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除斥・忌避・回避(23条〜27条)じょせききひかいひ

民事訴訟法 第2章 裁判所

除斥とは、裁判官が当事者や事件と法律の定める一定の関係にあるときに、法律上当然にその事件の職務の執行から排除されることです(23条)。忌避とは、裁判の公正を妨げるべき事情がある裁判官を当事者の申立てに基づく裁判で職務から排除することで(24条)、回避とは、除斥や忌避の事由がある裁判官が許可を得て自ら職務を避けることです。

自分の親族が当事者になっている事件を、その裁判官が裁くのは公正とはいえません。そこで法律は、一定の関係があれば裁判官を当然に事件から外し(除斥)、それ以外にも公正を疑わせる事情があれば当事者が排除を求められるようにし(忌避)、裁判官が自ら身を引く途も用意しています(回避)。除斥は法律が定めた関係があるだけで効果が生じ、忌避は裁判があって初めて効果が生じるという違いが、肢の正誤を分けます。

民事の法廷の場面。被告席の男性(札「被告」)が立ち上がり、手を挙げて「裁判長は原告のいとこです」と言っている小さな吹き出しがある。正面の裁判官席の中央に先生が裁判長役(札「裁判長」)として座り、書類を閉じて席を立とうとしている。壁の掲示に「

除斥は法定の原因があれば当然に職務から排除され、忌避は当事者の申立てに基づく裁判で初めて排除されます

23条1項は、裁判官又はその配偶者等が事件の当事者であるとき、当事者の4親等内の血族・3親等内の姻族・同居の親族であるとき、当事者の後見人等であるとき、事件について証人・鑑定人となったとき、当事者の代理人であるとき、仲裁判断や不服を申し立てられた前審の裁判に関与したときを除斥原因として挙げ、これに当たる裁判官は職務の執行から除斥されます。除斥原因があるときは、裁判所は申立てにより又は職権で除斥の裁判をしますが(23条2項)、この裁判は除斥されていることを確認するものにすぎません。これに対し忌避は、裁判官について裁判の公正を妨げるべき事情があるときに当事者が申し立てるもので(24条1項)、職権で排除する仕組みはありません。前審関与の意味について、判例(最判昭和28年6月26日)は、前審の裁判に関与したとは前審の裁判の評決に加わったことをいい、前審で口頭弁論を指揮し証拠調べをしただけでは上訴審で除斥されないとしました。忌避事由は個別の事情から判断され、裁判長が相手方の訴訟代理人の女婿であるというだけでは、除斥原因にも当然の忌避事由にも当たらないとされています(最判昭和30年1月28日)。

  • 除斥法定の原因(23条1項各号)があれば当然に職務から排除されます。裁判は申立てにより又は職権でし、確認的な意味をもちます
  • 忌避裁判の公正を妨げるべき事情があるときに当事者が申し立て、理由があるとする裁判で初めて排除されます。職権ではできません
  • 回避除斥・忌避の事由があると考える裁判官が、監督権のある裁判所の許可を得て自ら職務を避けます(民事訴訟規則12条)

忌避の原因を知りながら裁判官の面前で弁論すると忌避できなくなりますが、知らなかったときや後で生じたときは忌避できます

当事者は、裁判官の面前で弁論をし、又は弁論準備手続で申述をしたときは、その裁判官を忌避することができません(24条2項本文)。忌避の原因を知りながら審理に応じた当事者が、後になって不利になってから忌避を申し立てることを防ぐためです。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは別で(同項ただし書)、知らずに弁論した当事者から忌避の機会を奪うのは酷だからです。忌避の申立てによる訴訟手続の停止を利用して訴訟を遅らせる忌避権の濫用に対しては、申立てを受けた裁判官自身が簡易に却下できるかが議論されています。

除斥・忌避の裁判は所属裁判所が決定でし、申立てがあれば急速を要する行為を除いて手続を停止し、理由があるとする決定には不服を申し立てられません

合議体の構成員である裁判官と地方裁判所の1人の裁判官の除斥又は忌避は、その裁判官の所属する裁判所が決定で裁判し、簡易裁判所の裁判官についてはその所在地を管轄する地方裁判所が裁判します(25条1項)。地方裁判所での裁判は合議体でし(同条2項)、申し立てられた裁判官はその裁判に関与できません(同条3項)。除斥又は忌避の申立てがあったときは、その決定が確定するまで訴訟手続を停止しなければなりませんが、急速を要する行為は別です(26条)。除斥又は忌避を理由があるとする決定には不服を申し立てることができず(25条4項)、理由がないとする決定には即時抗告ができます(同条5項)。当事者に特定の裁判官の裁判を受ける権利まではないからです。

板書の図解。黒板の左に「除斥原因あり」として「関与した手続→無効・やり直し」「判決確定後→再審事由(338条1項2号)」、右に「忌避原因あり」として「忌避の裁判まで→行為は有効」「忌避の裁判の後に関与→上告理由・再審事由」と書かれている。中

除斥原因のある裁判官の関与した手続は無効で再審事由にもなりますが、忌避原因があるだけの裁判官の行為は忌避の裁判まで有効です

除斥は法律上当然に生じるので、除斥原因のある裁判官は、本人や当事者がそれを知っていたかどうか、除斥の裁判があったかどうかにかかわらず、その事件で職務を行えません。その裁判官が関与した訴訟手続は無効で、除斥原因のない裁判官で構成される裁判所がやり直す必要があります。除斥原因のある裁判官が判決に関与したことは「法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと」に当たり、上告理由になり(312条2項2号)、判決が確定した後も再審事由になります(338条1項2号)。これに対し忌避は、理由があるとする裁判で初めて職務の執行ができなくなる形成的なものなので、忌避原因があるだけの裁判官がした行為は、忌避の裁判があるまでは有効です。上告理由・再審事由になるのは、忌避の裁判を受けた裁判官が判決に関与した場合です。

除斥・忌避の規定は裁判所書記官と専門委員に準用され、鑑定人には忌避の規定があります

除斥と忌避の規定は裁判所書記官に準用され、その裁判は書記官の所属する裁判所がします(27条)。書記官は調書の作成や送達の事務を通じて手続の公正にかかわるからです。専門委員にも除斥・忌避の規定が準用され(92条の6第1項)、除斥又は忌避の申立てがあったときは、その決定が確定するまで専門委員は事件の手続に関与できません(同条2項)。鑑定人には除斥の規定はありませんが、誠実に鑑定をすることを妨げるべき事情があるときは、当事者は鑑定人が陳述をする前に忌避することができます(214条1項)。

民事訴訟法 第24条第1項

裁判官について裁判の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避することができる。

民事訴訟法 第24条第2項

当事者は、裁判官の面前において弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判官を忌避することができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。

民事訴訟法 第25条第4項

除斥又は忌避を理由があるとする決定に対しては、不服を申し立てることができない。

民事訴訟法 第26条

(訴訟手続の停止)
除斥又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについての決定が確定するまで訴訟手続を停止しなければならない。ただし、急速を要する行為については、この限りでない。

試験ではこう問われる

  1. 除斥は法定の原因があれば裁判を待たずに生じ、裁判は申立てにより又は職権でする(23条)。忌避は当事者の申立てが必要で、職権で排除する決定はしない(24条1項)
  2. 前審関与とは前審の裁判の評決に加わったことをいい、口頭弁論の指揮や証拠調べをしただけでは除斥されない(最判昭和28年6月26日)
  3. 忌避の原因を知りながら面前で弁論・申述すると忌避できないが、知らなかったときや後に生じたときは忌避できる(24条2項)
  4. 除斥・忌避の裁判は所属裁判所が決定でし、簡易裁判所の裁判官は所在地の地方裁判所が裁判する(25条1項)。申立てがあれば急速を要する行為を除き決定確定まで訴訟手続を停止する(26条)
  5. 理由があるとする決定には不服申立てができず、理由がないとする決定には即時抗告ができる(25条4項・5項)
  6. 除斥原因のある裁判官が関与した手続は無効で、判決確定後も再審事由になる(338条1項2号)。忌避原因があるだけの裁判官の行為は忌避の裁判までは有効である
  7. 裁判所書記官も除斥・忌避の対象になり(27条)、専門委員にも準用される(92条の6)。鑑定人は陳述前に忌避できる(214条1項)

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