控訴審の審理(続審制)こうそしんのしんり
控訴審の審理とは、控訴裁判所が、第一審で提出された資料に控訴審で新たに提出された資料を加えて、不服申立ての限度で第一審判決の当否を判断する手続です。現行法は、第一審の口頭弁論を引き継いで続ける続審制を採っています(296条・298条1項)。
控訴審は、第一審をまったく初めからやり直すわけでも、第一審の記録だけを見直すわけでもありません。第一審で出た主張や証拠をそのまま引き継ぎ、そこに控訴審で新しく出された主張や証拠を足して、第一審の判決が正しかったかを判断します。民事の権利関係は時間とともに動くので、第一審の後に起きた事情も取り込める仕組みにしているのです。その代わり、第一審で出せたのに出さなかった主張は、控訴審でも時機に後れたものとして退けられることがあります。

控訴審は、第一審の資料に控訴審の資料を加えて、不服申立ての限度で第一審判決の当否を審理する続審です
第一審においてした訴訟行為は控訴審でも効力を有し(298条1項)、第一審の訴訟手続の規定は控訴審に準用されるので(297条)、当事者は控訴審でも新たな攻撃防御方法を提出できます。このように第一審の口頭弁論を控訴審で続ける仕組みを続審制といいます。控訴裁判所は、第一審の資料と控訴審の資料を基礎として、不服申立ての限度で独自に事実を認定し、第一審判決と比べて不服の当否を判断します。続審なので、控訴審で提出できる攻撃防御方法は第一審の口頭弁論終結後に生じた事由に限られません。口頭弁論は当事者が第一審判決の変更を求める限度においてのみ行われますが(296条1項)、訴訟要件のような職権調査事項は不服申立ての範囲にかかわらず調べます。審判の範囲が不服の限度に絞られても、事件そのものは判決全体が控訴審に移るので、「当該判決に対して被告のみが控訴をしたときは、当該訴訟のうち当該売買代金請求に係る部分は控訴審に移審しない」という肢(R8 午後 問5 ア)は誤りです。
- 続審制(現行法)第一審の資料+控訴審で提出された資料で判断する
- 覆審制第一審と独立に控訴審で資料を集め直す
- 事後審制第一審の資料だけで第一審判決の当否を審査する
当事者は第一審の口頭弁論の結果を陳述しなければならず、一方が欠席しても出頭した当事者が双方の結果を陳述できます
控訴審では裁判官が替わるので、当事者は第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければなりません(296条2項)。判例は、控訴審で当事者の一方が期日に欠席したときは、出頭した当事者に双方に係る第一審の口頭弁論の結果を陳述させることができるとしました(最判昭和33年7月22日)。結果の陳述は第一審の記録にある資料を引き継ぐ手続にすぎず、欠席者に新しい不利益を負わせるものではないからです。最初にすべき口頭弁論の期日の欠席者の提出書面を陳述したものとみなす158条も、297条で控訴審に準用されます。第一審では原告が欠席した場合にも働き、「原告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭しないときであっても、裁判所は、原告が提出した訴状に記載した事項を陳述したものとみなし、その期日に出頭した被告に弁論をさせることができる」という肢(R6 午後 問3 ア)は正しいです。
時機に後れたかどうかは第一審以来の経過を通して判断するので、控訴審の第1回期日に出した攻撃防御方法も却下されることがあります
時機に後れた攻撃防御方法の却下(157条1項)も控訴審に準用されます。控訴審の口頭弁論は第一審の口頭弁論と一体なので、時機に後れたかは控訴審に来てからの経過だけでなく、第一審における訴訟手続の経過も通観して判断します(最判昭和30年4月5日)。そのため、控訴審の第1回口頭弁論期日に初めて提出した攻撃防御方法でも、第一審で容易に出せたものであれば時機に後れたものとして却下されることがあります(大判昭和8年2月7日)。このほか、裁判長は当事者の意見を聴いて攻撃防御方法の提出や訴えの変更、反訴の提起の期間を定めることができ(301条1項)、第一審で弁論準備手続を終えた事件で控訴審に新たな攻撃防御方法を出す当事者には説明義務が準用されます(298条2項)。

第一審の手続の規定は控訴審に準用され、控訴審でも事実を争い直し、争点整理をすることができます
擬制自白は、争うことを明らかにしない状態が口頭弁論の終結まで続くことで成立するので、続審である控訴審で争えば成立しません(159条1項)。判例も、第一審の擬制自白がそのまま控訴審に引き継がれるものではないとしています。第一審で擬制自白により全部敗訴した被告が控訴審で請求原因事実を争う場合に、その事実が真実でないことを立証する必要はありません。裁判上の自白なら撤回の要件が問題になりますが、擬制自白はそうではありません。争点整理の手続も準用されるので、控訴裁判所は、第一審で弁論準備手続を終えていても、当事者の意見を聴いて事件を弁論準備手続に付することができます(168条)。当事者双方が控訴審の期日に欠席して期日指定の申立てをしないときは、263条が準用されて控訴の取下げが擬制され(292条2項)、「当事者双方が、控訴審の口頭弁論又は弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合において、法定の期間内に期日指定の申立てをしないときは、控訴の取下げがあったものとみなされる」という肢(R8 午後 問5 オ)は正しいです。控訴審での反訴は相手方の同意がある場合に限り、相手方が異議を述べずに反訴の本案について弁論すれば同意したものとみなされます(300条)。
控訴審では第一審の任意管轄違いを主張できず、合意で定めた専属管轄の違反も同じです
控訴審においては、当事者は、第一審裁判所が管轄権を有しないことを主張することができません(299条1項本文)。第一審で本案の審理と判決がされた以上、管轄違いを理由に審理をやり直させるのは訴訟経済に反するからです。例外は専属管轄ですが、当事者が11条の合意で定めた専属管轄は除かれています(299条1項ただし書)。法定の専属管轄が公益に基づくのに対し、専属的合意管轄は当事者の便宜のためのものにすぎないからです。第一審が専属的合意の存在を理由とする管轄違いの主張を排斥して本案判決をした場合も、控訴審でその合意を理由に管轄違いを主張することはできません。法定の専属管轄の違反は控訴審でも主張でき、控訴裁判所が管轄違いを理由に第一審判決を取り消すときは判決で管轄裁判所に移送します(309条)。
民事訴訟法 第296条(口頭弁論の範囲等)
口頭弁論は、当事者が第一審判決の変更を求める限度においてのみ、これをする。
当事者は、第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
民事訴訟法 第298条第1項第一審においてした訴訟行為は、控訴審においてもその効力を有する。
民事訴訟法 第299条第1項控訴審においては、当事者は、第一審裁判所が管轄権を有しないことを主張することができない。ただし、専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)については、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 併合された請求の一部だけに不服がある控訴でも、判決全体が控訴審に移る(R8 午後 問5 ア ×)
- 控訴審で当事者双方が欠席して期日指定の申立てもなければ、控訴の取下げが擬制される(292条2項・263条。R8 午後 問5 オ ○)
- 最初の期日に欠席した当事者の書面の陳述擬制は第一審でも控訴審でも働く(158条・297条。R6 午後 問3 ア ○)
- 控訴審は続審制で、攻撃防御方法は第一審の口頭弁論終結後の事由に限られず、職権調査事項は不服申立ての範囲にかかわらず審理する(296条1項・298条1項)
- 当事者は第一審の口頭弁論の結果を陳述し、一方が欠席しても出頭した当事者が双方の結果を陳述できる(296条2項、最判昭和33年7月22日)
- 時機に後れたかは第一審以来の経過で判断し、控訴審の第1回期日の提出でも却下されうる(最判昭和30年4月5日)
- 控訴審では第一審の管轄違いを主張できず、合意による専属管轄も同じ(299条1項)

