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控訴の提起こうそのていき

民事訴訟法 第11章 上訴 過去問で1肢

控訴の提起とは、第一審の終局判決に不服のある当事者が、控訴状を第一審裁判所に提出して控訴審の審判を求めることです。電子判決書(又は判決に代わる電子調書)の送達を受けた日から2週間の不変期間内にしなければならず、控訴状には控訴の理由を書かなくてもかまいません(285条・286条)。

第一審の判決に納得できないときは、判決を受け取ってから2週間のうちに控訴状を出さなければなりません。出す先は上の裁判所ではなく、判決をした第一審の裁判所です。記録が手元にある第一審の裁判所に、期間切れのような明らかに不適法な控訴をその場で退けさせ、無駄に上へ送らないようにするためです。控訴状には、どの判決に控訴するかを書けば足り、なぜ不当かという理由は後で別の書面で出せます。

地方裁判所の書記官室の受付カウンターの場面。カウンターの上の看板に「第一審裁判所 受付」。男性(札「控訴人」)が「控訴状」と書かれた書面を差し出している。その横の壁に掲示「控訴期間:電子判決書の送達を受けた日から2週間」。カウンターの奥に先

控訴は電子判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起し、送達前の控訴も有効です

控訴期間は、電子判決書又は判決に代わる電子調書の送達を受けた日から2週間の不変期間です(285条本文)。起算点は判決の言渡しではなく送達です。令和4年改正の前は「判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達」と書かれていましたが、送達から2週間という結論は変わりません。期間の前に提起した控訴の効力は妨げられないので(285条ただし書)、判決の言渡し後であれば、送達を受ける前でも控訴できます。判決の言渡しより前の控訴は、不服を申し立てる対象の判決がまだ無いので不適法と解されています。「第一審判決が判決書の原本に基づいて言い渡されたときは、控訴の提起は、判決書の送達を受けた日から 2 週間の不変期間内に、控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない」という肢(R4 午後 問5 イ)は、「判決書」を現行法の電子判決書と読み替えれば正しいです。不変期間なので裁判所が伸び縮みさせることはできず、責めに帰することができない事由で守れなかったときは追完の問題になります。

控訴状は控訴裁判所ではなく第一審裁判所に提出します

控訴の提起は、控訴状を第一審裁判所に提出してしなければなりません(286条1項)。旧法では控訴裁判所に提出するものとされていましたが、現行法は、訴訟記録がある第一審裁判所に控訴の形式的な適否を先に見させ、補正できない不適法な控訴を控訴審に係属させないようにしました。簡易裁判所の判決に対する控訴も同じで、訴えのように口頭ですることはできず、「簡易裁判所の終局判決に対する控訴の提起は,控訴状を提出してしなければならない」という肢(R3 午後 問3 オ)は正しいです。上告状も、同じ理由で原裁判所に提出します(314条1項)。

控訴状に書かなければならないのは当事者と第一審判決の表示・控訴をする旨だけで、控訴の理由は要りません

控訴状の必要的記載事項は、当事者及び法定代理人と、第一審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨の二つです(286条2項)。2週間という短い期間で不服の理由まで組み立てさせるのは酷なので、理由は必要的記載事項にしていません。控訴状に理由の具体的な記載がないときは、控訴人は控訴の提起後50日以内に、理由を記載した書面(控訴理由書)を控訴裁判所に提出しなければなりません(民事訴訟規則182条)。ただ、これは控訴審の争点を早く明らかにするための定めで、控訴の適法要件ではないので、期間内に出さなくても控訴は却下されません。上告は違い、上告理由書を期間内に原裁判所に出さなければ、原裁判所が決定で上告を却下します(315条1項・316条1項2号)。

  • 控訴状の提出先第一審裁判所(286条1項)
  • 控訴理由書の提出先と期間控訴裁判所・控訴の提起後50日以内(民事訴訟規則182条)
  • 控訴理由書を出さないとき控訴は却下されない
  • 上告状・上告理由書の提出先原裁判所(314条1項・315条1項)
  • 上告理由書の期間電子上告提起通知書の送達を受けた日から50日(民事訴訟規則194条)
  • 上告理由書を出さないとき原裁判所が決定で上告を却下する(316条1項2号)
教室の黒板の図解。黒板を左右に分け、左に見出し「控訴」、右に見出し「上告」。左の列:「控訴状 → 第一審裁判所」「控訴理由書 → 控訴裁判所・提起後50日」「出さなくても却下されない」。右の列:「上告状 → 原裁判所」「上告理由書 → 原裁

不適法で補正できないことが明らかな控訴は、第一審裁判所が決定で却下します

控訴が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、第一審裁判所は、決定で、控訴を却下しなければなりません(287条1項)。控訴期間が過ぎてからの控訴や、控訴権を放棄した後の控訴がその例です。救いようのない控訴のために記録を控訴裁判所へ送り、控訴裁判所に却下判決をさせる手間を省くための定めで、この決定には即時抗告ができます(287条2項)。第一審裁判所が却下しなければ記録は控訴裁判所に送られ、控訴状の必要的記載事項の不備や手数料の不納付の審査は、控訴裁判所の裁判長が訴状審査の規定を準用して行います(288条)。控訴裁判所も、不適法で補正できない控訴は、口頭弁論を経ないで判決で却下できます(290条)。「控訴が不適法でその不備を補正することができない場合において、控訴裁判所が判決で当該控訴を却下するときは、口頭弁論を経ることを要しない」という肢(R8 午後 問5 エ)は正しいです。第一審裁判所は決定、控訴裁判所は判決という形式の違いがあります。

民事訴訟法 第285条

(控訴期間)
控訴は、電子判決書又は第二百五十四条第二項の規定により当事者及び法定代理人、主文、請求並びに理由の要旨が記録された電子調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。

民事訴訟法 第286条

(控訴提起の方式)
控訴の提起は、控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない。
控訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 第一審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨

民事訴訟法 第287条

(第一審裁判所による控訴の却下)
控訴が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、第一審裁判所は、決定で、控訴を却下しなければならない。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

試験ではこう問われる

  1. 控訴は電子判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、控訴状を第一審裁判所に出してする(285条・286条1項。R4 午後 問5 イ ○。肢の「判決書」は電子判決書と読み替える)
  2. 簡易裁判所の終局判決に対する控訴も控訴状を出してする(R3 午後 問3 オ ○)
  3. 控訴裁判所は、補正できない不適法な控訴を口頭弁論を経ないで判決で却下できる(290条。R8 午後 問5 エ ○)
  4. 少額訴訟の終局判決には控訴できず、異議の申立てによる(377条。R6 午後 問5 オ ×)
  5. 控訴期間は共同訴訟人ごとに送達の日から進行し、最も遅い送達日にそろうのではない(R8 午後 問1 オ ×)
  6. 言渡し後・送達前にした控訴も有効で、控訴状に控訴の理由は要らず、控訴理由書を出さなくても控訴は却下されない(285条ただし書・286条2項)
  7. 補正できない不適法な控訴が明らかなら第一審裁判所が決定で却下し、即時抗告ができる(287条)

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