賃借権の先順位抵当権に優先する同意の登記ちんしゃくけんのせんじゅんいていとうけんにゆうせんするどういのとうき
登記した賃借権を、その前に登記された抵当権に対抗できるようにする民法387条の登記です。主登記か付記登記か、申請人は誰か、同意した抵当権者が後の変更で利害関係人になるかが肢で突かれます。
賃借権の先順位抵当権に優先する同意の登記は、登記した賃借権を、その前に登記された抵当権に対抗できるようにする登記です。民法387条が定め、先順位の抵当権者全員が同意し、かつその同意を登記して初めて効力が生じます。抵当権が実行されても賃借権が買受人に引き継がれるので、賃借人の地位を安定させる仕組みです。肢で突かれるのは、主登記か付記登記か、申請人は誰か、同意した抵当権者がその後の変更でどう扱われるかです。
民法 第387条(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。

先順位の抵当権者全員の同意と登記が揃って効力が生じます
対抗力は、賃借権の登記より前に登記されたすべての抵当権者が同意し、その同意の登記がされたときに生じます。一人でも同意しない抵当権者がいれば登記はできず、一部の抵当権者だけに優先することもありません。抵当権者が同意をするには、転抵当権者のようにその抵当権を目的とする権利を持つ者や、同意で不利益を受ける者の承諾が要ります。登記の申請では、こうした者の承諾を証する情報を添付します。同意の登記より後に登記された抵当権は、登記の先後でもともと賃借権に劣後するので、同意の対象になりません。
賃借人が登記権利者、抵当権者が登記義務者の共同申請です
同意の登記で利益を受けるのは賃借人、不利益を受けるのは抵当権者なので、賃借人を登記権利者、同意した抵当権者全員を登記義務者として共同で申請します。登記原因は「年月日同意」で、日付は同意の日ですが、民法387条2項の承諾が同意の後にされたときは承諾の日です。添付情報は登記原因証明情報、抵当権者の登記識別情報、代理権限証明情報で、登記義務者は所有権の登記名義人ではないので印鑑証明書は要りません。所有者は申請人になりませんが、賃借権の登記自体が先に備わっていることが前提です。
同意の登記は付記登記ではなく主登記でされます
付記登記になる登記は不動産登記規則3条に列挙されており、同意の登記は含まれていません。賃借権と複数の抵当権にまたがる登記なので、どれか一つの登記の付記にはなじまず、乙区に主登記として記録されます。「賃借権を先順位抵当権に優先させる旨の同意の登記は,付記登記によってされる」という肢は誤りです。主登記なので、賃借権の順位番号の枝番ではなく、同意の登記自体に順位番号が付きます。登録免許税は賃借権と抵当権の件数1件につき1000円で、不動産1個単位ではありません。
短期賃貸借の保護に代わって平成16年4月1日に設けられました
民法387条は、平成15年の担保・執行法制の改正で設けられ、平成16年4月1日に施行されました。改正前は抵当権に後れる短期賃貸借でも対抗要件を備えれば原則として保護されていましたが、執行妨害に使われることが多く廃止されました。代わりに、建物の使用者には買受けの時から6か月の明渡猶予(民法395条)が与えられ、抵当権に後れる賃貸借は抵当権者が同意したものだけが対抗力を持つ仕組みになっています。賃借人が同意を得られなければ、賃借権は抵当権の実行で買受人に対抗できず、建物の使用者であれば明渡猶予の保護を受けるにとどまります。同意の登記は、抵当権者が納得した賃借権だけを守るという改正の趣旨を登記の形にしたものです。
同意した抵当権者は、賃料減額の変更で利害関係人になります
同意の登記の後に賃料を減額する変更の登記を申請するときは、同意した先順位の抵当権者が登記上の利害関係を有する第三者に当たります。優先する賃借権の賃料が下がれば、抵当権者が競売で得られる価値が下がるからです。「当該先順位抵当権者は、当該賃借権の変更の登記についての登記上の利害関係を有する第三者に当たる」という肢は正しい肢です。承諾がなければ変更の登記は主登記でされ、承諾があれば付記登記になります。
民法 第387条第2項抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。
試験ではこう問われる
- 同意の登記で対抗できるようになるには誰の同意が要るか(先順位の抵当権者全員。転抵当権者などの承諾も要る)
- 申請人は誰か(賃借人が権利者、抵当権者が義務者の共同申請)
- 同意の登記は付記登記か(主登記)
- 同意した抵当権者は賃料減額の変更で利害関係人か(当たる)
この用語が問われた肢
先順位抵当権に優先する同意の登記をした賃借権の賃料が減額された場合において、当該賃借権の変更の登記を申請するときは、当該先順位抵当権者は、当該賃借権の変更の登記についての登記上の利害関係を有する第三者に当たる。
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