判決の効力の全体像(既判力・執行力・形成力・参加的効力・反射効)はんけつのこうりょくのぜんたいぞう
判決の効力とは、確定した判決などが当事者や第三者に及ぼす法的な力の総称で、後訴を拘束する既判力(114条)、強制執行を可能にする執行力、法律関係を変動させる形成力、補助参加人に及ぶ参加的効力(46条)などがあります。判例が認めない反射効も、この区別の中で位置づけられます。
裁判で勝っても、その判決が何をしてくれるかは訴えの種類で違います。お金の支払を命じる判決なら、相手が払わなければ強制執行ができます。離婚の判決なら、確定した瞬間に夫婦でなくなります。どの判決でも、同じ争いをもう一度持ち出すことは許されなくなります。判決の効力は、こうした働きを既判力・執行力・形成力などに分けて整理したもので、効力ごとに誰に及ぶかも違います。

確定判決の効力には、後訴を拘束する既判力、強制執行を可能にする執行力、法律関係を変動させる形成力があり、判決の種類で備わる効力が違います
既判力は、確定判決の判断が後の訴訟で当事者と裁判所を拘束する効力で、主文に包含するもの、つまり訴訟物の判断について生じます(114条1項)。どの判決にも生じ、訴え却下の訴訟判決にも訴訟要件を欠くという判断について生じます。「訴えを却下する判決は、当該判決において訴えが不適法である理由とされた訴訟要件の欠缺について、既判力を有しない」という肢(R8 午後 問4 イ)は誤りです。執行力は、判決で命じた給付を強制執行で実現できる効力で、給付判決にだけ備わり、確定判決と仮執行宣言付判決が債務名義になります(民事執行法22条1号・2号)。「例えば,仮執行の宣言を付した判決は債務名義に該当します」という肢(R2 午後 問7 イ)は正しいです。形成力は、判決の確定によって法律関係を変動させる効力で、形成判決にだけ備わります。給付の訴えを棄却する判決は給付を命じないので執行力がなく、給付請求権が存在しないことを既判力で確定するだけで、性質は確認判決です。同じ理由で、形成の訴えを棄却する判決も、形成要件がないことを確定する確認判決です。
- 給付判決(請求認容)既判力と執行力があります
- 確認判決(請求認容・棄却)既判力だけです
- 形成判決(請求認容)既判力と形成力があります
- 請求棄却判決(給付・形成の訴え)請求権・形成要件の不存在を確定する確認判決で、既判力だけです
- 訴え却下判決却下の理由となった訴訟要件の欠缺について既判力が生じます
形成判決は確定によって法律関係を変動させ、形成の効果には遡及するものと将来に向かってのみ生じるものがあります
形成判決の形成力は、判決の確定によって生じ、当事者の届出や意思表示を待ちません。離婚判決が確定すれば、その時に婚姻は解消され、その後の戸籍の届出は既に生じた変動を報告するものにすぎず、届出がなくても婚姻解消の効果は生じています。形成の効果がいつに遡るかは実体法の定めによります。婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生じる(民法748条1項)のに対し、認知は出生の時にさかのぼって効力を生じます(民法784条本文)。形成判決になるのは請求を認容する判決だけで、離婚請求を棄却する判決は離婚原因がないことを確定する確認判決です。

効力ごとに及ぶ人の範囲が違い、既判力は原則として当事者だけに及びますが、人事訴訟や会社の組織に関する訴えでは第三者にも及びます
既判力は、手続に関与して攻撃防御の機会を与えられた当事者に及ぶのが原則で、例外として115条1項が訴訟担当の被担当者、口頭弁論終結後の承継人、請求の目的物の所持者に拡張します。人事訴訟の確定判決や会社の組織に関する訴えの認容判決は、法律関係を画一的に確定する必要から第三者にも効力が及びます(対世効)。参加的効力は、補助参加した者が被参加人と敗訴の責任を分け合う効力で、既判力とは別のものです(46条)。反射効は、当事者間の判決が実体法上の依存関係にある第三者に有利又は不利に及ぶとする考え方ですが、判例は認めていません。法律要件的効力は、確定判決の存在が民法などで法律要件とされていることによる効果で、確定判決で確定した権利の時効期間が10年になる(民法169条1項)のがその例です。それぞれの範囲は、主観的範囲・対世効・参加的効力・反射効の各語で扱います。
- 既判力当事者と115条1項2号〜4号の者に及びます。人事訴訟・会社の組織に関する訴えの認容判決では第三者にも及びます
- 執行力債務名義に表示された当事者と、その承継人・目的物の所持者に及びます(民事執行法23条)
- 形成力法律関係そのものが変わるので、誰もがその変動を認めなければなりません
- 参加的効力補助参加人と被参加人の間で働きます(46条)
- 反射効判例は認めていません
民事訴訟法 第114条第1項確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。
民事訴訟法 第46条(補助参加人に対する裁判の効力)
補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一 前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二 前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。
試験ではこう問われる
- 訴えを却下する判決にも、理由とされた訴訟要件の欠缺について既判力が生じる(R8 午後 問4 イ ×)
- 訴えの利益を欠くとして却下した判決の既判力は、その他の訴訟要件の不存在には及ばない(R2 午後 問5 エ ×)
- 仮執行宣言付判決は確定判決以外の債務名義である(民事執行法22条2号。R2 午後 問7 イ ○)
- 請求の認諾について電子調書を作成しファイルに記録すれば、その記録は確定判決と同一の効力を有する(267条1項。R6 午後 問4 イ ○。肢の「調書に記載」は出題当時の文言)
- 給付の訴えの請求棄却判決は確認判決で、離婚請求の認容判決は形成判決、棄却判決は確認判決である
- 形成判決の形成力は確定で生じ、遡及するもの(認知)と将来に向かうもの(婚姻の取消し)がある
- 既判力は原則として当事者に及び(115条1項)、参加的効力(46条)は既判力と別の効力で、反射効は判例が認めていない

