反訴はんそ
反訴とは、訴訟の係属中に、被告が本訴の手続を使って原告を相手に提起する訴えです。本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求について、事実審の口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に提起できます(146条1項)。
お金を返せと訴えられた被告が、「むしろそちらがこちらの代金を払っていない」と言い返したいとき、別の訴えを起こすと、同じ事実を二つの法廷で調べることになり、判断が食い違うおそれもあります。そこで、被告が今の訴訟の中で原告を逆に訴えることが認められています。これが反訴です。ただ、原告は自分で選んだわけでもない請求に巻き込まれるので、関連のある請求に限るなど、原告の利益と訴訟の進み具合に配慮した枠があります。

反訴は、本訴の請求又は防御の方法と関連する請求について、事実審の口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に提起できます
被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができます(146条1項本文)。本訴の裁判所が本来は反訴請求の管轄を持たなくても、本訴の係属する裁判所に提起できますが、反訴請求が他の裁判所の専属管轄に属するときは除かれます(同項1号)。ただし、当事者が11条の合意で定めた専属管轄は除かれているので、合意による専属管轄の請求は反訴にできます。反訴の提起で著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときもできません(同項2号)。関連性については、占有の訴えに対して本権に基づく反訴を提起することも、占有の訴えを本権に関する理由で裁判することを禁じる民法202条2項に反せず許されるとした判例があります(最判昭和40年3月4日)。口頭弁論の終結に至るまでとは、本訴の事実審の口頭弁論の終結までをいいます。判例は、上告審は法律審なので、上告審では反訴を提起できないとしました(最判昭和43年11月1日)。相手方が同意しても同じです。
関連性の要件は原告を守るための要件なので、原告が異議なく応訴すれば関連がなくても適法になり、要件を欠く反訴は却下されます
関連性を求めるのは、本来なら別の訴えで争うはずの請求について、原告が意に反して同じ手続での応訴を強いられないようにするためで、訴えの変更で請求の基礎の同一性を求めるのと同じ趣旨です。そのため、原告が反訴の提起に同意し、又は異議を述べずに反訴の本案について応訴したときは、関連性を欠く反訴も適法と解されています。これに対し、著しく訴訟手続を遅滞させないことは公益のための要件なので、同意があっても外れません。要件を欠く反訴の扱いについて、判例は、反訴は訴訟係属中の新訴の提起で、その併合要件は同時に反訴提起の訴訟要件であるから、要件を欠く反訴は不適法として終局判決で却下すべきだとしました(最判昭和41年11月10日)。反訴が独立の訴えとしての要件を備えていても、弁論を分離して独立の訴えとして審理する義務はありません。

控訴審の反訴には相手方の同意が要りますが、第一審で審理された防御方法に基づく反訴は同意なしに提起できます
控訴審においては、反訴の提起は、相手方の同意がある場合に限りすることができます(300条1項)。控訴審で初めて反訴請求が審理されると、原告はその請求について第一審の審理を受ける機会を失うからです。相手方が異議を述べないで反訴の本案について弁論をしたときは、反訴の提起に同意したものとみなされます(同条2項)。もっとも、この同意は審級の利益を守るためのものなので、反訴請求について第一審で実質的に審理されていれば要りません。判例は、土地の明渡請求に対して被告が賃借権を抗弁として主張し、第一審がこれを認めて請求を棄却した後、控訴審で被告が賃借権存在確認の反訴を提起した事案で、原告に一審を失う不利益を与えないから同意は要らないとしました(最判昭和38年2月21日)。
反訴は独立の訴えなので、反訴状は裁判所が送達し、訴訟代理人の提起には特別の委任が要り、補助参加人は提起できません
反訴は攻撃防御方法ではなく判決を求める独立の訴えなので、訴えに関する規定によります(146条4項)。反訴状は裁判所に提出し、裁判所が反訴被告に送達します。反訴を起こすかどうかは新しい請求について既判力を受ける危険を負う決定なので、訴訟代理人が反訴を提起するには特別の委任が要ります(55条2項1号)。他方、相手方から提起された反訴に応じる訴訟行為は、委任を受けた事件について改めて委任を受けなくてもできます(55条1項)。補助参加人は、すでに係属している請求について被参加人を援助する立場にとどまり、新しい請求を持ち込むことはできず、被参加人である被告のために反訴を提起することはできません(45条1項参照)。
本訴が取り下げられても反訴の係属は残り、その後の反訴の取下げには相手方の同意が要りません
反訴は独立の訴えなので、原告が本訴を取り下げ、被告がそれに同意しても、反訴の係属は消えません。反訴の取下げがあったとみなす規定もありません。本訴は初めから係属していなかったものとみなされますが(262条1項)、本訴についてされた訴訟行為は反訴の審判との関係では効力を持ち続けると解されています。本訴を自分で取り下げた原告が反訴の続行を被告に強いる理由はないので、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げには相手方の同意が要りません(261条2項ただし書)。相手方が反訴の本案について弁論した後でも同じです。
簡易裁判所の通常の手続では反訴ができますが、少額訴訟と手形訴訟ではできず、地方裁判所の管轄に属する反訴は相手方の申立てで移送されます
簡易裁判所の通常の訴訟手続でも反訴は提起できます。これに対し、一期日で審理を終えることを予定する少額訴訟では反訴を提起できず(369条)、証拠を書証に限って迅速に進める手形訴訟でもできません(351条)。少額訴訟では、同一事故に基づく損害賠償請求であっても反訴は提起できません。簡易裁判所で被告が地方裁判所の管轄に属する請求を反訴でした場合、相手方の申立てがあるときは、簡易裁判所は決定で本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければなりません(274条1項)。原告が本来なら地方裁判所で審理を受けられたはずの請求に、簡易裁判所の手続で応じさせられないようにするためで、職権ではなく申立てが要件です。「簡易裁判所に提起された貸金 100 万円の返還を求める本訴に対し、被告が適法な反訴により地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において、本訴原告(反訴被告)の申立てがあるときは、簡易裁判所は、決定で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない」という肢(R5 午後 問1 オ)は正しいです。この移送の決定には不服を申し立てることができません(同条2項)。

民事訴訟法 第146条第1項被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 反訴の目的である請求が他の裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属するとき。
二 反訴の提起により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき。
民事訴訟法 第300条第1項控訴審においては、反訴の提起は、相手方の同意がある場合に限り、することができる。
民事訴訟法 第274条第1項被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において、相手方の申立てがあるときは、簡易裁判所は、決定で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない。この場合においては、第二十二条の規定を準用する。
試験ではこう問われる
- 簡易裁判所で被告が地方裁判所の管轄に属する請求を反訴でしたときは、原告の申立てにより、決定で本訴と反訴を地方裁判所に移送しなければならない(274条1項。R5 午後 問1 オ ○)
- 債務不存在確認の本訴の後に全額の支払を求める反訴が出されると、本訴は確認の利益を欠く(R8 午後 問2 ウ ○)
- 所有権確認の本訴に被告の所有権に基づく返還の反訴が出されても、本訴の訴えの利益は失われない(R4 午後 問3 イ ×)
- 控訴審の反訴は相手方の同意が要り、第一審で認められた防御方法に基づく反訴なら同意は要らない(300条1項、最判昭和38年2月21日。H28 午後 問5 イ ○・出題当時)
- 本訴取下げ後の反訴の取下げには、相手方が反訴の本案について弁論した後でも同意が要らない(261条2項ただし書。H26 午後 問5 エ ×・出題当時)
- 上告審・少額訴訟・手形訴訟では反訴を提起できない(最判昭和43年11月1日・369条・351条)
- 訴訟代理人の反訴の提起には特別の委任が要り、補助参加人は反訴を提起できない(55条2項1号)

