできます。
工事の先取特権は工事をした側だけを目的にできます
不動産工事の先取特権は、工事をした土地や建物の増価分を担保するので、工事の対象でない側に及ぶ理由がありません。登記実務では、敷地権が生じた日の前後を問わず、土地だけ、または建物だけを目的とする保存の登記が認められています。「敷地権である旨の登記がされた土地のみを目的とする不動産工事の先取特権の保存の登記の申請は,その登記原因の日付が当該敷地権が生じた日の前後いずれであるかを問わず,することができる」という肢は正しい肢です。「敷地権の表示の登記がされた区分建物について、当該区分建物のみを目的とする不動産工事の先取特権の保存の登記を申請することができる」という肢も正しい肢です。一般の先取特権が土地だけではできないことと対比して覚えると整理しやすいでしょう。
不動産登記法 第73条第3項敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記又は当該建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、当該建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は当該建物のみの所有権についての仮登記若しくは当該建物のみを目的とする質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 敷地権が生じた後の売買や判決を原因として、土地の持分だけの移転登記や仮登記ができるか(できない)
- 敷地権が生じる前の原因による建物だけの質権設定や土地だけの抵当権仮登記の本登記はできるか(できる)
- 地上権が敷地権の土地で、土地の所有権だけを売買により移転できるか(できる。敷地権でない権利の処分だから)
- 土地だけの地役権・区分地上権、建物だけの賃借権、土地だけの処分禁止の仮処分はできるか(できる)
- 一般の先取特権と不動産工事の先取特権を土地だけで保存登記できるか(一般はできない。工事はできる)
この用語が問われた肢
乙土地のみを目的として,令和 3 年 2 月 1 日から同年 3 月 1 日までの給料債権の先取特権発生を登記原因とする一般の先取特権の保存の登記は,申請することができない。
敷地権付き区分建物について、当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じた当該建物のみを目的とする質権の設定の登記の申請をすることができる。
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