応訴管轄(12条)おうそかんかつ
応訴管轄とは、管轄のない第一審裁判所に訴えが起こされても、被告が管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときに、その裁判所に生じる管轄です(12条)。
管轄のない遠くの裁判所に訴えられても、被告が「ここで構わない」と中身の反論を始めたら、わざわざ管轄のある裁判所に移す必要はありません。任意管轄は主に被告の応訴の負担を軽くするためのものなので、被告がその利益を手放したと見られる態度をとった時点で、その裁判所に管轄を認めます。これが応訴管轄で、被告が管轄を争う意思を示していれば生じません。

応訴管轄は、被告が第一審で管轄違いの抗弁を出さずに本案について弁論するか弁論準備手続で申述したときに生じます
12条の要件は、第一審裁判所であること、被告が管轄違いの抗弁を提出しないこと、本案について弁論をし又は弁論準備手続において申述をしたことの三つです。被告が管轄を争わずに本案の審理に応じた以上、管轄の利益を放棄したものとして扱い、移送するより訴訟経済にかなうからです。管轄の判断は本案より先にされるので、管轄違いの抗弁を出したうえで本案についても弁論した場合は、管轄を争う意思が示されていて応訴管轄は生じません。応訴管轄の規定があるので、裁判所は法定の専属管轄の違反でない限り、被告から管轄違いの指摘があるまでは管轄を気にせず手続を進めることができます。
本案についての弁論は期日での口頭の陳述をいうので、答弁書を提出しただけや期日の変更を申し立てただけでは応訴管轄は生じません
本案について弁論するとは、被告が訴訟物である権利又は法律関係について事実上又は法律上の陳述をすることをいい、事実や理由を付けずに請求棄却を求める申立てをするだけでは足りないとした古い判例があります(大判大正9年10月14日)。口頭弁論の期日で口頭で陳述することが必要なので、本案の主張を書いた答弁書を裁判所に提出しただけでは、まだ応訴管轄は生じません。訴訟要件の欠缺を理由に訴えの却下を求めることも本案についての弁論ではないので、「被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出せずに、訴訟要件が欠けることを理由として訴えの却下を求めた場合には、応訴管轄が生ずる」という肢(R5 午後 問1 ア)は誤りです。第1回口頭弁論期日の前に期日の変更を申し立てることも、本案についての弁論ではありません。

応訴管轄は事物管轄の違いにも専属的合意に反する提訴にも生じますが、法定の専属管轄には生じません
12条は管轄の種類を限っていないので、土地管轄だけでなく事物管轄の違いについても応訴管轄が生じます。簡易裁判所の管轄に属する事件を地方裁判所に起こした場合も、その逆も同じです。当事者が専属的合意をした場合も、その専属性は当事者の意思によるもので法令の専属管轄ではないので、合意に反する裁判所で被告が応訴すれば管轄が生じます(大判大正10年5月18日)。この場合、合意した裁判所へ移送しなければならないわけではありません。これに対し、訴えについて法令に専属管轄の定めがある場合には12条は適用されず(13条1項)、被告が応訴しても管轄は生じません。法定の専属管轄は公益によるもので、被告の意思で動かせないからです。
- 生じる管轄違いの抗弁を出さずに口頭弁論で本案の陳述をした/弁論準備手続で本案の申述をした/事物管轄の違い/専属的合意に反する提訴
- 生じない管轄違いの抗弁を出したうえで本案の弁論をした/答弁書を提出しただけ/期日の変更を申し立てただけ/理由を付けず請求棄却を求めただけ/法定の専属管轄の違反/控訴審での応訴
民事訴訟法 第12条(応訴管轄)
被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判所は、管轄権を有する。
民事訴訟法 第13条第1項第四条第一項、第五条、第六条第二項、第六条の二、第七条及び前二条の規定は、訴えについて法令に専属管轄の定めがある場合には、適用しない。
試験ではこう問われる
- 応訴管轄は、被告が第一審で管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論し、又は弁論準備手続で申述したときに生じる(12条)
- 管轄違いの抗弁を出さずに訴訟要件の欠缺を理由として訴えの却下を求めただけでは、本案についての弁論ではないので生じない(R5 午後 問1 ア ×)
- 管轄違いの抗弁を出したうえで本案について弁論しても、応訴管轄は生じない
- 答弁書を提出しただけや、第1回期日前に期日の変更を申し立てただけでは生じない
- 事物管轄の違いでも生じる
- 専属的合意に反する提訴でも、被告が応訴すれば生じる(大判大正10年5月18日)
- 法定の専属管轄には生じない(13条1項)

