弁論準備手続(168条〜174条)べんろんじゅんびてつづき
弁論準備手続とは、争点及び証拠の整理を行うため、当事者の意見を聴いて事件を付し、当事者双方が立ち会うことのできる非公開の期日で、準備書面の提出や文書の証拠調べなどを行う手続です。受命裁判官に行わせることができ、その結果は口頭弁論で陳述しなければなりません。
弁論準備手続は、法廷ではなく準備手続室のテーブルを囲んで、裁判官と双方の代理人が率直に意見を交わしながら争点を絞り込む手続です。非公開で話しやすい代わりに、できる証拠調べは文書などに限られ、そこで出た主張は口頭弁論で結果を陳述して初めて判決の基礎になります。実務で最もよく使われる争点整理の手続なので、要件・主体・当事者の関与・効果を条文どおりに押さえておく必要があります。

裁判所は当事者の意見を聴いて付し、同意は要らず、当事者双方が立ち会うことのできる非公開の期日で行います
裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができます(168条)。意見を聴けば足り、同意は要らないので、「裁判所は,当事者の同意がない場合であっても,準備的口頭弁論を行うことができるが,当事者の同意がない場合には,事件を弁論準備手続に付することができない」という肢(R2 午後 問3 ア)は誤りです。付する裁判に対する即時抗告の規定もなく、「当事者は、事件を弁論準備手続に付する裁判に対して即時抗告をすることができる」という肢(R7 午後 問3 ア)も誤りです。手続は当事者双方が立ち会うことができる期日において行います(169条1項)。公開の手続ではないので、「準備的口頭弁論の期日は,裁判所の許可を受けた者でなくても傍聴することができるが,弁論準備手続の期日は,裁判所の許可を受けた者でなければ傍聴することができない」という肢(R2 午後 問3 イ)は正しいです。他方、裁判所は相当と認める者の傍聴を許すことができ、当事者が申し出た者については、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き、傍聴を許さなければなりません(169条2項)。「裁判所は、弁論準備手続において、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き、当事者が申し出た者の傍聴を許さなければならない」という肢(R7 午後 問3 イ)は正しいです。当事者が申し出た者の傍聴を許すのに、他方の当事者の意見を聴く必要はありません。
期日では期日外にできる裁判と文書などの証拠調べはできますが、証人尋問・当事者尋問・検証はできません
170条2項は、弁論準備手続の期日にできることとして、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判、文書(231条の準文書を含む)の証拠調べ、電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べなどを挙げています。文書提出命令の申立てについての裁判は証拠の申出に関する裁判に、補助参加の申出についての裁判は期日外にできる裁判に当たるので、弁論準備手続の期日にすることができます。証人の採否の決定は証拠の申出に関する裁判なのでできますが、証人尋問は口頭弁論ですることになります。検証物の証拠調べもできません。170条5項は釈明権・釈明処分(149条〜151条)や攻撃防御方法の却下(157条)などを準用しているので、裁判所は当事者に準備書面を提出させることができますが(170条1項)、相手方が出頭していれば不意打ちのおそれはないので、準備書面に記載していない事実も主張できます。
受命裁判官に行わせることができ、受命裁判官も文書の証拠調べや嘱託の裁判ができますが、受託裁判官には行わせられません
裁判所は、受命裁判官に弁論準備手続を行わせることができます(171条1項)。受託裁判官に行わせる規定はないので、受命裁判官が行う場合は、裁判所と裁判長の職務をその裁判官が行いますが、170条2項の裁判(証拠の申出に関する裁判など)は除かれます(171条2項)。除かれるのは裁判だけで、受命裁判官も文書の証拠調べはできます。さらに171条3項は、受命裁判官が調査の嘱託、鑑定の嘱託、文書を提出してする書証の申出及び文書の送付の嘱託についての裁判をすることができるとしています。

電話会議で関与した当事者は出頭したものとみなされ、期日では和解・訴えの取下げ・請求の放棄や認諾もできます
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、電話会議の方法で期日の手続を行うことができ(170条3項)、関与した当事者は期日に出頭したものとみなされます(同条4項)。旧規定は当事者の一方が期日に出頭した場合に限っていましたが、令和4年改正でこの限定がなくなりました。旧規定を前提にした肢の読み替えは手続のIT化の語で扱っています。弁論準備手続の期日は口頭弁論等の期日に含まれ(261条4項)、そこで訴えの取下げ・和解・請求の放棄や認諾をすることができます。最初の期日に欠席した当事者の準備書面の陳述擬制(158条)も170条5項で準用されます。
終結に当たり証明すべき事実を確認し、結果を口頭弁論で陳述しなければならず、終結後の攻撃防御方法には説明を求められます
裁判所は、弁論準備手続を終結するに当たり、その後の証拠調べにより証明すべき事実を当事者との間で確認するものとされています(170条5項・165条1項)。当事者が期日に出頭しないときなどは終結することができます(170条5項・166条)。弁論準備手続は口頭弁論ではないので、当事者は口頭弁論において弁論準備手続の結果を陳述しなければならず(173条)、陳述して初めて手続で出た資料が訴訟資料になります。準備的口頭弁論は口頭弁論そのものなので結果の陳述は要らず、「当事者は、準備的口頭弁論終了後の口頭弁論の期日において、準備的口頭弁論の結果を陳述しなければならない」という肢(R7 午後 問3 エ)は誤りです。付する裁判は、相当と認めるときは申立てにより又は職権で取り消すことができ、当事者双方の申立てがあるときは取り消さなければなりません(172条)。一方の申立てだけでは、取消しは義務になりません。終結後も攻撃防御方法は提出でき、相手方の求めがあれば終結前に提出できなかった理由を説明しなければなりません(174条・167条)。「当事者は,弁論準備手続の終結後であっても,攻撃又は防御の方法を提出することができるが,準備的口頭弁論の終了後には,攻撃又は防御の方法を提出することができない」という肢(R2 午後 問3 オ)は、準備的口頭弁論の終了後も提出できるので誤りです。説明がないか不合理なときに、157条1項による却下が問題になります。

民事訴訟法 第168条(弁論準備手続の開始)
裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができる。
民事訴訟法 第169条第2項裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。ただし、当事者が申し出た者については、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き、その傍聴を許さなければならない。
民事訴訟法 第172条(弁論準備手続に付する裁判の取消し)
裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、弁論準備手続に付する裁判を取り消すことができる。ただし、当事者双方の申立てがあるときは、これを取り消さなければならない。
民事訴訟法 第173条(弁論準備手続の結果の陳述)
当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。
試験ではこう問われる
- 付するときは当事者の意見を聴けば足り、同意は要らない(168条、R2 午後 問3 ア ×)。付する裁判に対して即時抗告はできない(R7 午後 問3 ア ×)
- 非公開の手続で、裁判所の許可を受けた者が傍聴でき(R2 午後 問3 イ ○)、当事者が申し出た者は支障を生ずるおそれがある場合を除き傍聴を許さなければならない(169条2項、R7 午後 問3 イ ○)
- 期日外にできる裁判と文書・電磁的記録の証拠調べはできるが、証人尋問・当事者尋問・検証はできない(170条2項)
- 受命裁判官に行わせられるが、受託裁判官には行わせられない(171条1項)。電話会議は当事者の一方の出頭を要しない(170条3項、R6 午後 問3 エ ×)
- 弁論準備手続の期日でも主要事実についての裁判上の自白は成立する(R7 午後 問2 ウ ×)。結果は口頭弁論で陳述しなければならない(173条)
- 双方の申立てがあれば付する裁判を取り消さなければならない(172条ただし書)。弁論準備手続を経た口頭弁論期日の変更は、やむを得ない事由がある場合に限る(93条4項、R3 午後 問2 ウ ○)
- 終結後も攻撃防御方法は出せるが、相手方の求めがあれば終結前に出せなかった理由を説明する(174条・167条、R2 午後 問3 オ ×)

