買受人への移転と抹消(競売)かいうけにんへのいてんとまっしょう
競売の買受人が代金を納付したときに、裁判所書記官が買受人への所有権移転の登記と、売却で消えた権利や差押えの登記の抹消を嘱託する手続です。嘱託される登記の範囲、競売による登記の抹消の可否が肢で突かれます。
買受人への移転と抹消は、競売の買受人が代金を納付したときに、裁判所書記官が買受人への所有権移転の登記と、売却で消えた権利や差押えの登記の抹消を一括して嘱託する手続です。民事執行法82条1項が嘱託する登記を列挙し、同法59条が売却で消える権利を定めています。買受人は申請人にならず、登録免許税などの費用だけを負担する立場です。肢では、嘱託で抹消される登記の範囲、競売による移転の登記を当事者が抹消できるか、代位の場面で代位原因を証する情報が要るかが突かれます。
民事執行法 第82条第1項買受人が代金を納付したときは、裁判所書記官は、次に掲げる登記及び登記の抹まつ消を嘱託しなければならない。
一 買受人の取得した権利の移転の登記
二 売却により消滅した権利又は売却により効力を失つた権利の取得若しくは仮処分に係る登記の抹まつ消
三 差押え又は仮差押えの登記の抹まつ消

代金納付で書記官が移転と抹消をまとめて嘱託します
買受人が代金を納付すると、裁判所書記官は買受人への権利の移転の登記、売却で消滅した権利の登記の抹消、差押えと仮差押えの登記の抹消を嘱託します。嘱託情報には売却許可決定があったことを証する情報を併せて提供し、登録免許税は買受人の負担です。買受人と、買受人から抵当権の設定を受けようとする者が、代金納付までに申し出たときは、申出人が指定した司法書士などに嘱託情報を登記所へ提供させる方法によります。
売却で消える権利と対抗できない権利は嘱託で抹消されます
抵当権や先取特権は売却で消滅し、差押債権者に対抗できない権利の取得も売却で効力を失います。差押えの登記に後れる賃借権の登記も対抗できない権利の取得なので、嘱託で抹消されます。「買受人が代金を納付したときは,裁判所書記官は,買受人への所有権の移転の登記及び当該差押えの登記の抹消のほか,当該賃借権の登記の抹消を嘱託しなければならない」という肢は正しい肢です。差押えより先に登記された賃借権でも、売却で消える先順位の抵当権者に対抗できなければ効力を失い、嘱託で抹消されます。
競売による移転の登記は合意解除では抹消できません
強制競売による売却は裁判所の手続による権利の移転で、売主と買受人の合意で解除できる契約ではありません。「AからBへの強制競売による売却を登記原因とする所有権の移転の登記がされている場合には,AとBは,合意解除を登記原因として,当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りです。一方、競落が無効であることを認めて抹消手続をする旨の和解調書は確定判決と同じ効力を持つので、売主が単独で抹消を申請できます。「BはAに対し当該所有権の移転の登記について競落無効を原因とする抹消登記手続をする旨の記載のあるAとBとの和解調書の正本を添付して,Aが,単独で当該所有権の移転の登記の抹消の申請をすることはできない」という肢は誤りです。
差押えの登記があれば代位原因を証する情報は要りません
競売を申し立てた抵当権者が、売却の前提として所有者に代位し、買戻しの特約の登記の抹消を申請することがあります。差押えの登記が登記記録にあれば競売の申立ての事実は登記官に分かるので、代位原因を証する情報は要りません。「CがBに代位してAと共同して買戻しの特約の登記の抹消を申請するときは,代位原因を証する情報の提供を要しない」という肢は正しい肢です。「当該抵当権の担保不動産競売開始決定に基づく差押えの登記がされている場合には,Cは,Bに代位して,Aと共同して買戻しの特約の登記の抹消を申請することができる」という肢も正しい肢です。
法定地上権や借地権の移転は嘱託ではなく申請でします
差押えのときに土地と建物が同じ債務者の所有で、売却により所有者が別になると法定地上権が成立しますが、その登記は裁判所書記官の嘱託ではなく、当事者が共同で申請します。「強制競売により法定地上権が設定されたものとみなされた場合には,地上権の設定の登記は,裁判所書記官の嘱託によってされる」という肢は誤りです。借地上の建物を競売で取得した者は、地主の承諾に代わる裁判所の許可を得て賃借権の移転の登記を申請できます。「Cは,当該許可があったことを証する情報を提供して,賃借権の移転の登記の申請をすることができる」という肢は正しい肢です。
民事執行法 第59条第1項不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅する。
試験ではこう問われる
- 買受人への移転と抹消の登記は誰がするか(裁判所書記官の嘱託。費用は買受人負担)
- 差押えに後れる賃借権の登記は買受人への移転のときどうなるか(嘱託で抹消される)
- 競売による移転の登記を合意解除で抹消できるか(できない。競落無効の和解調書なら単独抹消できる)
- 差押えの登記があるとき代位原因を証する情報が要るか(要らない)
- 法定地上権の登記は嘱託でされるか(されない。共同申請)
この用語が問われた肢
競売による売却を原因としてAからBへの所有権の移転の登記がされている場合には,BはAに対し当該所有権の移転の登記について競落無効を原因とする抹消登記手続をする旨の記載のあるAとBとの和解調書の正本を添付して,Aが,単独で当該所有権の移転の登記の抹消の申請をすることはできない。
売買を原因とするAからBへの所有権の移転の登記と同時にした買戻しの特約の登記がされている甲不動産について、その後、Cを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされ、当該抵当権の担保不動産競売開始決定に基づく差押えの登記がされた場合において、CがBに代位してAと共同して買戻しの特約の登記の抹消を申請するときは、代位原因を証する情報の提供を要しない。
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