相続人不存在と相続財産清算人そうぞくにんふそんざいとそうぞくざいさんせいさんにん
相続人がいることが明らかでないとき、相続財産は法人になり、家庭裁判所が選任した相続財産清算人が管理・清算します。名義の変え方、清算人の権限、特別縁故者への分与と共有持分の帰属が肢で突かれます。
相続人不存在は、戸籍上の相続人が全員いない、または全員が放棄したなどで、相続人がいることが明らかでない状態です。このとき相続財産はそれ自体が法人となり、家庭裁判所が利害関係人などの請求で相続財産清算人を選任して、債権者への弁済や受遺者への引渡しを進めます。令和5年4月1日の民法改正で名称が相続財産管理人から相続財産清算人に変わり、公告の期間も整理されました。登記では、被相続人名義を「亡A相続財産」に改める氏名変更、清算人による処分、特別縁故者への分与、共有持分の他の共有者への帰属が場面になります。
民法 第951条(相続財産法人の成立)
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

名義は「亡A相続財産」への氏名変更登記で改めます
相続財産が法人になっても権利の主体が別人に移ったわけではないので、登記名義人の氏名の変更の登記をします。「当該相続財産管理人は、Aが所有権の登記名義人である不動産について「A」から「亡A相続財産」への所有権の移転の登記を申請することができる」という肢は誤りです。添付情報は清算人の選任の審判書で、審判書の記載から相続人不存在による選任であることと死亡年月日が分かれば、戸籍は要りません。「その添付情報として、Aの相続を証する戸籍謄本を提供することは要しない」という肢は正しい肢です。
清算人の権限外の行為には家庭裁判所の許可が要ります
清算人の権限は不在者財産管理人と同じく保存と管理に限られ、売却などの処分や、管理の範囲を超える長期の賃貸借には家庭裁判所の許可が要ります。建物以外の工作物所有を目的とする賃借権は5年を超えると管理の範囲を超えるので、「存続期間を10年とする旨が記載されているときには、相続財産管理人Bの権限外の行為に関する家庭裁判所の許可があったことを証する情報の提供を要しない」という肢は誤りです。一方、被相続人が生前に済ませていた売買の履行は新たな処分ではなく、「当該売却に関する家庭裁判所の許可があったことを証する情報を提供することを要しない」という肢は正しい肢です。
特別縁故者への分与は審判に基づく単独申請です
相続人の捜索の公告期間が満了して相続人の不存在が確定すると、被相続人と生計を同じくしていた人などの特別縁故者は、家庭裁判所に財産の分与を請求できます。分与の審判が確定すれば、特別縁故者はその審判書を提供して単独で移転登記を申請できます。「Cは、その審判に基づき、単独でAの持分の移転の登記の申請をすることができる」という肢は正しい肢です。登記原因は「民法第958条の2の審判」で、日付は審判の確定日です。
共有持分は特別縁故者不存在確定で他の共有者へ、共同申請です
被相続人が共有持分を持っていて特別縁故者への分与がされなかったときは、その持分は他の共有者に帰属します。この登記は「特別縁故者不存在確定」を原因とする持分移転で、清算人と他の共有者の共同申請です。「Bが単独で申請することはできない」という肢は正しい肢です。原因の日付は、分与の申立期間の満了日の翌日で、申立てが却下されたときは却下の審判が確定した日の翌日です。「相続人の捜索の公告の日から6か月後の日を登記原因の日付として申請することができる」という肢も、「却下する審判が確定した日を登記原因の日付として」という肢も誤りです。
他の共有者の持分放棄は共同申請で、清算人が単独では受けられません
相続財産法人が共有者になっている不動産で、別の共有者が持分を放棄すると、その持分は相続財産法人に帰属します。持分放棄による移転登記は放棄した人と相続財産法人(清算人)の共同申請で、「Aの相続財産管理人は、単独でBからAの相続財産法人へのBの持分の移転の登記を申請することができる」という肢は誤りです。
民法 第958条第1項前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
試験ではこう問われる
- 相続財産法人への名義変更は移転登記か氏名変更登記か(氏名変更)
- 清算人が10年の賃借権を設定するのに家庭裁判所の許可が要るか(要る)
- 特別縁故者は審判書で単独申請できるか(できる)
- 特別縁故者不存在確定による持分移転の原因日付はいつか(申立期間満了日の翌日、却下なら確定日の翌日)
- 他の共有者の持分放棄による移転を清算人が単独で申請できるか(できない)
この用語が問われた肢
Aに相続人のあることが明らかでないため相続財産管理人が選任された場合には、当該相続財産管理人は、Aが所有権の登記名義人である不動産について「A」から「亡A相続財産」への所有権の移転の登記を申請することができる。
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