再審事由と補充性さいしんじゆうとほじゅうせい
再審事由とは、確定した終局判決を再審の訴えで取り消すために必要な重大な瑕疵で、338条1項1号から10号に限って定められています。補充性とは、当事者がその事由を控訴・上告で主張したとき、又は知りながら主張しなかったときは再審の訴えを起こせないという制限です(338条1項ただし書)。
判決が確定すると、もう争えないのが原則です。それでも、裁判官が事件の当事者の親族だった、証人がうそをついて有罪になった、訴状が届かず自分が訴えられたことも知らなかったという場合にまで判決を動かせないとすると、裁判への信頼が保てません。そこで、法律が挙げた重大な瑕疵があるときに限り、確定判決を取り消す道を開いたのが再審です。ただし、上訴で直せた瑕疵は上訴で直すべきなので、上訴で主張した事由や、知っていたのに主張しなかった事由では再審を起こせません。

再審事由は338条1項1号から10号に限られますが、判例は同じ程度に重大な瑕疵について類推適用を認めています
再審は既判力を例外的に破る非常の不服申立てなので、事由は338条1項各号に限られています。1号から3号は絶対的上告理由と重なる手続の瑕疵、4号から7号は犯罪行為が判決に影響した場合、8号から10号は判決の基礎が覆った場合などです。4号から7号は、罰すべき行為について有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したか、証拠がないという理由以外の理由でそれらを得られないときに限り、再審の訴えを起こせます(338条2項)。判例は、被疑者の死亡などで有罪判決を得られない場合には、その事実だけでなく有罪の確定判決を得る可能性があったことも立証しなければならないとしています(最判昭和52年5月27日)。限定列挙でも類推適用はでき、判例は、有効に訴状の送達がされず、被告とされた者が訴訟に関与する機会を与えられないまま判決がされた場合を、代理権の欠缺(3号)と別異に扱う理由はないとしました(最判平成4年9月10日)。重複する訴えの提起の禁止(142条)の違反は列挙されていないので、後行訴訟の判決が確定した後に、その違反を理由に再審の訴えを起こすことはできません。その後に先行訴訟で確定判決と抵触する判決がされて確定すれば、その判決が10号で再審の対象になります。
- 1号法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと
- 2号法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと
- 3号法定代理権・訴訟代理権・代理人の授権を欠いたこと
- 4号判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯したこと
- 5号刑事上罰すべき他人の行為により自白をしたこと・攻撃防御方法の提出を妨げられたこと
- 6号判決の証拠となった文書等の偽造・変造、電磁的記録の不正作出
- 7号証人・鑑定人・通訳人・宣誓した当事者等の虚偽の陳述が判決の証拠となったこと
- 8号判決の基礎となった裁判・行政処分が後の裁判・行政処分で変更されたこと
- 9号判決に影響を及ぼすべき重要な事項についての判断の遺脱
- 10号不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること
除斥原因のある裁判官の関与は再審事由ですが、忌避の原因があるだけの裁判官の関与は再審事由になりません
法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したことは再審事由です(338条1項2号)。除斥原因のある裁判官(23条1項)は、除斥の裁判の有無にかかわらず法律上職務から外れるので、これに当たります。これに対して、忌避は裁判で認められて初めて裁判官が職務から外れるので、忌避の原因があるだけで忌避の裁判を受けていない裁判官は、判決に関与することができない裁判官に当たらず、上告の理由にも再審の事由にもなりません。除斥と忌避の要件は、除斥・忌避・回避の語で扱います。
当事者が控訴・上告でその事由を主張したとき、又は知りながら主張しなかったときは、再審の訴えを起こせません
当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、再審の訴えを起こすことができません(338条1項ただし書)。これを再審の補充性といいます。上訴で直せた瑕疵は上訴で直すべきで、上訴で退けられた主張を確定後に蒸し返させるべきではないからです。前の確定判決との抵触を控訴で主張して退けられた場合も、同じ事由で再審の訴えは起こせません。判断の遺脱は、電子判決書の送達を受けて判決理由を読めば分かるので、送達を受けながら控訴しなかった当事者は知りながら主張しなかったことになり、判断の遺脱を再審事由として主張できません。反対に、再審事由を現実に知ることができず上訴できなかった者は補充性で排除されません(最判平成4年9月10日)。

訴状が有効に送達されず、又は同居者が書類を渡さずに訴訟を知らないまま判決が確定したときは、3号の再審事由があります
判例は、7歳9か月の子への補充送達は送達の趣旨を理解して書類を交付することを期待できる能力を欠いて無効であり、被告が訴訟に関与する機会を与えられないまま判決がされたときは3号の再審事由があるとし、被告は判決の確定を知らず控訴できなかったので補充性にも反しないとしました(最判平成4年9月10日)。補充送達自体が有効でも、受送達者と事実上の利害関係が対立する同居者が書類を渡さず、受送達者が訴訟を知らないまま判決がされたときは、3号の再審事由があるとされています(最決平成19年3月20日)。クレジットカードを無断で使った同居の妻が訴状を隠した事案がその例です。送達の効力と救済の詳細は、送達の瑕疵の語で扱います。登記簿上の代表者に代表権がなかった場合も、訴訟手続には表見法理の規定が適用されないので(最判昭和45年12月15日)、会社は代表権の欠缺を理由に3号で再審を求められます。
控訴審で本案判決をしたときは、第一審判決に対して再審の訴えを起こすことはできません
控訴審において事件につき本案判決をしたときは、第一審の判決に対し再審の訴えを提起することができません(338条3項)。控訴審の本案判決が第一審判決に代わって事件を解決しているので、その控訴審判決を再審の対象にすれば足りるからです。控訴棄却判決も控訴審の本案判決なので、再審の訴えは控訴審判決に対して起こします。判決の基本となる裁判に再審事由がある場合は、その裁判に独立の不服申立ての方法があっても、その事由を判決に対する再審の理由にできます(339条)。
民事訴訟法 第338条第1項次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。
一 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
三 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
四 判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯したこと。
五 刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。
六 判決の証拠となった文書その他の物件が偽造され若しくは変造されたものであったこと又は判決の証拠となった電磁的記録が不正に作られたものであったこと。
七 証人、鑑定人、通訳人又は宣誓した当事者若しくは法定代理人の虚偽の陳述が判決の証拠となったこと。
八 判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと。
九 判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。
十 不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること。
民事訴訟法 第338条第3項控訴審において事件につき本案判決をしたときは、第一審の判決に対し再審の訴えを提起することができない。
試験ではこう問われる
- 権利を害する意図で訴訟関与を妨げて取得した確定判決で執行されたときは、再審を経ずに不法行為の損害賠償を請求できる(最判昭和44年7月8日。R8 午後 問4 ウ ○)
- 再審事由は338条1項各号に限られるが、類推適用はでき、訴状が有効に送達されず訴訟に関与できないまま判決されたときは3号の類推で再審できる(最判平成4年9月10日)
- 除斥原因のある裁判官の関与は再審事由(2号)で、忌避の原因があるだけでは当たらない
- 控訴・上告で主張した事由、知りながら主張しなかった事由では再審できない(338条1項ただし書)
- 同居者が書類を渡さず訴訟を知らないまま判決が確定したときも3号の再審事由がある(最決平成19年3月20日)
- 重複起訴の看過は再審事由ではなく、抵触する後の判決は10号の対象になる
- 控訴審で本案判決をしたときは第一審判決に再審できない(338条3項)

