送達の方法と送達場所(交付送達・補充送達・差置送達・就業場所送達・出会送達・書留郵便に付する送達・送達場所の届出)そうたつのほうほうとそうたつばしょ
送達とは、裁判所が当事者その他の関係人に訴訟上の書類を法定の方式で届けることです。交付送達が原則で、補充送達・差置送達・就業場所での送達・出会送達・書留郵便等に付する送達と段階的に方法が用意され、送達場所は住所等か届け出られた場所です。
訴状や判決が相手に届いたかどうかは、訴訟係属や上訴期間の始まりを左右するので、民事訴訟法は書類を届ける手順を送達として細かく定めています。原則は本人に直接手渡す交付送達で、住所で会えなければ同居の家族に渡し、受け取りを拒まれれば置いてくることができます。それでも届かないときは書留郵便で発送した時点で届いたものとみなし、最後の手段として公示送達があります。

送達は職権で行い、事務は裁判所書記官が取り扱い、郵便又は執行官が実施し、出頭した者には書記官が自ら送達できます
送達は、特別の定めがある場合を除き職権でし(98条1項)、送達に関する事務は裁判所書記官が取り扱います(同条2項)。書類の送達を実施するのは郵便又は執行官で、郵便の場合は郵便の業務に従事する者が送達をする者になります(101条)。例外として、裁判所書記官は、その所属する裁判所の事件について出頭した者に対しては、自ら書類の送達をすることができます(102条)。別の事件の期日に出頭した者や、本訴の期日に出頭した原告に対する反訴状の送達もこれに当たります。「裁判所書記官は,その所属する裁判所の事件について出頭した者に対し,自ら送達をすることはできない」という肢(R2 午後 問1 ア)は誤りです。送達場所の届出をした当事者でも、出頭したところで書記官が自ら送達することは妨げられません。
送達は本人への交付が原則で、住所等が原則の場所であり、そこで支障があれば就業場所でもでき、住所で会えなければ補充送達・差置送達ができます
書類の送達は、送達を受けるべき者に送達すべき書類を交付してします(102条の2)。送達場所は送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所(住所等)で、法定代理人に対する送達は本人の営業所又は事務所でもできます(103条1項)。株式会社への送達は代表者に対してしますが、代表者の住所等のほか会社の営業所でもできます。住所等が知れないとき又はそこで送達するのに支障があるときは、就業場所で送達できます(103条2項)。住所が知れていても、そこで送達するのに支障があれば就業場所で送達できます。就業場所以外の送達場所で本人に会えないときは、使用人その他の従業者又は同居者で書類の受領について相当のわきまえのあるものに交付でき(補充送達。106条1項)、本人や補充送達を受けるべき者が正当な理由なく受領を拒んだときは書類を差し置くことができます(差置送達。同条3項)。補充送達の受領者は成年者に限られず、「就業場所以外の送達をすべき場所において送達を受けるべき者本人が不在の場合には,その同居者が成年者であるときに限り,当該同居者に対して送達すべき書類を交付することができる」という肢(R2 午後 問1 ウ)は誤りです。送達の方法はこのように段階的に用意されていて、本人に交付できなければ直ちに公示送達によるわけではありません。日本国内に住所等を有することが明らかでない者などには出会った場所でも送達でき(105条)、「執行官が送達をするときは,交付送達の方法によらなければならず,出会送達をすることはできない」という肢(R2 午後 問1 エ)は誤りです。

当事者・法定代理人・訴訟代理人は日本国内の送達場所を届け出なければならず、届出があればその場所に送達します
当事者、法定代理人又は訴訟代理人は、書類の送達を受けるべき場所(日本国内に限る)を受訴裁判所に届け出なければならず、送達受取人も届け出ることができます(104条1項)。訴訟代理人がいない当事者にも届出義務があります。届出があれば、送達はその場所でします(104条2項)。日本国内であれば、管轄区域外の友人宅でもかまいません。届出は送達を受ける本人がするものなので、原告が訴状の当事者欄で被告の住所に「送達を受けるべき場所」と書いても被告の届出にはなりません。
補充送達・差置送達もできないときは書留郵便等に付して発送でき、発送の時に送達があったものとみなされます
住所等で交付も補充送達も差置送達もできない場合には、裁判所書記官は、住所等や届出場所に宛てて書類を書留郵便等に付して発送することができ(107条1項)、その発送の時に送達があったものとみなされます(同条3項)。実際に受け取ったかどうかは問わないので、保管期間が過ぎて書留郵便が裁判所に戻ってきても、送達の効力は失われず、訴訟係属の効果にも影響はありません。最判平成10年9月10日は、書記官が就業場所が不明であると判断して付郵便送達をした場合、後で就業場所の存在が判明しても、資料の収集に裁量の逸脱がありその判断が合理性を欠くなどの事情がない限り送達は適法であるとしました。他方、宛先は真実の住所等でなければならず、発送時に既に転居していた住民票上の住所に宛てて発送しても送達の効力は生じません(大判昭和6年6月24日)。
訴訟代理人がいても本人への送達は有効で、代理人が数人あるときは一人に送達すれば足ります
訴訟無能力者に対する送達はその法定代理人にし(99条1項)、「訴訟無能力者に対する送達は,その法定代理人にする」という肢(R2 午後 問1 オ)は正しいです。数人が共同して代理権を行うべき場合でも、送達はその一人にすれば足ります(同条2項)。未成年者の両親が共同親権者であっても、一方に送達すれば足ります。未成年者本人に送達して本人が受け取った場合でも、法定代理人が追認すれば瑕疵は治癒され、改めて法定代理人に送達する必要はありません。訴訟代理人が数人ある場合も、一人に送達すれば足ります。最判昭和25年6月23日は、訴訟代理人があるときは代理人に送達するのが通例であるが、当事者本人に対する送達を妨げるものではないとしました。なお、最判平成8年5月28日は、不適法で補正の余地が全くない訴えを口頭弁論を経ずに判決で却下する場合には、被告に訴状を送達しなくてよいとしています。訴えの取下げが被告の同意を要する段階で書面でされたときは、その書面を被告に送達しなければなりません(261条5項)。
民事訴訟法 第102条(裁判所書記官による送達)
裁判所書記官は、その所属する裁判所の事件について出頭した者に対しては、自ら書類の送達をすることができる。
民事訴訟法 第103条第2項前項に定める場所が知れないとき、又はその場所において送達をするのに支障があるときは、書類の送達は、送達を受けるべき者が雇用、委任その他の法律上の行為に基づき就業する他人の住所等(以下「就業場所」という。)においてすることができる。送達を受けるべき者(次条第一項に規定する者を除く。)が就業場所において書類の送達を受ける旨の申述をしたときも、同様とする。
民事訴訟法 第104条第1項当事者、法定代理人又は訴訟代理人は、書類の送達を受けるべき場所(日本国内に限る。)を受訴裁判所に届け出なければならない。この場合においては、送達受取人をも届け出ることができる。
民事訴訟法 第107条第3項前二項の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その発送の時に、送達があったものとみなす。
試験ではこう問われる
- 送達は職権で、事務は書記官、実施は郵便又は執行官である(98条・101条)。書記官は所属裁判所の事件で出頭した者に自ら送達できる(102条、R2 午後 問1 ア ×)
- 交付送達が原則である(102条の2)。住所等で支障があれば就業場所でもでき(103条2項)、日本国内に住所等が明らかでない者などには出会った場所でもできる。執行官も出会送達ができる(105条、R2 午後 問1 エ ×)
- 補充送達は、書類の受領について相当のわきまえのある同居者・従業者にでき、成年者に限られない(106条1項、R2 午後 問1 ウ ×)。正当な理由なく受領を拒めば差置送達である(同条3項)
- 送達場所の届出は訴訟代理人がいなくても義務で、日本国内に限る(104条1項)。原告が訴状に被告の送達場所と書いても届出にならない
- 書留郵便等に付する送達は発送時に送達とみなされ(107条3項)、返戻されても影響がない。発送時に転居済みの住民票上の住所に宛てた送達は無効である
- 訴訟無能力者に対する送達は法定代理人にする(99条1項、R2 午後 問1 オ ○)。法定代理人・訴訟代理人が数人でも一人で足りる(99条2項)
- 訴訟代理人がいても本人への送達は有効である(最判昭和25年6月23日)

