譲渡制限株式じょうとせいげんかぶしき
譲渡による取得について会社の承認を要する旨の定款の定めがある株式で、その定めは株式の内容として登記されます。設定・変更・廃止の決議の型と、承認機関の書き方、廃止に伴う役員の退任が肢で突かれます。
譲渡制限株式は、譲渡によるその株式の取得について会社の承認を要する旨の定款の定めがある株式です。全部の株式に付ければ会社は公開会社でなくなり、種類株式として一部の種類に付けることもできます。承認をするか否かは株主総会、取締役会設置会社では取締役会が決め、定款で別の機関にできます。定款の定めは株式の内容として登記され、設定・変更・廃止のたびに変更の登記を申請し、廃止で公開会社になると役員の任期にも影響します。
会社法 第107条第1項第1号譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

設定は特殊決議で、株券発行会社なら株券提出公告の書面が要ります
全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更は、議決権を行使できる株主の半数以上で、かつその議決権の3分の2以上の賛成による特殊決議です。種類株式の一部に設けるときは、株主総会の特別決議に加えて、その種類と、その種類を対価とする取得請求権付株式・取得条項付株式の種類株主総会の特殊決議によります。株券発行会社が設定するときは、効力発生日の1か月前までに株券提出の公告と通知をします。申請書には公告をしたことを証する書面か、株式の全部について株券を発行していないことを証する書面を添付します。株主間の譲渡をみなし承認とするただし書を削る変更は、制限を広げる設定に当たるので同じ扱いです。「現に株券を発行しているときは、株式の譲渡制限に関する規定の変更の登記の申請書には、株券提供公告をしたことを証する書面を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。
制限を緩める変更と廃止は特別決議で足ります
既にある譲渡制限に、株主間の譲渡は承認したものとみなす旨のただし書を加える変更は、制限を緩める方向なので通常の定款変更として特別決議で足ります。「とのただし書を追加する旨の定款の変更をした場合には、株式の譲渡制限に関する規定の変更の登記の申請書には、当該定款の変更が、株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の 3 分の 2 以上に当たる多数をもって可決された旨の株主総会の議事録を添付しなければならない」という肢は誤りです。譲渡制限の定めの廃止も特別決議で、申請書には株主総会議事録と株主リストを添付します。
承認機関は「当会社」や「取締役の過半数」とも書けます
承認をするか否かの決定は株主総会、取締役会設置会社では取締役会が原則ですが、定款で別段の定めができます。承認機関を特定せずに「当会社の承認を受けなければならない」と定めても、法律の原則どおりの機関が承認することになるので登記できます。「「当会社の株式を譲渡により取得するには当会社の承認を受けなければならない。」と定款に定めて登記することはできない」という肢は誤りです。取締役会設置会社でない会社が「取締役の過半数の承認」と定めることもでき、「取締役会設置会社でない会社において、株式の譲渡制限に関する規定として「当会社の株式を譲渡により取得するには取締役の過半数の承認を受けなければならない。」と定款に定めて登記することができる」という肢は正しい肢です。
廃止して公開会社になると役員の任期が満了し、4倍の枠も働きます
全部の株式の譲渡制限を廃止すると会社は公開会社になり、取締役と監査役の任期は定款変更の効力が生じた時に満了します。監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社の取締役は除かれます。「会社法上の公開会社でない監査役会設置会社が株式の譲渡制限に関する規定を廃止する旨の定款の変更をした場合には、役員の任期満了による退任の登記をもしなければならない」という肢は正しい肢です。公開会社になると発行可能株式総数は発行済株式の総数の4倍までに収めなければならず、超えていれば同時に是正の登記を申請します。清算株式会社が清算開始後に譲渡制限を設けても、清算開始時に公開会社だった会社は監査役の設置を廃止できません。
募集株式が譲渡制限株式なら割当ての決定機関が決まります
募集株式が譲渡制限株式のときは、割当てを受ける者と数の決定、総数引受契約の承認は、株主総会の特別決議または取締役会設置会社では取締役会の決議によります。「取締役会設置会社でない会社が株主に株式の割当てを受ける権利を与えないで譲渡制限株式を発行した場合には,定款に別段の定めがあるときを除き,募集株式の発行による変更の登記の申請書には,株式の割当てを決定し,又は総数引受契約を承認した株主総会の特別決議に係る議事録を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。公開会社が譲渡制限株式である種類株式を募集するときも、定款に別段の定めがなければ割当てを決定した取締役会議事録を添付することになり、割当てを理由とする株主総会議事録は要りません。
会社法 第139条第1項株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 譲渡制限の設定の決議はどれか(特殊決議。種類株式なら株主総会の特別決議と種類株主総会の特殊決議)
- みなし承認のただし書を加える変更の決議はどれか(特別決議)
- 「当会社の承認」という承認機関の書き方で登記できるか(できる)
- 譲渡制限を廃止して公開会社になると何が起きるか(役員の任期満了、発行可能株式総数の4倍の枠)
- 募集株式が譲渡制限株式のとき割当ての決定機関はどこか(株主総会の特別決議または取締役会)
この用語が問われた肢
株式の譲渡制限に関する規定として「当会社の株式を譲渡により取得するには取締役会の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合においては取締役会が承認をしたものとみなす。」と定款に定めて登記している会社が、当該規定中ただし書を削除する旨の定款の変更をした場合において、現に株券を発行しているときは、株式の譲渡制限に関する規定の変更の登記の申請書には、株券提供公告をしたことを証する書面を添付しなければならない。
株式の譲渡制限に関する規定として「当会社の株式を譲渡により取得するには取締役会の承認を受けなければならない。」と定款に定めて登記している会社が、「ただし、当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合においては取締役会が承認をしたものとみなす。」とのただし書を追加する旨の定款の変更をした場合には、株式の譲渡制限に関する規定の変更の登記の申請書には、当該定款の変更が、株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の 3 分の 2 以上に当たる多数をもって可決された旨の株主総会の議事録を添付しなければならない。
株式の譲渡制限に関する規定として「当会社の株式を譲渡により取得するには当会社の承認を受けなければならない。」と定款に定めて登記することはできない。
取締役会設置会社でない会社において、株式の譲渡制限に関する規定として「当会社の株式を譲渡により取得するには取締役の過半数の承認を受けなければならない。」と定款に定めて登記することができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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