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上告理由と上告受理申立てじょうこくりゆうとじょうこくじゅりもうしたて

民事訴訟法 第11章 上訴

上告理由とは、上告をするために主張しなければならない原判決の違法の事由で、最高裁判所への上告では憲法違反(312条1項)と絶対的上告理由(同条2項)に限られます。上告受理の申立てとは、判例違反その他法令の解釈に関する重要な事項を含む事件について、最高裁判所に上告審として受理するよう求める申立てです(318条)。

最高裁判所は全国に一つしかないので、控訴審の判決に不満があるというだけで何でも持ち込めるとすると、本当に判断すべき憲法や法令の解釈の問題に手が回りません。そこで、最高裁判所への上告は、憲法違反と、裁判所の構成の誤りのような重大な手続違反があるときに限っています。それ以外の法令違反は、最高裁判所が重要だと認めて受理した事件に限って取り上げる仕組みにしました。これが上告受理の申立てです。

最高裁判所の建物の前に二つの入口がある場面。左の扉の看板に「上告:憲法違反・絶対的上告理由」、右の扉の看板に「上告受理の申立て:判例違反・法令解釈の重要事項」。男性(札「上告人」)が「判決に影響する法令違反」と書かれた書類を抱えて左の扉の前

最高裁判所への上告理由は憲法違反と絶対的上告理由に限られ、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反は高等裁判所への上告理由です

上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするとき(312条1項)と、2項に掲げる重大な手続違反(絶対的上告理由)を理由とするとき(312条2項)にすることができます。判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反は、高等裁判所にする上告に限って上告理由になります(312条3項)。高等裁判所が上告審になるのは、簡易裁判所が第一審で地方裁判所が控訴審の事件です。上告理由は憲法違反だけではありません。他方、最高裁判所への上告では判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反は上告理由にならず、高等裁判所への上告では法令違反も理由になります。

  • 憲法違反(312条1項)最高裁判所への上告 ○/高等裁判所への上告 ○
  • 絶対的上告理由(312条2項)最高裁判所への上告 ○/高等裁判所への上告 ○
  • 判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反(312条3項)最高裁判所への上告 ×(上告受理の申立てで)/高等裁判所への上告 ○

絶対的上告理由は重大な手続違反で、判決に影響したかどうかを問わず上告理由になります

312条2項の事由は、判決の結論に影響したかどうかを確かめにくい重大な手続違反なので、影響の有無を問わずに上告理由とされています。判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をすると直接主義(249条1項)に反し、法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと(312条2項1号)に当たります(最判昭和32年10月4日)。裁判官が交代したのに弁論の更新をしないまま判決したときも同じです。判決の理由に食違いがあることも、絶対的上告理由に当たります(312条2項6号)。法律により判決に関与することができない裁判官(2号)は除斥原因のある裁判官や忌避の裁判を受けた裁判官をいい、忌避の原因があるだけで忌避の裁判を受けていない裁判官は当たりません。忌避は裁判で認められて初めて職務から外れるからです。

  • 1号法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと(口頭弁論に関与しない裁判官の判決、弁論の更新をしない判決)
  • 2号法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと(除斥原因・忌避の裁判)
  • 2号の2・3号日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定・専属管轄に関する規定に違反したこと(6条1項の特許権等の専属管轄の一部を除く)
  • 4号法定代理権・訴訟代理権・代理人の授権を欠いたこと(追認があれば除く)
  • 5号口頭弁論の公開の規定に違反したこと
  • 6号判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること

最高裁判所は、判例違反その他法令の解釈に関する重要な事項を含む事件を、申立てにより決定で上告審として受理できます

上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができます(318条1項)。上告受理の申立てでは、312条1項・2項の事由(憲法違反と絶対的上告理由)を理由にすることはできません(318条2項)。それらは上告で主張するからです。最高裁判所は、申立ての理由のうち重要でないと認めるものを排除でき(318条3項)、受理の決定があれば上告があったものとみなされ、排除されなかった理由が上告の理由とみなされます(318条4項)。受理するかどうかは事件が法令解釈上の重要事項を含むかで決まり、原判決の結論が正しいかとは関係がないので、結論として上告を棄却すべきときでも受理の決定はできます。

高等裁判所の書記官室の受付の場面。カウンターに「上告受理申立書」が置かれている。先生が裁判所書記官役(札「原裁判所」)として立ち、手元の判子「却下」を押そうとする男性職員を手で制している。壁の掲示「重要な事項を含むかを判断するのは最高裁判所

受理すべき事件かどうかは最高裁判所だけが判断し、原裁判所は重要事項を含まないことを理由に申立てを却下できません

上告受理の申立ては、上告受理申立書を原裁判所に提出してします(318条5項・314条1項)。原裁判所は、申立てが不適法で補正できないときや、理由書が出されないときは決定で却下しますが(318条5項・316条1項)、判例は、事件が318条1項の事件に当たるかどうかは最高裁判所だけが判断できる事項であり、原裁判所は、事件が同項の事件に当たらないことを理由に上告受理の申立てを却下することはできないとしました(最決平成11年3月9日)。上告受理の申立てにも判決の確定を遮断する効力があります(116条)。

経験則違反や釈明義務違反も、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反として上告受理申立ての理由になり得ます

事実認定は事実審の専権ですが、自由心証主義(247条)も論理法則と経験則に従うことを前提にしているので、高度の蓋然性のある経験則に反する事実認定は法令違反になります。判例は、時価と代金が著しくかけ離れた売買を、特段の事情を審理しないまま真実の売買と認めた原判決について、経験則上是認できないとして審理不尽・理由不備の違法により破棄しました(最判昭和36年8月8日)。経験則の取捨選択の当不当も、上告審で争う余地があります。最高裁判所への上告では、経験則違反は上告理由ではなく上告受理の申立ての理由として主張することになります。釈明義務違反も同じで、判例は、上告受理の申立ての理由とされた釈明義務違反について、釈明権の行使を怠った違法があり、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして原判決を破棄しました(最判平成17年7月14日)。

民事訴訟法 第312条

(上告の理由)
上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
一 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
二 日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。
三 専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
五 口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六 判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。
高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。

民事訴訟法 第318条

(上告受理の申立て)
上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる。
前項の申立て(以下「上告受理の申立て」という。)においては、第三百十二条第一項及び第二項に規定する事由を理由とすることができない。
第一項の場合において、最高裁判所は、上告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除することができる。
第一項の決定があった場合には、上告があったものとみなす。この場合においては、第三百二十条の規定の適用については、上告受理の申立ての理由中前項の規定により排除されたもの以外のものを上告の理由とみなす。
第三百十三条から第三百十五条まで及び第三百十六条第一項の規定は、上告受理の申立てについて準用する。

試験ではこう問われる

  1. 最高裁判所への上告理由は憲法違反(312条1項)と絶対的上告理由(同条2項)だけ
  2. 判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反は高等裁判所への上告理由(312条3項)
  3. 口頭弁論に関与しない裁判官の判決・弁論の更新をしない判決は312条2項1号に当たる(最判昭和32年10月4日)
  4. 理由不備・理由の食違いは絶対的上告理由(312条2項6号)
  5. 忌避の原因があるだけの裁判官の関与は上告理由・再審事由にならない
  6. 最高裁判所は判例違反その他法令解釈上の重要事項を含む事件を申立てにより決定で受理できる(318条1項)
  7. 上告受理の申立てでは憲法違反・絶対的上告理由を理由にできない(318条2項)
  8. 重要でない理由は排除できる(318条3項)。上告を棄却すべきときでも受理はできる
  9. 原裁判所は重要事項を含まないことを理由に上告受理の申立てを却下できない(最決平成11年3月9日)
  10. 経験則違反・釈明義務違反も法令違反として上告受理申立ての理由になり得る(最判昭和36年8月8日・最判平成17年7月14日)

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