固有必要的共同訴訟の成否こゆうひつようてききょうどうそしょうのせいひ
固有必要的共同訴訟とは、関係者全員が共同して訴え又は訴えられなければ当事者適格が認められない共同訴訟です。一人でも欠ければ訴えは不適法として却下されます。どの訴訟がこれに当たるかは、訴訟物である権利の性質を基本にして、紛争解決の実効性も考えて判断されます。
三人で共有している土地を他人が自分のものだと言い張っているとき、共有者の一人だけが訴えて負けたときに、他の二人の権利まで失われたことにするわけにはいきません。そこで、ある種の訴訟では関係者全員がそろって初めて訴えることができるとされています。これが固有必要的共同訴訟です。全員をそろえるのは大変なので、どの訴訟がこれに当たるかは、一人で処分できる権利かどうかと、全員をそろえなければ紛争が片付かないかを考えて、判例が一つずつ決めてきました。

固有必要的共同訴訟では関係者全員が当事者にならなければ当事者適格がなく、一人でも欠ければ訴えは却下されます
固有必要的共同訴訟は、訴訟共同の必要がある共同訴訟で、当事者として必要な者が一人でも欠ければ当事者適格を欠き、訴えは却下されます。判決は全員について合一に確定しなければならないので、審判には40条が適用されます(必要的共同訴訟の審判の語で扱います)。固有必要的共同訴訟になるのは、まず、他人間の法律関係を変動させる形成の訴えです。検察官が夫婦を被告とする婚姻取消しの訴えや、共有者全員の間で権利を形成する共有物分割の訴えがこれに当たります。共有物分割の訴えは、分割を求める共有者が他の共有者全員を被告としなければなりません(大判明治41年9月25日)。次に、数人が共同して管理処分すべき財産に関する訴訟です。敗訴すれば権利を処分したのと同じ結果になるので、管理処分権を共同で持つ全員が当事者になる必要があります。どこまでを固有必要的共同訴訟とするかは、実体法上の管理処分権を基準にする見解と、紛争の一回的解決など訴訟政策を重視する見解がありますが、判例は実体法上の権利の性質を基本にしつつ、訴訟上の不都合を考えて結論を出しています。
- 固有必要的共同訴訟とされたもの共有者全員の共有権の確認とそれに基づく登記請求、入会権の確認、遺産確認、相続人の地位不存在確認、共有物分割、隣地が共有の筆界確定、婚姻取消しの訴え
- 固有必要的共同訴訟でないとされたもの共有持分権の確認、持分権に基づく不実登記の抹消、入会地の使用収益権に基づく妨害排除、共同相続人の所有権移転登記義務の履行請求、建物共有者に対する建物収去土地明渡し、共同賃借人に対する明渡し
共有者全員の共有権の確認は固有必要的共同訴訟ですが、持分権の確認や持分権に基づく不実登記の抹消は各共有者が単独でできます
判例は、一個の物を共有する数名の者全員が共同原告となり、共有権(数人が共同して有する一個の所有権)に基づいてその確認を求めるときは、固有必要的共同訴訟と解するのが相当であるとしました(最判昭和46年10月7日)。共有物全体の帰属を一人で決めることはできないからです。これに対し、各共有者の持分権は共有物の全部に及ぶので(民法249条)、各共有者は単独で、係争地が自己の共有持分権に属することの確認を求めることができます(最判昭和40年5月20日)。「土地の共有者の一人が、当該土地が自己の所有に属すると主張する第三者に対し、当該土地の共有持分権を有することの確認を求める訴えに係る訴訟には、当該土地の共有者全員が当事者として関与しなければならない」という肢(R8 午後 問1 ア)は誤りです。また、権原のない第三者が不実の所有権移転登記をしたとき、共有者の一人が持分に基づいてその抹消を求めるのは、妨害排除の請求で保存行為に当たるので、単独でできます(最判昭和31年5月10日)。共有地について「無権利のDが自己名義への所有権の移転の登記をした場合には,Aは,単独で,Dに対し,その所有権の移転の登記の抹消登記手続を求めることができる」という肢(R2 問10 ア)は正しいです。

共同相続人や共同賃借人が負う義務は不可分債務なので、その一人だけを被告にでき、建物共有者に対する建物収去土地明渡しも固有必要的共同訴訟ではありません
被告の側が複数の場合、判例は、各自が全部について義務を負う不可分債務であれば、一人だけを被告にできるとしています。共同相続人が被相続人から相続した所有権移転登記義務は不可分債務なので、買主や受贈者は共同相続人の一人を被告にできます(最判昭和36年12月15日、最判昭和44年4月17日)。土地の所有者が、地上の建物の共有者を相手に所有権に基づいて建物収去土地明渡しを求める訴訟について、判例は、共有者の義務は建物全体に及ぶ不可分債務であり、全員を被告としなければならないとすると、原告は全員を探し出さねばならず、一部の者が争わない場合にも訴訟を続けなければならないなどの不都合があるとして、固有必要的共同訴訟ではないとしました(最判昭和43年3月15日)。建物共有者の一人だけを被告とする訴えも適法です。同じ訴訟の途中で被告が死亡し、共同相続人の一部だけが受継した場合も、受継した者との間だけで審理・判決できます。共同賃借人が負う目的物の返還義務も不可分債務なので、賃貸人は共同賃借人の一人だけに明渡しを求められます(大判大正7年3月19日)。
入会権の確認、遺産確認、相続人の地位不存在確認は関係者全員が当事者となる必要があり、訴えに同調しない者は被告に加えることができます
入会権は入会集団の構成員全員に総有的に帰属する権利なので、第三者を相手に入会権の確認を求める訴えは構成員全員が共同してのみ提起できる固有必要的共同訴訟です(最判昭和41年11月25日)。入会権の確認訴訟で構成員の一部が当事者となっていなければ、訴え却下の判決をすべき場合に当たります。ただし、構成員が入会地を使用収益する権能は各自が単独で行使できるものなので、使用収益権の確認やそれに基づく妨害排除は各自が単独で求められます(最判昭和57年7月1日)。全員をそろえることを求めると、一人が反対するだけで誰も訴えられなくなります。そこで判例は、入会権の確認を求める構成員は、訴えの提起に同調しない構成員を被告に加えて訴えを提起できるとしました(最判平成20年7月17日)。同調しない者も当事者になるので、判決は全員に及びます。共同相続人の間で、ある財産が遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める遺産確認の訴えも、共同相続人全員が当事者として関与し合一に確定する必要がある固有必要的共同訴訟です(最判平成元年3月28日)。「遺産確認の訴えに係る訴訟には、共同相続人全員が当事者として関与しなければならない」という肢(R8 午後 問1 イ)は正しいです。共同相続人の一人が相続欠格事由に当たるとして、その者が相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えも、遺産分割の前提を決めるものなので、共同相続人全員が当事者となる固有必要的共同訴訟で(最判平成16年7月6日)、他の共同相続人の一人だけを被告とする訴えは不適法です。
隣地が共有なら筆界確定の訴えは共有者全員が当事者となる固有必要的共同訴訟で、同調しない共有者は隣地の所有者とともに被告にできます
判例は、土地の境界は土地の所有権と密接な関係を持ち、隣接する土地の所有者全員について合一に確定すべきものであるから、隣接する土地の一方又は双方が数名の共有に属する場合には、境界の確定を求める訴えは共有者全員が共同してのみ訴え又は訴えられることを要する固有必要的共同訴訟であるとしました(最判昭和46年12月9日)。被告側が共有なら共有者全員を被告にしなければなりません。原告側が共有で一部の共有者が訴えに同調しないときは、その余の共有者は、隣接地の所有者とともに同調しない者を被告にして訴えを提起できます(最判平成11年11月9日)。これは固有必要的共同訴訟であることを前提にした扱いで、類似必要的共同訴訟とするのは誤りです。

共同訴訟人となるべき者が欠けていても、口頭弁論の終結前にその者が共同訴訟参加をすれば瑕疵は治癒されます
固有必要的共同訴訟で当事者となるべき者が欠けたまま訴えが提起されても、すぐに却下されるわけではありません。欠けていた者は、訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合として、共同訴訟人としてその訴訟に参加でき(52条1項)、参加すれば当事者適格の欠缺は治癒されます(大判昭和9年7月31日)。別に訴えを起こして弁論の併合を求めることもできます。
民事訴訟法 第52条第1項訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合には、その第三者は、共同訴訟人としてその訴訟に参加することができる。
試験ではこう問われる
- 遺産確認の訴えは、共同相続人全員が当事者として関与しなければならない(最判平成元年3月28日。R8 午後 問1 イ ○)
- 共有者の一人が第三者に自己の共有持分権の確認を求める訴えに、共有者全員の関与は要らない(最判昭和40年5月20日。R8 午後 問1 ア ×)
- 無権利者が自己名義にした所有権移転登記の抹消は、共有者の一人が単独で求められる(最判昭和31年5月10日。R2 問10 ア ○)
- 共有者全員の共有権の確認・共有物分割・入会権の確認・相続人の地位不存在確認・隣地が共有の筆界確定は固有必要的共同訴訟である
- 共同相続人の所有権移転登記義務、建物共有者の建物収去土地明渡義務、共同賃借人の明渡義務は不可分債務で、一人を被告にできる
- 訴えに同調しない者は被告に加えることができる(最判平成11年11月9日・最判平成20年7月17日)
- 欠けていた者が共同訴訟参加すれば、当事者適格の欠缺は治癒される(52条1項)

